感想と意見

理学部学生選抜国際派遣プログラム 第6回 Yale and Princeton

今回のプログラムで10日間のアメリカ滞在を通し、参加したメンバー10名は多くのことを学び、考え、今後の行動に生かそうとしている。イェール大学・プリンストン大学を見学し、教授や学生の方々と語り合い、最先端研究の数々に触れ、我々が何を感じたのかご報告したいと思う。

伊藤 俊

今回のESSVAPを振り返って、本当に実り多いプログラムだったと感じています。ここでは、とりわけ印象深かった3点をピックアップして、感想としたいと思います。

1つ目は、アメリカの大学・大学院のシステムを自分の目・耳を通して学べたことです。今回のプログラムでは、研究室への訪問、学部・大学院の講義の出席、学生・研究者の方とのランチなど、様々な形で現地の人々と交流する機会がありました。「もし留学したら、どのような環境・人々に囲まれて、研究生活を送ることになるのか」を、短い時間でこそあれ、自分の目で見て耳で聞いて体で感じることができたのは、本当に素晴らしい体験でした。

2つ目は、「大学における環境」に加えて、留学した場合に待っているであろう「普段の暮らし」がどのようなものかを実際に体験できたことです。チップなどの生活習慣から食生活、交通機関、店での会話の雰囲気に至るまで、とにかく新鮮な体験の連続でした。今まで自分にとっての世界だったものが、非常に限定的で特殊なものだったことを思い知らされました。

同時に、そのような高い壁に思える「海外の暮らし」も、慣れてしまえばそれほど難しいものではないのだと感じることもできました。大事なことは現地の習慣を理解しようと努力することであり、その努力を怠らなければちゃんと応えてもらえるのだと実感できたように思います。

3点目は、異なる分野の研究者を志す仲間たちと出会えたことです。具体的な目標を持って海外での研究生活を志望する人たちに囲まれた体験は、今まで留学をそれほど現実的に考えていなかった自分にとって大きなモチベーションとなりました。また、普段の物理学科の生活だけではできないような学科を横断する議論は大変刺激的で、貴重な時間でした。ESSVAPメンバーのみなさん、楽しい時間をありがとうございました!これからもよろしくお願いします。

最後に、このような素晴らしいプログラムを企画・実現してくださった、理学部の先生方、国際交流室の方々、イェール大学・プリンストン大学の先生方、とくにエリザベスさんとスミス先生、そして誰よりもお世話になりました五所さんに、この場をお借りしてお礼申し上げたいと思います。この素晴らしいプログラムを今後もぜひ続けていっていただければと思います。本当にありがとうございました。

池町 拓也

この研修で僕が得たものは数え上げればきりがないが、その中で特に印象的だったことをあげ、まとめとしたいと思う。

一つ目は、自分のいる環境を客観視することができたことだ。東大の中にいると、どうしてもそこのことしか分からないので、修士に入る前の時期に他の大学の研究レベルを体感できたことは非常に有意義だった。物性実験に関していえば、自分の環境は決して劣っているわけではなく、彼らと同じレベルで成果を求められることを強く自覚した。世界の研究レベルという点では、どこに行っても、実験物理学者に求められていたものが、理論の理解はもちろん、回路とプログラミングだったことがとても印象に残っている。

2つ目に、英語でコミュニケーションをとる能力が足りていないことを痛感させられた。英語力がないために、自分の考えを適切に伝えられず、議論の中で歯がゆい思いをしたことが多々あった。いつまで日本に安住するかは分からないが、その間も英語でのアウトプットを常に意識しておかないといざという時に対応ができなくなる。この「いざという時」を少しでも体感できたことは、大変良かったと思う。

3つ目に、池町の中で、海外に対するハードルが下がった。これまで自分は日本を出たことが一度もなく(飛行機に乗ったことさえ指を折るほどしかなかった...!!)、無意識のうちに海外は遠い世界であり、無駄に美化され、想像上の存在に近かった。しかし、今回の研修で曲がりなりにも教授や学生と議論やお話をし、設備を見学し、構内を歩き回ったことで、その存在は身近なものに感じられるようになった。いい意味で、東大と並列の存在になった。留学なり、国際学会なりで海外に行く前に、このような経験をしていることは、とても意味が大きいと思う。

最後に、世界を相手に研究したいという高い志を持った仲間に会えたことも、この研修で得たものだと思う。自分の方が院生に近いにも関わらず、僕以外のメンバーはしっかりした考え方を持っており、大変刺激を受けた。これからも折に触れお互い高めあっていきたいと感じられた。

最後になったが、このような素晴らしい経験をさせていただけたのは、ひとえに五所さんをはじめとする国際交流推進室のみなさま、理学部のみなさまのおかげである。この場をお借りして、感謝の意を示したい。また、快く送り出してくれた研究室のメンバーにも感謝している。この研修で得たものを生かし、新たな研究生活にまい進していこうと思う。

安田 憲司

初めは、遊びに行く程度の軽い気持ちで応募したESSVAPですが、今回のESSVAPを振り返ると、実に多くのものを得たプログラムであったと感じます。興味のある研究室に訪問し、議論できたこと、大学の構内を見てまわれたこと、学部生や院生との交流を通してアメリカの大学の制度や、普段の生活を知ることができたことなど、得られたものを挙げていけば枚挙に暇がありません。中でも、とりわけ良かったと思える点は、海外(特にアメリカ)への留学を現実的に考えられるようになったということです。東大と、イェール大学やプリンストン大学とを比較した時に、もちろん細かい分野によって、それぞれの大学の強みや特色はありますが、全体として、物理に限れば研究のレベルはそう変わらないというのが、各研究室を訪問した時の印象です。では、アメリカに留学するというのは、どのようなメリットがあるでしょうか。1つには、アメリカの大学院では、研究に対して給料が出るということがあります。加えて、TAをすることで、更に稼ぐことも可能です。もちろん大学にもよりますが、支給される額は、生活には困らない程度の十分な量であるようです。一方で、日本の大学でも、学振の制度がありますし、最近ではリーディング大学院が盛んになっているため、あまり待遇としては変わらないのかもしれません。また、分野によっては、アメリカの特定の大学が特に強みを持っている分野があります。例えば、プリンストン大学で素粒子理論を研究している日本人のポスドクの方は、ウイッテンが自分と同じフロアで研究をしていて、議論をできることが非常に刺激になるのだとおっしゃっていました。一方、これは逆もまた然りで、研究分野によっては、日本の場合も当てはまるのではないかと思います。また、細かい点としては、アメリカの研究者は、知り合いの人の研究を引用する事が多いため、日本にいると、同等の研究をしても引用されない場合があるとの話もうかがいました。逆にデメリットの1つとしては、Ph.D.として、アメリカにいく場合、専門的な知識や実験の経験をあまり持たない状態で、英語でコミュニケーションをしなくてはならなくなるため、そういった研究に必要な知識を習得するのが遅くなってしまうといったことがあげられます。このように、細かいメリットやデメリットを挙げていくときりがないのですが、研究のレベルを考えると、やはり日本の大学も、アメリカの大学も大差がありません。したがって、日本の大学とアメリカの大学には様々な違いがあることを認識した上で、自分にあった大学を選択するということが望ましいのではないかと、今回の訪問を通して感じました。日本では、周りに留学をしている人があまりに少ないため、十分な情報を得ることが難しく、留学するということに対し、無駄にハードルが上がってしまっているということが現状ではないかと思います。ESSVAPのようなプログラムが、将来より普及し、多くの人が留学を選択肢の一つとして考えるようになることを切に願います。

最後になりましたが、このようなプログラムを支えてくださった、東大の理学部の方々、イエール大学とプリンストン大学の先生方や研究室の方々、国際交流室の方々、特に訪問の以前から訪問期間中、訪問後も含めて、あらゆる面でお世話になった五所さんに、この場を借りて感謝したいと思います。

日下部 晴香

私は今まで留学などには興味がなかった。昨年の4月、英語ができない為にビジターでいらした私の興味のある分野の先生と思うように研究についてお話できなかったことが悔やみとしてずっと残っていた。ESSVAPの募集要項を見た瞬間に、ダメ元で応募してみようと思ったのはこの経験によると思う。面接準備をして、(幸運にも)選ばれて、訪問準備をして、という部分だけでも随分英語の勉強になった。しかし、実際に大学を訪れ、授業や研究室を訪問して先生とお話したことによって得たものは比べ物にならないほど多い。ここでは特に印象的だった4つをあげる。

1つ目は、留学先で学生生活をするのは不可能ではない、と思えるようになったことだ。今までは、あまりに英語が苦手なので、国外の授業や研究室は成り立たせることが出来ないと思っていた。たった10日間だったが必死だったせいか英語は随分上達した。授業も研究室訪問も実りあるものとしてこなすことができ、自信に繋がった。また、帰国後に本郷で行われた国際会議にお邪魔し、グリーン先生に直接アポイントを取りに行った。このほうに思えるようになったのも、行動力や英語に臆する事無く話しかける度胸が増したことにもよるだろう。

2つ目は東京大学を外から見て比較できたことだ。性質の異なる二つの大学を実際に見て回り、人々と関わって、改めて東京大学の天文学科の良さがわかた。特にプリンストン大学は有名な先生が多く、研究は最先端で、環境も素晴らしかったので非常に魅力的に感じた。しかし、冷静に考えると現代の天文は国際競争よりも協力の時代である。プリンストン大学は東京大学との共同研究も非常に盛んで、実際に私の希望する分野では大きな共同プロジェクトが複数ある。2つの大学の研究レベルはそう変らないようにも思えた。

3つ目は私がいかに銀河進化という分野を好きかわかったことだ。先生方の出張などもあり、銀河進化以外の天文学者にも随分お会いした。他の分野のお話は刺激的で面白かったし視野も広がり大変勉強になった。一方で、銀河進化について話している時に感じた自分の興奮は群を抜いていた。天文学はどの分野も魅力の多い学問だが、自分にとっては銀河進化が1番だと改めて認識できた。とても大きな収穫である。

4つ目はより明確な目標ができたことである。訪問の際に英語でうまく表現できないことが複数回あった。天文の世界に生き残るには今の英語力ではダメだと身をもって知る事が出来た。今後はこの経験をいかして勉強に励んでいきたい。また、留学についても考慮した上で、今は東京大学で少しでも多くのことを吸収したいという結論に達した。関わりたいと思っていたプロジェクトについてもより明確な目標ができた。このように意欲的になれたのは、他の素晴らしい参加者からの刺激もあったと思う。このような経験をさせてくださった、五所さんをはじめとするILOの皆様、理学部の先生方、訪問先の方々に深くお礼申し上げます。

宮崎 慶統

私自身は、シンガポールに3年弱滞在したことがあり、海外に行ってもそんなに驚かないだろうと高をくくっていたが、わずか10日の間に受けた刺激はあまりに大きかった。思うところ、感じたところが多すぎて、未だに僕自身が消化しきれずに混乱しているのだが、その中から何点か感じたところをまとめておきたい。

到着するや否や、アメリカが多民族国家であることを実感させられた。聞いたことはあったが、街を見渡して黒人、ヒスパニック、白人が混然一体となって生活しており、"外人"扱いする意識が希薄であることを目の当たりにした。(もちろん、同時に経済的格差も見せつけられたが。) 大学のなかでもそれは同じで、訪れたほぼ全ての研究室に留学生がいた上に、そもそも教授陣・研究室のスタッフがヨーロッパ系の人だけでなく、日本・台湾・インドと多用なバックグラウンドを持つ人で構成されていたのは印象的であった。大学院入試の選考の話を聞いていても、本当に世界中から応募があり(もちろんアメリカからの応募が最も多いが)、その中からアメリカの出身者と同じ土俵に"留学生"を乗せて、その中から優秀な人材を選抜している状況を見て、日本が競争力で負けてしまうのも仕方がない気がした。

今回の訪問で、東大の雰囲気を客観的に見ることが出来たのも大きかった。日本にいると、東大が一番"優秀"とされているが、アメリカには"とても優秀"な大学がたくさんある。そのことが関係しているかどうかは分からないが、今回会ったイェールとプリンストンの学部生は目的意識もはっきりしていて、心なしか年下にも関わらず、自分より成熟しているように見えた。学部時代もいくつかの研究をやることが義務づけられており、また、大学院進学者は基本的に外部へ出ることから、何をすべきがはっきり見えているのだろうか。

そして何より、海外の大学に踏み出すきっかけを与えて頂き、目標を明確に定めることができたことは、大きな収穫であった。今まで留学するときのハードルが目の前に漠然と立ちはだかり、英語力を含めた自身の未熟さについての不安ばかりが先立ち、何もアクションを起こしていなかった。しかしながら、いざ行ってみれば、英語の壁はあれど、大学院入学時の学生のレベルは日本であろうとアメリカであろうとあまり大差はなく、日本の学生も十分に渡り合えるといった感触を得ることができ、実際にどうすればいいかもいくつか聞くことが出来て、『何を準備するべきか』についても見えた気がする。

今回の訪問では多くの方々にサポートして頂きました。訪問をアレンジして下さったイェール大学のエリザベスさん・プリンストン大学のスミス教授、イェール訪問の際に多大なアドバイスを下さった唐戸教授、今回の訪問するチャンスを与えて下さった理学部の皆さま、そして何より今回の訪問にご尽力頂いた五所さんには、この場を借りて深くお礼申し上げたいと思います。この素晴らしいプログラムが来年以降も続くためにも、今回の経験を活かして精進していきたいと思います。有難うございました。

村松 悟

本プログラムは私にとって,当初の想定をはるかに超える非常に貴重な経験となりました。本プログラムにおける収穫をまとめると,表現こそ月並みになってしまうものの,やはり「今まで見てこなかった新たな世界を体験できた」ことに尽きます。それはアメリカの大学に初めて訪問し,自分の常識と異なる文化や考え方に触れインスパイアされたことが大きいのですが,実は他学科との交流に乏しかった私は,共に各大学を訪問したESSVAPメンバーからも大きな刺激を得ることが出来たことをここに言及しておきます。

向こうの大学において,確かにいくつかの日本との差を身を以て知りました。しかし,それは研究のレベルや装置の性能など環境的要因というよりは,文化的な差・考え方の違いといった次元のものが多かったように思います。よく言われる例でいえば,授業中の「議論」に対する姿勢の違いのようなものです。私はそれを思った時,逆説的かもしれないけれど,「今の(日本での)生活をより実り多いものにしなければならない」と強く感じました。分かりやすく言えば「アメリカでは至るところで議論を大切にする風潮が見られた。だから日本に帰って来て自分もいっそう議論を大切に生活していこう」というふうに。また,逆に日本の大学ならではの良さも多数見られた(例えば,大学でも課外活動などにより見識を広められる機会があるのは間違いなく日本の大学の大きなメリットでしょう)ので,「日本の大学にいる自分にしか出来ないこと」を考え,実践していこうとも感じています。

本プログラムでの成果が「楽しかった」「アメリカは凄かった」「勉強になった」だけで終わってしまうことのないように,すなわちこの経験が今後の自分の勉強・研究生活に,更には本学理学部の発展や理学部の国際交流の活性化に活かされていくよう,今後の活動に精力的に取り組んでいくことをここに約束いたします。

最後にこの場をお借りして,共に大学を巡ったESSVAPメンバー9人,五所さんをはじめとするILOの方々,理学部の諸先生方,イェール大学のエリザベスさん,プリンストン大学のスミス先生,その他訪問先でお世話になった全ての方々にお礼を申し上げます。

市川 早紀

"海外の大学へ行き、世界の研究者の方々と研究をする"

"日本国内にとどまらず国際的(グローバル)な研究者になる"

このESSVAPに参加するまで、私はしばしば耳にするこれらの言葉がどこか漠然としているように感じていました。海外での研究生活は、どのように日本と異なるのか。"国際的"とはどういうことなのか。そして、このような漠然とした選択肢を、将来の展望として語って良いのか。これらの疑問に対して、自分自身で考え、行動することによってきちんと向き合う機会を与えてくれたこのプログラムは、私にとって何物にも代え難い、貴重な経験となりました。

実際にイェール大学、プリンストン大学、コロンビア大学というアメリカの最高レベルの大学を訪れてまず感じたのは、大学生活、そして研究生活における"対話力"の重要性、そして、対話を行う道具としての英語力の必要性です。

活発な対話をするためには、自分自身の考えを明確に相手に発信しなければなりません。しかし、実際に研究室を訪問し、いざ論文内容について伺おうと思った時に、専門用語を英語で言い換えられない、適切な表現が分からないといった言語の壁に阻まれて、自身の考えを伝えることさえ出来ないという場面が幾度もありました。これまでは、いかに自分自身の考えを発信するか、相手の発信から吸収するかばかりに目がいきがちでしたが、そのためには英語を使いこなせることが前提条件として存在していると、身を以て痛感しました。

ただ、拙い英語力であったとしても、その中でいかに意思疎通を図ろうと努力するか、そして伝えたい内容についてどれだけ考えたかによって、相手への伝わり方は異なってくるでしょう。私自身、事前に論文を読んだ内容や既習の反応についてお話しした時には、教授が示唆することを理解しやすく感じ、対話する道具としての英語だけではなく、対話する内容としての化学も、同時に学んでいかなければならないと感じました。そして、自身の視野を広げ、様々な分野の研究者のバックグラウンドとなる分野について広範な知識を身につけることで、自分の母語ではない英語を用いた意思疎通においても、より多くのことを学び、新たな発想を得ることが出来るのではないでしょうか。この姿勢の中にこそ、真に国際的な研究者として、必須の素養があるように思います。

では、海外、特にアメリカの大学と日本の大学との違いとは何なのでしょうか。私が最も強く感じたのは、アメリカの大学には"自由"つまり"自己責任"の気風があるということです。

この訪問を通じて、アメリカと日本の大学院には制度上の違いがあることが分かりましたが、それ以上に、大学に携わる人々の意識の違いを目にする機会が多くありました。例えば、アメリカの大学生は学位号と博士号を異なる大学で取得することが多く、さらには学部2年生のうちから研究室に所属することも可能です(プリンストン大学)。異なる研究室に移るということは自分の周囲の環境が一変することを指しますが、アメリカの大学生は自身の研究環境を変えることに躊躇いを感じていないどころか、寧ろ積極的に挑戦しているように見えました。この"自由"で活発な移動こそが、研究者間だけではなく各大学間の対話を活性化し、アメリカ国内にあるいくつもの大学のレベルを世界最高峰で維持する一因となっているのではないでしょうか。

しかし、この"自由"には必ず"責任"が伴い、決して美点としてのみ語ることは出来ないでしょう。日本においては博士課程に進学した学生の大半は、修士課程と合わせて5年間で博士号を取得することが出来ます。それに対し、アメリカは完全なる実力主義であり、博士号が必ず取得できる訳では無く、取得後に大学に職を得てからも"テニュア(tenure)"と呼ばれる終身在職権を得ない限りは研究が続けられる保証もありません。自分の意志で自由に研究環境を選び、挑戦する可能性が開かれている一方で、研究の世界で生き残るための競争やそれに伴う責任は日本以上に厳しいのだと感じました。ましてや、言葉の壁を抱える留学生にとって、この環境の中で専門知識を身につけ、自身のキャリアを積み上げることは非常に困難が伴うでしょう。

このESSVAPを通じて、これまでおぼろげであった"海外での研究生活"や"国際的な"研究者に関して深く考え、日本との違いに思いを馳せる機会に幾度となく恵まれました。そしてそのことによって、自分のおかれた環境(東京大学)を冷静に見つめ、それぞれの環境(アメリカと日本)を比較し、どちらかだけに傾くこと無く客観的にその特色を把握することが出来たように思います。これから私は将来に向けて、自分自身にとって最も良い選択肢は何なのか、漠然としたイメージではなく、このESSVAPで得た自分の経験と考察に基づいた確固たる事実を土台として、考えていきたいと感じています。

最後になりましたが、この素晴らしいプログラムを企画し、私たちを引率してくださった五所さんをはじめとする国際化推進室のみなさま、イェール大学、プリンストン大学、コロンビア大学でお世話になった方々、そしてESSVAPメンバーに、心から感謝しています。このプログラムを通じて、志す分野は違っても研究に対してしっかりとした考え方を持ち、それぞれの目標に向けて努力しているESSVAPメンバーに出会えたことは、私の視野を広げるとともに、非常に大きな刺激となりました。今後もこのプログラムが続き、多くの理学部生が新たな発見をし、素敵な出会いを重ねて、将来への貴重な糧を得ることを願ってやみません。

このESSVAPに携わり、支えてくださった全ての方々へ―本当に、ありがとうございました。

鹿野 悠

「サイエンスに国境はない」とはよく言われるが、私はアメリカという極めて国際的な地を訪れたことで初めて実感が湧いた。国境がないとは具体的に何を指すのか?私が訪れたイェール大学医学部のクレアー(Michael C Crair)博士の研究室を例にとろう。脳の神経回路形成の解明を行うこの研究室で、アメリカ人、アジア人、フランス人など世界各国から集まったメンバーに出会った。競争の激しい研究分野では「1番であること」が求められ、第一発見者が大きな価値を持つ。この時必要なのは、ライバルが思いつかない視点・切り口だ。これは一人の力では得られず、多くの人との話し合いや協力で初めて手に入る。協力者が自分とは異なる背景知識を持っていれば、思いもよらないアイデアが湧いてくる可能性がある。メンバー構成が国際的な研究室は発想の宝庫と言えるのではないだろうか?

しかしながら、様々な背景を持った人々が同一の社会・研究室で協力し合うには、誰もが共通の言語すなわち英語を話せなければならない。将来的にも、例えば国際学会などで英語が話せないがためにディスカッションに加わることが出来ないというのはかなり損であり、そのような状況を招かないために、今から英語は必死に勉強していくべきであると感じた。東京大学は非常に良い研究機関だが英語を使う機会が少ない。キャンパス内で留学生を見ると珍しいと思えてしまう点、まだアメリカのトップ大学に国際性はかなわない。秋入学による国際化が期待される。

ESSVAPで学んだもう一つの点は「分野間の垣根の撤廃の重要性」である。科学は本来分野が相互に関連しているが、研究室レベルでは物理、化学、生物、地学などと細分化される。一方プリンストン大学では分野間の壁を撤廃する動きが盛んである。特に生物物理や生物化学の研究室では、メンバーの出身の分野は様々で、分野をまたいだ研究が新発見を生み出そうとしている。共同の実験スペースやディスカッションなど、研究室間の交流も盛んだ。研究室の国際性に加え学際性も創造的な研究に欠かせない要素であると感じた。

ESSVAPのメンバー同士でのディスカッションもまた貴重な体験となった。全員で同じ研究室を訪問する際、自分の専門分野外の研究室について他のメンバーに内容を質問することがある。それらを通して研究スタイルは分野ごとに大きく異なると実感した。例えば生物系の研究室を見学して真新しい機材に出会うことは珍しい。概ね共通の実験機材を用いるからだ。ところが物理系では研究室ごとに自作で自慢の実験機材がある。プリンストン大学のヤズダニ(Ali Yazdani)博士の研究室では大がかりな免震室があり、その構造を丁寧に説明して下さった。分野の違いが研究スタイルの差を生み、新鮮な衝撃を受けた。

今回のESSVAPは第6回目で、歴代の参加者の中には卒業後に見事海外留学を果たした方が多くいらっしゃる。現地でその方々とお会いすることも出来、ESSVAPを経験された人々の輪が現在世界中に広がりつつあることを実感する機会となった。海外の先輩方がアドバイスして下さることは、将来留学を目指す学生にとって非常に強力な励みとなる。この様な素晴らしい状況を作り出しているのがESSVAPであり、毎年運営に携わって頂いている理学部の方々に改めて感謝したい。来年度以降もこのプログラムが継続され、輪がますます広がっていくことが非常に楽しみである。

小長谷 有美

この派遣プログラムを通して、アメリカの各大学を訪問して得た体験は非常に貴重なものであった。それと同時に感じ取った、日本とアメリカの大学や教育、文化の違いは数えきれない。その中でも、特に感銘を受けたことを2つに絞って伝えたいと思う。それは一言で言うと、目的意識と人の流れ、である。

まず驚かされたのは、イェール大学やプリンストン大学の学生たちが総じて非常に強い目的意識をもっているということである。各大学の学生たちは、なぜ今の大学や専攻を選び、将来選ぶつもりなのか、をすらすらと自信をもって話すのだ。教授やポスドクの方々はもちろんのことである。これらは研究の目的という意味でだけでなく、研究者として生きる目標という意味で、有効にはたらいているように感じた。私自身も含めて、日本の学生だとこうはいかないような気がしてならない。

そして次に印象的だったのは、人の流れを大事にするということである。研究室内、あるいは研究室間の人々の交流が盛んであるというだけでなく、組織全体として新しく異なる分野の人材を取り入れる姿勢が強いからだ。例えば、学生は学部と院で異なる研究室にいくのが普通で、異なる大学にいくのも珍しくないという。つまり、同じような考えの人々が集まって行き詰まらないように、常に人の流れによって客観的な見方や新しい発想ができるように心がけているのだろう。

私たちもぜひ、目的意識と人の流れを重んじるその心意気を学び取りたいものだと思った。

他方、今回私たちがアメリカの大学へ訪問して学んできたことがあるのと同じように、アメリカの学生たちが日本の大学へ訪問すれば良い所をたくさん見つけるはずだと信じている。実際に東京大学ではそのようなプログラムもあるので、そういったものを通して日本の良さを発信していきたいとも思っている。

最後になったが、今回訪問先で受け入れて下さったたくさんの先生方や学生さん方、プログラムを通して大変お世話になった五所さん、そして同じメンバーの皆さん、本当にどうもありがとうございました。

等々力 成葉

まずこのプログラムに参加させていただけたことに大変感謝したいと思う。今回大学のプログラムの一環としてイェール大学、プリンストン大学を訪問したことで、個人で訪問するレベルでは不可能なまでの貴重な体験をさせていただけた。訪問して感じたのは、東京大学の学術レベルは決して劣っていないということだ。国連で世界の学校状況について学んだこともあって、大変恵まれた環境で勉強できていたことを改めて感じ、より一層の努力をしようと思った。違いを一番強く感じた点は、学生のバックグラウンドの多様性である。アメリカは大学と院を変えるのが普通で、かつ人種の多様性が影響しているのだと思うが、決して同質でない人たちが各所より集まってきている印象を受けた。自分とは大きく違う、色々な人々に出会えるのも留学することでしか得られないことだと思う。また、何より今回一緒にアメリカに行った理学部の9人と出会えたことは非常に大きかった。自分と異なる研究分野でも、研究者を目指す仲間と出会え、様々な意見を交わすことができた。自分一人では決して考えもしなかったようなこともあった。本当にありがとう。

最後に今回このプログラムに関わり、貴重な経験をさせてくださった方々にお礼を申し上げたい。ありがとうございました!