2005/3/28

減数分裂の進行を制御する因子を解明

概要

東京大学(大学院理学系研究科および遺伝子実験施設)は岡崎の基礎生物学研究所および英国のマリーキュリー研究所と共同で、減数分裂の進行を制御する因子の働きを解明しました。

大学院理学系研究科生物化学専攻の大学院生伊澤大介さんと山本正幸教授、遺伝子実験施設の山下朗助手のチームは、岡崎基礎生物学研究所および英国マリーキュリー研究所と共同で、卵子や精子などの生殖細胞を産生する際に行われる特別な核分裂様式である減数分裂の進行を制御するタンパク質の働きを解明しました。有糸分裂(いわゆる細胞分裂)では染色体の複製と核の分裂が交互に繰り返されます。ところが減数分裂では、染色体が複製した後に、両親由来の相同染色体が対合・分離して染色体数が半減する第一分裂と、複製された姉妹染色体が均等に分離する第二分裂が連続して起こります。第二分裂は、有糸分裂と同様の仕組みで行われるとこれまで考えられてきました。上記のチームは、真核微生物である分裂酵母には、有糸分裂にはまったく必要とされないが、それが欠けると減数第二分裂ができなくなるMes1とよばれるタンパク質があることに注目し、その働きを解析しました。

Mes1は、細胞周期を制御するタンパク質であるサイクリンの分解を抑制する因子であることが明らかになりました。サイクリンはcdc2キナーゼというタンパク質リン酸化酵素と複合体(MPF;M期促進因子)をつくって、細胞を分裂期へと誘導します。有糸分裂ではサイクリンは染色体の分離が開始する分裂後期に分解を受け、それによって次の細胞周期での新たな染色体複製が可能となります。しかし、減数分裂では、サイクリンは第一分裂後期で量は半減するものの、完全には分解されません。ところがMes1をもたない細胞では、サイクリンは第一分裂が終わった時点できれいになくなっていました(図)。その理由を調べたところ、Mes1はサイクリンを分解するAPC/C(後期促進複合体/サイクロソーム)の活性化因子であるSlp1に結合し、Slp1がサイクリンをタンパク質分解へと導く機能を阻害していることが明らかになりました。さらに、分裂酵母のMes1タンパク質は、アフリカツメガエルの卵から調製した試験管内タンパク質分解測定系でもサイクリンの分解を阻害する能力を発揮することが分かりました。Mes1は第一分裂の後半から第二分裂の後半にかけてのみ強く発現されます。これらのことから、減数分裂において二回の核分裂を続けて行うためには、第二分裂を誘導するのに十分なレベルのサイクリンを確保しておく必要があり、そのためにMes1のようなタンパク質が非常に重要な役割を果たしているとチームは結論しています。この研究成果は2005年3月24日発行のNatureに掲載されました。

減数分裂の進行