総括

理学部学生選抜国際派遣プログラム 第5回 Columbia, Princeton and Rockefeller

吉田 周平

この度の渡航で得たもの感じられたことを挙げるときりがありませんが、ここでは印象的だったことを一つ取り上げたいと思います。

日本の大学とアメリカの大学を目に見える部分で比較した時、渡航前に勝手に膨らませていた想像ほどには違いが無いということに気がつきました。大きな窓を持つ開放的な研究室や多分野の交流が自然に生まれるように作られた建物など、確かに日本の大学には少ないかもしれません。しかしこのような建物は、アメリカの大学であっても、例えばColumbia UniversityのNorthwest Corner Buildingのような比較的新しい建物に限られ、その他では日本でもお馴染みの「大学」の雰囲気に近いものも感じられました。逆に日本でも、「学際的な研究棟」は生まれつつあるとも聞きます。それでもなお、このような建物や研究環境に「日本には無い空気」を感じた自分もあり、その感覚が不思議でなりませんでした。

振り返ってみると、それは建物からではなく、建物とそれを使う人達全てが作る雰囲気だったのだろうと感じます。どのような目的のもとどのような使い方が想定されているのか、これが単に構想者一人が主張する空論となることなく、使う人達全体で共有されて活用されていると感じられるのです。そこには、単に形を整えるだけでなく、それを真に強学ぶ人達にとっても魅力的な環境なのではないでしょうか。

このプログラムへの参加は私にとって、自分の進路の可能性として国内外のあらゆる選択肢をできる限り平等に天秤に掛けようという試みの一つでもありました。上に書いたことをはじめとしてESSVAPを通して得られたのは、どれほど情報社会が進展しても遠隔地から得ることが難しい「実感」だろうと思います。この点において、当初の目論見は部分的にでも達成できたと感じます。また、個別の研究室訪問を通して、自分がこれから研究者を目指していくモチベーションを強くすることができました。ESSVAPで得たものを無駄にせず、自分の将来に実らせたいという意志を強くもちました。

最後になりましたが、このような貴重な機会を用意して下さった理学部国際交流室の皆様、受け入れ先大学の先生方をはじめ、現地で案内して下さったポスドクや学生の皆さんなど、このプログラムの成立にご尽力くださった全ての皆様、そして短い渡航期間を楽しく意義あるものにしてくれたESSVAPのメンバーに、深く感謝申し上げます。

曽 弘博

百聞不如一見– 今回の訪問はこの言葉を身に沁みて感じた旅であったと言えよう。いや、「一見」ではなく五感の全てで、と言った方が適切かもしれない。

まず、研究環境。開放的なつくりの研究室や、採光性を重視した建物など。写真で知ってはいても、やはり実際に自分の目で見ると大変に印象的であった。

New Yorkの街の喧噪や、アメリカが人種のサラダボウルと呼ばれる所以も身を以て感じた。また、日本の食文化が如何に恵まれているかを痛感する機会も多々あった。

「アメリカでは院生は奨学金(もちろん返済不要)をもらい生活費をほぼ賄えるのが当たり前」ということも知識として知ってはいたが、「日本では自腹が基本」ということを聞いた時の現地の教員の驚きぶりを見て、あらためて「本当に『当たり前』なんだ」ということを実感した。

このような小さな「実感」の積み重ねこそが、この情報化社会の中にあってなお代えがたい「自ら体験すること」の意義であると思うし、その意味において、今回のESSVAPに参加できたことは自分にとって大変価値ある素晴らしい経験であったと思う。

参加当時、私はまだまだ自分の研究テーマも持たない学部生に過ぎなかったが、今回の刺激的な経験が、世界へ飛び出すための第一歩になったのではないかと思う。次回アメリカの地を踏むときは、自らの研究成果を引っ提げて乗り込みたいものだと切に思う。

最後になったが、このプログラムを企画/運営してくださった五所さんをはじめとする国際交流室の皆様、現地で我々を温かく迎えてくださったColumbia, Princeton, Rockefeller各大学の教職員・学生の皆様、そして何よりも、この訪問を実りあるものとしてくれた9人の仲間に、心からの感謝を申し上げたい。

田屋 英俊

アメリカに行くこと、海外の学生や著名な研究者と議論すること等、人生ではじめてのことが多々あり、良い経験ができたと思う。大抵の事柄は事前に聞いていた通りであったが、実際にこれを見聞きできたことは意義深いものだったと思う。これらは私に、今はただのしがない学部生であるが、将来、世界に羽ばたくための、現実的な足がかりとモチベーションを与えてくれたものと確信する。

と、抽象的な形で感想を終わらせてしまって申し訳ないが、ESSVAPを通じてすばらしい経験ができたことは間違いないことは強調しておく。これらは理学部、国際交流室、他の参加メンバー、CU、PU等、数え切れないほどの多くの方々の協力と尽力により実現されたことである。深く感謝申し上げたい。

王 青陽

今回のこの理学部選抜派遣プログラムでは、アメリカでの文化や学業の環境など様々なことを学んだ。またブロードウェイミュージカルなどアメリカを楽しむこともできて満足である。大学の訪問では自分の研究をプレゼンする機会や、教授方と1対1でお話するなどとても緊張したがその分実りはおおきかった。あと自分の英語は決してコミュニケーションの妨げにならないことを実感し、萎縮せずインターナショナルに人との対話を試みてみようと思った。

荒川 尚輝

今回、ESSVAPでは、多くの先生方、院生や学部生と議論をし、視野を大きく広げ成長することが出来ました。昨年夏に日本の学部生の代表に選抜され、ハワイにてすばる望遠鏡を実際に用いて行った、「ULIRGsを観測対象としたGalaxy Mergerにおける星形成領域の時間的空間的変化の研究、ULIRGのエネルギー源としてのStarburstとAGNの優位性の研究」の研究成果を、コロンビア大学、プリンストン大学にて何十人もの先生方に1対1で発表することが出来、それに対し数々の鋭い意見を頂けたこと、そして、大変高く評価して頂きお褒め頂けたことは大きな自信になりましたし、この上なく幸せでした。

また、多くの先生方が大変期待して下さり、先生方への個人訪問だけでなく、個人的にColloquiumやGroup DiscussionやDinnerへ招待して頂けたこと、プリンストン高等研究所や駅への送迎など、温かく歓迎して下さったことは感謝しても、し尽せないほどであり本当に感無量です。

コロンビアでは、Dinner Partyにてジャグリングのパフォーマンスや、ジャグリングと物理の関係の説明・実演を行い、多くの方に楽しんで頂けたこと、そして、サイエンスの話題のみならず様々な方と交流を深められたことが大変嬉しかったです。

また、日本の大学、海外の大学の環境の違いにも大きく驚かされました。日本に比べ、研究室同士、実験室同士の行き来、共同利用・研究がすごく盛んなことと、分野を超えたつながりの深さには研究する上での大きな利点を感じましたし、優秀な学生獲得への大学の威信をかけた熱意・競争にも大きく感銘を受けました。日本と異なりアメリカでは一人の先生が一人の院生だけを指導するということもよくあることで、先生と生徒の結びつきの強さや、院生が授業を任されることもあり、将来講義を受け持つための能力育成にも力が入っていることが印象的でした。

本当に今回の選抜派遣では、素晴らしく貴重な経験をさせて頂き、自分への自信や世界に出て活躍することへのより一層強い決意が芽生えました。温かく歓迎して下さりお世話になった現地の先生方、院生方、そして、日本との共同研究などについて詳しく教えて下さった東京大学の岡村定矩先生、牧島一夫先生、須藤靖先生、院生方、並びに、国際交流室の方々、プログラム存続のため全力を注いでくださった五所さん、ご協力下さった全ての方々に大変感謝しております。素晴らしい機会を与えて下さって本当に有難うございました。今後もより一層精進して参ります。

鵜川 昌士

このプログラムでコロンビア、プリンストン、ロックフェラー各校を訪問して強く感じたのは、これらの大学の競争力の高さである。もちろん学生間の競争は言うまでもないが、それよりも大学間の競争に目を見張るものがあった。

アメリカでは、日本の大学のピラミッド型なヒエラルキーと違い、トップ大学が多数あって優秀な学生にとっても大学の選択肢は多く存在する。したがって、学校側が学生に選ばれるためには、よりよい教育と支援と研究が必要とされる。実際、訪問させてもらった大学では、カリキュラム、学生援助、教授陣の向上に力を注いでいた。

アメリカの大学の授業は日本の授業に比べると少ない。だが、一つの授業に対する重みが非常に大きい。しかも、授業は単に講義を聴くだけでなく、課題をこなしていくものであるため、力になりやすい。また、レポートのために文献を調べたり文章を書いたりするので、例え将来の専門と直接関係がない分野であっても研究に対する基礎力がつく。

最近アメリカのトップ大学では授業料を、払えない分は全額負担してもらえるらしい。その上、全員寮に入ることになっているので、お金に困ることは全くない。学生支援はこれだけに留まらず、例えばコロンビアの物理学科では毎週学生にピザが振舞われ、生徒間の交流の場となっている。このような集まりを通して、下級生は上級生から情報を得て勉強や進路の参考としている。

学生に対するサービスだけでなく、教授に対するサービスも充実している。学校側が新たな研究棟を建てる際、教授は研究室設計の段階から携わって思い思いの部屋を作ることができる。また、他の研究室とのコラボレーションがしやすいように、異なる学科の建物を近くに配置したり、同じ領域の研究グループをまとめたりするなどの工夫をしている。

これらを全て可能にしているのは、大学の莫大な財源である。高額な授業料による部分も大きいが、一番の財源は寄付金である。多くは卒業生からの寄付で、卒業生が素晴らしい業績を残して母校に寄付することで、教授や学生が研究や勉学に勤しむことができ、それがまた素晴らしい業績に繋がるというサイクルが生まれる。その他にも、定期的に世間に研究成果を公表し一般市民の理解を得ることに努めているため、卒業生以外で応援してくれる人々からも寄付が集まったりもする。

アメリカの大学を訪問して感じたのは、こういった競争力であり、東大もこれらの大学と肩を並べるためには、まだまだ尽力しなければならないと思った。そして自分もこういった恩恵を受ける側となれるよう、競争に負けぬように努めたい。

谷口 怜哉

今回の研修では自分の専門分野に関連する研究室をまわることができ、また現地の日本人研究者の方と話をする機会にも恵まれたため、個人的には満足している。研修から得た知識、経験はここで書ききれるものではないが、その中でも研究、という世界全般について考えていく上で自分が考えたことをここに示しておこうと思う。

アメリカと日本とで大きな違いがあるとすれば、それは研究を取り巻く環境についての理解であるのではないか、と感じる。今回見に行った研究室は全て、場所によって多少の違いはあっても、オフィス、実験室、談話室、が明確に用意されており、特にオフィスや談話室は快適な環境になるように配慮が為されているように感じられた。また、建物の作りにしても採光や空間の使い方に「研究環境を良いものにしよう」という考え方が見られたように思う。極端な例になってしまうが、アメリカで見学した研究室の中には、ラボからマンハッタンのビル群が一望できる、というものがいくつかあった。一方、自分は日本の研究室をそこまで多く知っているわけでは無いが、「外の景色がよく見える実験室」というものは見たことが無い。このように、研究室の環境作りまで配慮されているケースは日本では少ないように思う。

加えて、アメリカでは、隣接するラボや関連するラボ、さらには研究者同士の交流が重んじられている印象を受けた。例えば前述のSahin LabとYuste Labで談話室は共用となっており、研究室自体が一つながりになっていた。その他のラボでも研究室が他のラボとつながっていて頻繁に交流が可能と成っている環境はしばしば見られた。またRockefeller大においては外部から講師を週に1度招いてセミナーをし、さらに研究者同士の交流のためのバーまであるという。すなわち、他の研究者との意見交換が容易に行える環境が整っているのだ。他の研究者との交流を持つことは研究を行う上でとても重要なことであるだろう。しかし日本に目を向ければ、隣接ラボ間での交流のようなものはあまり見られない。

もちろん、どんなに研究環境が悪くとも、また他のラボとの交流が無くとも研究はできる。そして、環境を改善し、他のラボとの交流を持てるようにしたところでいきなり良い成果が出るわけでもないだろう。しかし、どちらの環境で研究をしたいか、と言えば、アメリカのような環境に憧れるのが自然である。日本にまず必要なのは、研究環境への配慮を軽視するその意識の改革なのではないか、というのが、私の個人的な思いである。

私が見てきた限りでは、実験設備のレベルに日本とアメリカで大きな違いは無い。結局同じような装置を同じように使っているのみである。よって、設備の面でアメリカの方が日本より整っている、などということは全くないだろう。また、一部の研究室ではundergraduateの学生を全く取らずにポスドク中心で結果を出していく、というスタンスも見えたし、分業により効率化を図っている研究室もあった。研究室によっては学生でなく教授が論文を書いてしまい、学生は経験を積めない、といった場所もあると聞く。このように学生を育てる、学生が経験を積む、という意味では必ずしもアメリカは適切な場所でないように思う。すなわち、アメリカの方が日本よりもベターである、と手放しに礼賛するべきでは決してないだろう。そして、だからこそアメリカから見習うべきところをしっかりと見極めて日本へとフィードバックしていくべきであると思う。私としては今回の研修を通して、アメリカにおける研究環境の長所、短所を見ることができたと考えている。この経験を今後に生かしていきたいし、またそれを周囲にも伝えていくことで、何かが変わっていけば、と思う。

最後になったが、学部三年というタイミングで国外の研究環境を見に行く機会を与えてくださった学部、及び国際交流室に感謝したい。このプログラムが今後も続いていくことを強く願う。また、優秀な9人のメンバーと共に国外で過ごせたことも非常に貴重な経験であった。自分は決してeliteでは無いが、だからこそ今回の研修はとても良い刺激になったと思う。現地でお世話になった教授、ポスドク、学生の皆さん、一緒にプログラムに参加した9人のメンバー、そして国際交流室の皆さん、特にアレンジから付き添いまで尽力してくださった五所さん、そしてその他全ての関係者の皆さんに感謝の意を示して本文を終えます。どうもありがとうございました。

齊藤 真理恵

学部生の時分に、分野の違う仲間と共に海外の研究機関を見学し、現地の研究者や市井の人と交流できるこのプログラムによって、私は視野を広げることができたのみならず、小心さや未経験から海外に出ていくことに対して抱いていた精神的な圧迫感を、自らの生の体験で以て拭い去ることができました。この貴重な経験、決して二度とは体験できないであろう大きな価値観の変革を、以降の研究および人生に活かさないわけにはいきません。更に、後進の優れた学生もこのような経験の機会が得られることを強く願います。

最後になりましたが、本プログラムを全面的にリードして下さった国際交流室の五所恵実子博士、コロンビア大学、プリンストン大学、ロックフェラー大学の教職員の皆様、そして、本プログラムによって出会うことの出来た、個性豊かで才能あふれる九人の仲間たち―生真面目さの中に時折愛嬌を覗かせた吉田氏、リーダーシップを発揮しながら、意外にも食生活の面で繊細さを表した曽氏、片時もコーラを手放さず、旅慣れた様子の田屋氏、つねに物おじせず飄々とした態度の王氏、機知に富んだエンターテイナー荒川氏、穏やかな外見とは裏腹のシニカルな言動で一同を煙に巻く鵜川氏、行動力と几帳面さを併せ持つ谷口氏、誰とでもすぐに親しむ天真爛漫な芸術家、高安氏、自立した寡黙な思想家、小松氏……―および、本プログラムへの参加を祝福、サポートしてくださった家族、友人、生物科学専攻の皆様に、心より感謝申し上げます。

高安 伶奈

アメリカの大学は、入るのは易しく出るのは難しいと言われている。学部に入ったばかりのころの学習進度は日本が明らかにリードしているにも関わらず、アメリカの大学・大学院はいまだに世界の優秀な学生達を多く惹き付け、日進月歩する自然科学の世界で中心的な役割を担っている。そのように多くの学生・研究者が集まる背景にはどのようなシステム、考え方があるのだろうか、と言う点は以前から興味を持っていた。

アメリカの大学に訪問してまず気がついたのが、建物の外や、廊下を歩いているだけで、実験をしている様子などが見えるようなオープンな構造を取っているラボが多いということだ。いくつかの建物では異なる研究室同士の壁が取り払われていて、いつでも人が行き来して議論できるようになっていたり、意図的に学際的な配置をさせた施設も見られた。また、国内にハイレベルの大学が複数あるため、学部と院は基本的に違う大学に出て行くようになっているところが多いようで、同じにずっと留まることを防ぐこのような習慣はインタラクティブな研究を促進していることだろう。色々な人と顔を合わせる環境で、自然と情報の共有が進むことを目指していると思われる。

また、自然科学に携わる女性の学生が非常に多いことにも驚かされた。東京大学の理学部では学生のおよそ1割ほどが女性であり、その内訳の多くは生物系の学科であった。しかしPrincetonで出会った物理学科の女性の学生さんの話では、学科の女性の割合は半数近いと言う。そのように科学の道を歩女性の先達が多く理解があることは、女性研究者にとっては大きなメリットであるかもしれない。

アメリカの大学院では、奨学金の制度が充実している上に、学生はTAやRAで基本的に給料をもらいながら生活することができる。アルバイトなどで努力してお金を工面したりすることは逆にしづらくなっているようで、授業の方も、教育が先生の評価に直接繋がるために、毎回宿題が出たりTAによるフィードバックがあり、非常に1コマの重みが重いようである。そのためか出会った学生の多くは授業をあまり取っていないようだった。そのように勉学、研究に集中できるような生活のサポートがしっかりしていることにより、海外からの留学生はより来やすくなっていると思われる。

人が直接顔を合わせやすく、人が集まりやすい支援システムを持ち、また集まった人を一カ所に留めないような仕組みがある。それらがスピーディーでインタラクティブな研究の気風を作っているのだろう。じっくりと息の長い研究をするのにはあまり向かないかもしれないが、interdisciplinaryな研究を促進させるための強い枠組みがあることを感じた。

最後になりましたが、今回ESSVAPを支えて下さった国際交流室、理学部の多くの職員の皆様、先生方に厚くお礼申し上げます。これからますます、広い視野を持って自身の研究に邁進して参りたいと思います。

小松 慶太

今回のESSVAPに参加して、私は言葉では言い表せないほど素晴らしい体験をした。それらは主に、以下に述べる2つの出会いに関するものである。

1つは環境との出会いである。私は今回、初めてアメリカ本土とアメリカの大学を訪問した。アメリカの大学はどこも1つの町のように広大な敷地を有していると思い込んでいたが、少なくとも今回訪れた大学の中でColumbia大学とRockefeller大学に関してはそうではなかった。Rockefeller大学は東大駒場キャンパスより小さく、Columbia大学も東大本郷キャンパスより若干広い程度である。しかしながら、研究室に目を移すとその広さは日本のものとは全く異なっており、私が訪れた研究室の多くは、日本よりも1人あたりで広いスペースを与えられていた。また、隣の研究室との共用スペースを有していたり、1つの巨大な実験室内に複数研究室が入居していたりと、他の研究室との交流が促進されるような仕組みづくりが積極的になされていた。さらに、多くの研究室には試薬づくりや実験の準備を専門に行うスタッフがおり、掃除も専門の業者が行うなど、研究者にとって研究に専念しやすい環境が整えられていた。これらの環境については、いくらか事前に情報を得ていたものの、それらを目の当たりにし、その環境を実際に使っている研究者の話を聞くと、とても新鮮であり羨ましく感じられた。無論、日本の研究環境にも良いところがあるため、全てを真似すべきとは思わない。しかし、より多くの日本人がアメリカのような研究環境も有り得るのだと知ることは大切だと感じた。

もう1つは人との出会いである。ESSVAPでは、参加学生がそれぞれ訪問したい研究室に直接連絡しアポイントメントをとって個別訪問を行う。その際、会いに行く教授は多くの場合、日本にいては論文の中でしかお目にかかれないような文字通り海の向こうの遠い存在である。実際にお会いする前は内心不安だらけであった。論文を読んで予習してはいくものの、稚拙な英語を話す日本人、しかも学部生など相手にされるのであろうかと。しかし、実際にお会いした方々は皆とても親しみやすく、研究についても真剣に議論していただけた。議論を通して、世界の舞台は自分が思っていた程は遠くないと実感した。また、今回の訪問では多くの学部生・大学院生とも出会い話す機会に恵まれた。彼らの出身国は、直接会話し出身国を聞いた学生だけでも、アメリカ・イギリス・ロシア・中国・韓国・イスラエル・オランダ・コロンビア・日本と、非常に多様性に富んでいた。バックグラウンドは異なるものの、彼らが一様に自分の研究について活き活きと楽しそうに語る姿は印象的であり、自分も彼らのようになりたいと思わずにはいられなかった。

最後に、突然のコンタクトに快く応じ研究室訪問を受け入れてくださったColumbia大学、Princeton大学、Rockefeller大学の研究室の皆様、このような素晴らしい機会を提供してくださった東京大学理学部、渡航前から渡航後まであらゆる場面で支援してくださった国際交流室の五所さんに感謝したい。また、このプログラムでは、普段学ぶ内容は異なるが理学という共通の志を持つ9人の仲間と出会い、彼らと寝食を共にし、学術的な話題にとどまらず互いの将来の事などを語り合うことができた。共に行動し刺激し合う事の出来た9人の仲間たちにも感謝したい。私はこのような機会に恵まれ本当に幸せだった。今後も感謝を忘れずに日々努力して参りたい。