2005/2/20

歴史上最大規模のガンマ線が約3万光年の彼方から地球に飛来

発表者

  • 寺沢 敏夫(東京大学大学院理学系研究科教授)
  • 向井 利典(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究本部教授)
  • 河合 誠之(東京工業大学理工学研究科教授)

概要

図1

図1:ジオテイルが検出したSGR1806-20からの巨大フレアの波形。(日本時間2004年12月28日午前6時30分26.35秒から0.5秒間)

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図2

図2:左:磁気圏探査衛星ジオテイルの外観(宇宙航空研究開発機構提供)右:巨大フレア観測時のジオテイルの位置

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2004年12月28日午前6時半ごろ(日本時間)、瞬間的な照射エネルギーとしては過去最大規模のX線〜ガンマ線が地球に飛来したことが、宇宙航空研究開発機構の磁気圏観測衛星「ジオテイル」の観測データを地球惑星科学専攻の寺沢グループが解析した結果分かった。このガンマ線は、いて座の方向、約3万光年離れた場所にある軟ガンマ線リピーターSGR1806-20と呼ばれる天体が起こした巨大フレアから放射されたものある。

このとき飛来したガンマ線はこれまで観測されたどの太陽フレアからのガンマ線よりも強かった。そのため、知られる限りの全ての天文観測衛星のガンマ線検出器は約0.5秒間飽和してしまい、ピークの高さを測定することができなかった。一方、ジオテイルに搭載されているプラズマ粒子検出器(LEP)は、本来ならその名称どおり電子やイオンを検出するための装置であるが、高エネルギーの光子であるX線やガンマ線にも感度がある。その感度はガンマ線専用の検出器と比べてはるかに低いが、逆にそのことが幸いして今回の史上最大のガンマ線のピーク時にも飽和しなかった。そして、そのピークの高さの決定には、ここ数年間頻発した太陽フレア時にLEPが観測していた太陽からのX〜ガンマ線のデータが有効に生かされたのである。

ジオテイルと他の天文観測衛星の結果を合わせ、この天体は0.2秒間ほど大量のガンマ線を放射した後、続く約400秒間にはエネルギーの低いX線を放射したことが明らかにされている。その間に放射したエネルギー総量は太陽が放出する全エネルギーの数十万年分に匹敵すると見積もられている。しかし、このX線やガンマ線は地球の大気で遮られるため、地上にいた人の健康に影響が出る心配はない。

同様の大爆発を起した天体は、1979年に初めて観測されて以来、今回が3つ目である。SGR1806-20の正体は、「超強磁場中性子星」とする説が有力である。この星は1000兆ガウス程度の磁場を持っており、その強さは規則正しい電波パルスを出すことで知られる普通の中性子星の数百倍もある。普段から比較的エネルギーの低いガンマ線を断続的に放射しているが、数十年に一度大爆発を起こすらしい。