概要
理学部紹介冊子
セクシュアル・ハラスメントのないキャンパスに向けて
【ケーススタディ】(裁判やセクシュアル・ハラスメント防止の冊子などを参考に作成)
- 大学院に進学したばかりのAさん(20代・女性)は、研究室の新入生歓迎会に参加しB教授(40代・男性)と話した。
- 帰りのエレベータの中でたまたまB教授と2人きりになった際、B教授から抱きつかれ「これから頑張ってね」と言われた。
- その後、B教授から「君は彼氏いるの?」としつこく聞かれたがAさんは聞き流した。
- ある日、論文指導を受けにB教授の研究室を訪ねたところ、不意に身体を触られたため「やめてください」と言うとB教授は「ごめん、ごめん。でもそんなに冷たくされると指導しにくいな」と言った。Aさんは、「すいません」と言い、その場をやりすごした。
- B教授は、指導とは関係のない内容のメール(自分の趣味やその日のできごとなど)をAさんに送ったり、指導と称して頻繁に食事に誘ったりした。
- Aさんは当たり障りなくメールの返事をし、食事の誘いもできるだけ別の用事を作って断った。
- B教授からの誘いがどんどん増えていったため困ったAさんが助手のCさんに相談した。
- 「僕たちの関係は秘密にしようね」「今度の学会の後は二人だけで観光したいね」というメールが届くなど、B教授の行動がさらにエスカレートしたため、Aさんは大学を頻繁に休むようになった。
- 研究者の夢をあきらめることも覚悟した上で思い切ってD専攻長に相談しようかと考えていたある日、D専攻長の方からAさんに電話があった。「この前助手のCさんから、君が悩んでいることを聞いたよ。専攻長として自分にも責任があるから、この件は任せてほしい。」とのことだった。
- 数日後D専攻長がB教授を呼びだしたところ、B教授は「恋愛関係だったとはいえ教員として好ましくない行為だった。」と話したという。それを受けてD専攻長は、「相手は事実を認めました。B教授は反省していたようだし、もう大丈夫。君もはっきり断らなかったんだし、過去の事は水に流しなさい。明日から研究に専念するように。」と電話でAさんに言った。
- その日を境にB教授から誘いのメールや電話は来なくなったがB教授はメンバーの前でAさんを罵倒しはじめるようになった。
- 絶望的な気持ちになったAさんは、研究室の院生Eさんに相談したが「Aさんだって、B先生からひいきされていたし、結構いい思いをしてたんじゃないの?」と言われてしまった。
話し合いのポイント
- 傍から見ていた時のCさんの気持ちはどのようなものだったか。
- Cさんは相談をうけた時どのようにすればよかったか。
- 相談を受けたあとどのような役割を果たすことができたか。
- ハラスメント相談所の対応
講習会会場で出されたコメント・メッセージ
傍から見ていた時のCさんの気持ちはどのようなものだったか。
- 当惑すると思う。
- Aさんは気の毒だと思う。
- Aさんの態度にも少しは非があったのではないか。(これに対し、AさんがB教授を誘うような意図があったのであれば、B教授から特別な扱いを受けたのは目的を達成したことになる訳で、悩んだりすることはなかったのではないか、という指摘が出た)
Cさんは相談を受けたときどのようにすればよかったか。
- 自分だったら直接B教授に忠告する。そうできるような風通しの良い研究室環境を整備することが重要である。
- なかなか研究室の教授に向かって忠告などできない。自分がCさんだったら困ると思う。
- 一緒にハラスメント相談室へ相談に行く。
相談を受けた後どのような役割を果たすことができたか。
- Aさんの居心地が悪くならないように他の研究室のメンバーに働きかける。
- 学生がいろいろな事情から他の研究室へ移ることは珍しいことではないので、移ると良いような研究室の候補をAさんに紹介する。
ハラスメント相談所の対応
ハラスメント相談所では、まず相談に来た人(この場合はCさん)の目から見た状況を説明してもらい、客観的な事実関係を把握する。それから可能ならば当事者である方(この場合はAさん)に直接来てもらい、ご本人から事情を説明してもらう。そして当事者がどのような方向で問題を解決していきたいと思っているのか、その希望を確認する。希望によってはハラスメント苦情申し立て制度にのっとり、問題解決を試みる。いずれにしてもふだんから風通しの良い人間関係を構築することが、セクシュアル・ハラスメントはもとより、パワー・ハラスメント、アカデミック・ハラスメントを防止することに非常に重要である。