2004/5/21

赤ちゃん星の産声 - M78に現れた新星雲を観測 -

発表者

  • 中田 好一(附属天文学教育研究センター 教授)

概要

昨年12月から1月にかけて急に明るくなった星雲を、木曽観測所で2002年1月に撮ってあった写真とくらべ、非常にかすかな星雲を見つけました。

散光星雲M78に出現した新星雲

散光星雲(注1)M78(注2)に出現した新星雲。東京大学大学院理学系研究科天文学教育研究センター木曽観測所の105cmシュミット望遠鏡(注3)に取り付けられたCCDカメラを用いて、(左)2002年1月7日、(右)2004年3月18日に撮影されたもの。

解説

アメリカのアマチュア天文学者マクネイル氏は今年1月に撮った天体写真の中から、散光星雲M78の片隅に新たな星雲が出現していることを発見しました。M78は太陽系からオリオン座の方向に1600光年の距離にあり、多数の星が誕生している所です。新たな星雲の出現は、産まれたばかりの星の光が、厚い雲から外にもれ出た結果と考えられ、強い関心を呼んでいます。

東京大学木曽観測所は2002年の1月にM78を観測していました。新星雲が出現した場所には非常にかすかな広がった天体が認められました。

今回は名古屋大学の吉岡努研究員、東京学芸大学西浦慎悟助手を中心とする観測グループの協力を得て、2004年3月18日に木曽観測所の口径105cmシュミット望遠鏡がM78に向けられました。そして、新星雲の姿をはっきりとキャッチすることに成功しました。

用語解説

散光星雲:
宇宙空間中のガス雲が近くにある星の光を受けて、雲内のチリの散乱光で光って見える星雲。通常低温。
M78:
メシアという人が作った星雲カタログの78番目に載っている星雲。ファンにはウルトラマンの故郷として知られる。
シュミット望遠鏡:
通常の天体望遠鏡と異なり、画像の拡大率は低い代わりに、非常に広い視野を捉えることを目的とした望遠鏡。木曽観測所のシュミット望遠鏡は世界4位の大きさである。