理学部生海外派遣プログラム
前置き

北米大陸の西海岸に置かれ、地中海気候に恵まれているカリフォルニア州は、全米に憧れられている存在である。この中でも公立大学でアメリカ一位を誇るUC Berkeley と常にHarvardと世界一の座を争うStanford二校はこの土地に根付けながらアカデミックな実力をもって常に若き学生たちの心を奪っている。そこで、今年東京大学を代表する学生十名は好奇心と賞賛の気持ちを抱きつつ、3月4日に渡米してUC Berkeleyを5日間、Stanfordを4日間訪問し、EESVAPのメンバーとして二校の教育システムを肌で感じて、きわめて有意義な十日間を送ったのである。
10人のESSVAP2009のうち、物理学科からは4人と天文学科2人、化学科1人、生物化学科3人いた。さまざまな知識背景を持ちながら、ともに大学、研究室、博物館などを訪問し、切磋琢磨をし、すばらしい経験を積むことができたのである。さらに、アメリカの学生同士や東大のOBにも会い、先輩から有用な情報を多く手に入れることができた。
このように、今回のESSVAP2009は国際交流室の五所先生、他のスタッフメンバーおよび両大学のさまざまな方の力により成功に収められたのである。この冊子はESSVAPの最後の一環として参加者10人が日本に帰ってきてから作った報告書で、個人訪問から感想までアメリカで見たもの、聞いたもの、感じ取ったものを最大限まで記録したものである。東京大学に感謝の気持ちを込めて、この冊子は将来少しでも役に立てばと存じ、作らせていただきました。
学問*探求
Individual Visit

川崎 瑛生
所属:物理学科3年
興味のある分野:素粒子実験
3月5日 IceCube Group
Lawrence Berkeley National Laboratory (LBL)のThe Institute for Nuclear and Particle Astrophysics (INPA)にあるIceCube GroupのStokstad教授を訪問した。まずは、先生の部屋でIceCube実験の概要を説明してもらった。この実験は南極点の近くの氷の中に光電子増倍管を多数埋め込んでTeVのエネルギーレベルのニュートリノを観測しようとしている実験である。天体由来の高エネルギーのニュートリノを測定することで天文学に貢献できるほか、太陽や地球の中心に集まったダークマターに由来する高エネルギーニュートリノも観測できる可能性がある。
途中、IceCube GroupのCollaboratorの一人であるAzriel Goldschmidt氏にも話を伺った。時間の関係から気体Xeを用いたneutrino less double beta decayの実験についてのみ説明してもらった。気体を用いるとエネルギー分解能が良い、ノイズの除去が容易、娘核のBaが取り出しやすいという利点がある。
その後、INPAの他のグループがやっている実験についてもざっと説明してもらった。神岡でやっているKamLAND、太陽ニュートリノを観測していたSNO、Teを用いた二重β崩壊実験のCuore、Ia型超新星爆発の観測によって宇宙が加速膨張していることを発見したグループなどがあった。
3月6日 Luk研
UC Berkeleyの物理学科の教授で、LBLの研究員も兹任しているLuk教授を訪問した。教授は現在Daya Bay実験に携わっているが、多岐にわたる話を聞くことができた。
まず、UC Berkeleyの物理学科の素粒子物理の教授陣について紹介してもらった。理論家が8人、実験屋7人いる。実験家は全員海外で実験を行っているという特徴がある。
この後、先生が過去に行った実験の話や僕の自己紹介をしてから、Hyper CP実験について話を伺った。この実験はΛ粒子にCP対称性の破れがないかどうかを確かめる実験で、1997年から2000年までFermilabで行われていた。
続いて、Daya Bay実験について、昨年大学院1年生向けの研究紹介で使ったスライドを用いながら詳しく説明してもらった。この実験はニュートリノの混合角θ13を図ることを目的とした実験で、香港のDaya Bay原子力発電所の近くに検出器を置いて実験をしている。検出器は液体シンチレーターと光電子増倍管を用いたもので、原子炉の直近と数キロ先に検出器を置き、原発から来る反電子ニュートリノのフラックスを観測することでθ13を決定する。
3月9日 Cabrera研
Cabrera教授は都合がつかなかったので、Cabrera研のSenior ScientistのBrink氏に研究室を案内してもらった。
この研究室はダークマターの検出を目指している、CDMS II実験を行っている研究室である。TESという、超伝導体が超伝導転移するときの電気抵抗の非常に敏感な温度依存性を用いた温度計を使っているところが特徴である。まず、ダークマターの検出器の仕組みや構造を研究室の近くのポスターで説明してもらった。この検出器をゲルマニウムの板にくっつけることで中性子以外のノイズは除去できる。また、TESの性能を調べるためのクライオスタットなどがある実験室も見せてもらった。
次に、検出器を作成するクリーンルームを見せてもらった。このクリーンルームはいくつかの学科や企業が共同で使っているもので、半導体の微細加工などができる。
そのあと、CDMS実験の跡地を見せてもらった。この場所はStanford Linear Accele-rator Center (SLAC)ができる前に原子核実験を行っていたところで、物理学科の建物から徒歩3分くらいの場所にある。実験の跡地もクリーンルームのようになっていて、入るときは靴にカバーを付けて入った。
さらに、Brink氏の部屋でもう?し話を伺った。中性子のノイズを減らすために徐々に地下深くに実験装置を移しているという話や、ノイズ除去のためのシールドの話が中心であった。
3月10日 Burchat教授
物理学科の学科長でもあるBurchat教授を訪問した。当初はBaBar実験について話をするためにアポイントメントをとったのだが、その話はポスドクのBellis氏に聞くことになり(後述)、教授には物理学科やアメリカでの大学院入試について話を伺った。
Stanford大学の物理学科の研究分野は素粒子、宇宙、物性、生物物理など多岐にわたるが、応用物理学科やSLACと協力して行っている部分も多く、これら全体で1つのコミュニティを形成している。また、音楽や脳について研究している人の中にも物理屋がいる。大学院生は最初の1年で1クォーターごとに1つの研究室について研究するようになっていて、多くの分野を学ぶことができる。学生の半数は入学当初の興味と別のことを研究するようである。また、大学院生だけで自分の研究を発表する場もある。確かに有用な情報は得たのであるが、この研究室訪問のときはどうも僕の調子が悪く、あまり効果的な質問ができなかった。
Bellis氏
Burchat研のポスドクであるBellis氏を訪問し、BaBar実験について質問をした。
BaBar実験はSLACで行われていたB中間子と反B中間子の性質を調べる実験で、この系にCP対称性の破れがあることを日本のKEKで行われているBelle実験と同時に検証した実験である。これが小林‐益川理論の証明になったことは記憶に新しい。
こちらの質問に答えてもらう形で話を進めた。まず、B中間子の崩壊を調べるときの崩壊モードについて説明してもらった。次に検出器についていくつか質問し、KEKが発見を主張しているテトラクォークや標準模型を超える現象についても伺った。最後に、今後のルミノシティを上げる計画について伺った。
Belle実験で慣れ親しんでいた内容について、BaBarではどうなのかという形でかなり突っ込んだ質問ができたので、非常に満足のいく訪問であった。
Colloquium
Stanford大学の物理学科と応用物理学科が共同で行っているコロキウムに、佐々木さん、有松君と一緒に出席した。タイトルは“The Galaxy Forming Main Sequence”、講師はUC Santa CruzのSandra M. Faber教授であった。内容は銀河の形成についてであった。「log(Mhalo/Msun)が10~12のところで星ができる。銀河が重いと星形成が速く進み、今観測すると赤い銀河となる。逆は青くなる。そのために(U-B)real(AB)とlog(Msteller/Msun)に相関ができる。青い銀河と赤い銀河で相関が異なり、これによって銀河の分類ができる。これからはmain se-quenceがvirial planeでどこに来るのか、Mcrit, Mthreshの物理、ブラックホールの効果の研究が期待される。」という要旨だった。
発表者のプレゼンテーションが上手く、やや専門から離れた内容ではあったものの楽しめた。銀河形成の研究の面白さが伝わってきた。
3月11日 Gratta研
本来この日にIndividual Visitの予定はなかったのだが、現地でこの日の予定がなくなったのと、3月10日にBurchat教授に勧められたので急遽Gratta研の大学院生の倉橋さんを訪問することにした。Gratta研は主にEXO実験をやっている。この実験はneutrinoless double beta decayの実験で、液体キセノンを用いた実験である。
この実験のための実験室を見せてもらった。1つはキセノンの娘核であるバリウムを捕獲するための実験を行っている部屋であった。Baをいじるための真空系とトラップするためのレーザーがあり、素粒子物理というよりは物性物理の実験室の雰囲気であった。このBaの検出器の較正については、あとでオフィスでも話を聞いた。別の実験室ではβ崩壊で出た光を電気信号に変える装置の開発を行っていた。この装置は(N(CH3)2)2C=C(N(CH3)2)2を用いて光子を電気信号にする装置である。さらに、液体キセノンを入れるメインの装置を作っているクリーンルームも見せてもらった。二重ベータ崩壊の実験はノイズを以下に減らすかが至上命題なので、装置をとにかく「きれいに」しなければならない。そのため、クリーンルームに入るには靴の上にカバーを付け、全身を覆う白衣を着、マスクと帽子をつけなければならなかった。また、部屋自体加圧されていて外からほこりが入らないようになっていた。
倉橋さんはSAUNDという1020eV程度のエネルギーのニュートリノを音波を用いて検出する実験をやっていて、それについても話を伺った。検出器はカリブ海に沈められた特殊なマイクで、雑音の除去が大変なようである。た、大学院での生活や大学院入試についてもいくつか質問をした。
Individual Visit

藤田 智弘
所属:物理学科3年
興味のある分野:理論的宇宙論、中でも初期宇宙、特にインフレーション理論
※Stanfordの二日目以外のvisitは佐々木明さんと一緒に行動したので、より詳しい内容は佐々木さんの方をご参照ください。
Berkeley概要
事前にBerkeleyのCosmologyグループでにいるUros Seljak教授にアポイントメントをとろうとしたが我々が訪問するときには大学にいないということなので、教授の紹介でLBLのポスドクである中嶋玲子さ んにコンタクトを取った。玲子さんがポスドクや院生の方とのミーティングをアレンジして下さるという話で、事前のやりとりでIndividual Visitの初日はミーティングと夕食、二日目はBerkeley大学のMartin White教授の院生向けの授業に出席するということになった。(従ってラボに行ったわけではない)ESSVAPメンバーの佐々木明さんも興味がある分野が理論的宇宙論で同じだったので、同行することになった。
Berkeley Individual Visit一日目
LBLのポスドクである中嶋玲子さん(高校からアメリカに在住、専門は弱重力レンズ)と、同じくLBLポスドクの市村さん(ドクターまで東北大、専門は素粒子実験)のお話を伺った。お二人の研究の話を聞かせて頂き、大学のオフィスや院生の居室などを見学させて貰った。次に、夕食をご一緒する院生の方の研究室を訪問した。高橋さん(Berkeleyの院生、高校からアメリカ、専門はCMB)とその同僚の方に研究室で製作中のCMB(宇宙背景放射)の望遠鏡について説明を聞いた。ユウキさんが前に関わった望遠鏡は南極に置かれており、現在制作中のものはチリのアタカマ山脈に置かれるらしい。
5人で建物の屋上に上って夕日と景色を見た後、夕食に行った。夕食はテレグラフにあるエチオピア料理のレストランでご馳走になった。途中からLBLの職員である鈴木さんもいらして、いろいろな話を伺うことができた。BARTの駅まで鈴木さんに車で送って貰ったが、逆向きの電車に乗ってしまいホテルに帰り着くのは深夜になった。
Berkeley Individual Visit二日目
Martin White教授による天文学科の院生向けの授業に出た。授業名は「Cosmology」(日本語では宇宙論)で内容はインフレーション理論についてだった。英語が早いのと、自分の知識不足のため理解できない部分も少なくなかったがちょうど自分が将来やりたい分野についての授業だったので大変良い刺激になった。
授業後、玲子さんにLBLを案内して貰った。LBLでは放射光実験施設や研究者の方々のオフィスと、非常に綺麗な景色を見せて頂いた。LBLは岡の上にあり、伺った時間がちょうど夕暮れ時だったので、ベイエリアの光景は最高だった。私が茶道部であり、鈴木さんが最近お茶に凝っているとのこだったのでLBLで簡単な茶会も行った。アメリカの食事ばかりだったせいか、ご本人の腕のせいか、鈴木さんに点てて頂いたお茶は日本で飲むより美味しかった。
Stanford概要
Stanfordにはインフレーション理論で世界的に有名なLinde教授がいるので、是非会いたかったが事前に送ったメールには返信がなかった。アメリカに行ってからもメールを送ったがやはり返ってこなかった。 結局Linde教授は滞在中Stanfordにいないことが分かり、一日目は佐々木さんについていって、SLACのAbel教授にお話を伺った。二日目はLinde教授の院生と話し、その後彼が紹介してくれたStanfordにいる日本人の方々と話した。
Stanford Individual Visit一日目
Individual Visitの前に全員で訪問した山本教授の秘書の方にお願いして、Linde教授の秘書の方に連絡を取って頂いた。その結果、Linde教授は奥さんと一緒に旅行に出ていることが分かった。現在どこにいるかは秘書の方にも分からないらしい。ただし宇宙論関係の院生の方なら大勢いるそうなので、話させてほしいとお願いすると、翌日に伺うことになった。そこで、一日目は佐々木さんのVisitについて行ってSLACのTom Abel教授に会った。(詳しい内容は佐々木さんの文書をご覧ください)
Stanford Individual Visit二日目
ここまでのVisitは全て佐々木さん(と時々有松)と一緒に行ったが、この日だけは単身で物理の人々がいるVarian Buildingに行くことになった。Linde教授の秘書の方は非常に親切で、一緒に歩き回って私が会うのに適した方を探してくれた。結局、Linde教授の院生のNoorbala Mahdiyarさん(Linde教授は院生を彼一人しかとってない!)と話すことになった。現在のインフレーション理論の問題点や理論の院生の普段の生活などを聞いた。ただ、私も彼も英語が第二言語だったためうまくコミュニケーションできない時があったが、同じ部屋にいた他の院生が助けてくれた。(2人とも英語で話しているのに、さらに英語の通訳がいるという変な状況だった)その後、Noorbalaさんがコロキウムに行くというので、他の日本人の院生を紹介してくれた。 その八井田翔さん(高校まで日本、大学からStanford、専門は素粒子理論)と少し話すと、今度は八井田さんが日本人の教授 を呼んでくれて3人で話すことになった。山口教授(准教授、専門は宇宙論)は青山学院から一年間Stanfordに来ているらしく、お二人に理論的宇宙論をやる際の難しいさや、どの教授につくのがいいのかアドバイスを頂いた。
Berkeleyの方々から頂いた名言集
- 市村さんより
- 『今日のバックグラウンドは明日の観測対象』
- お世話になっていた教授の言葉だそうです。この言葉によって市村さんは素粒子分野をやることに決めた、とのことです。
- 高橋さんより
- 『We Don't Know What We Don't Know』
- ―我々は我々が何を知らないかを知らない―
- 中嶋さんより
- 『まず建物の外壁を書き終えること』
- 一級建築士の試験勉強をしていた妹さんが塾の講師に聞いた言葉だそうです。建物の設計図を時間内に書くときのコツは「まず建物の外壁を書き終えること」。内側の細かいところは後から埋められるし、時間が足らなくても少なくとも建物の概要ははっきりするから。これは研究を進めるときにも同じことが言える、とのことです。
- 鈴木さんより
- 『テープレコーダーを発明しても宣伝は必要』
- 分かりにくい論文では誰も読まない。優れた理論でもそれを認めてもらうには努力が必要という話から。昔、ソニーがテープレコーダーを開発したとき、「こんな凄い製品なら宣伝しなくても売れるだろう」と広告をしなかったら、全く売れなかったそうです。売れたのは、裁判所で記録の録音に使われて有名になってからだとか。例え先に論文を出したとしても、それが難解で、宣伝をしなかったならば、功績は他の人にとられてしまうかもしれません。
紹介してもらった内容
話して頂いた内容をまとめると以下のようになる。(専門的な内容は他の人が読んでも面白くないと思うので省く、より一般的な内容の記載に努める)
Berkeleyで伺ったお話
- アメリカの大学に申し込むときに必要なこと
- 推薦状を教授に書いてもらう
- エッセーを書く(志望動機とか)
- TOEFL、GREの要求点数をとる
- 院生と教授に要求されること
- アメリカの大学院では学費や生活費をサポートしてもらう代わりに、学部生に教えながら自分の研究を進めることが要求される。
- 院生のころから教えることになれるので、教授になったときにも良い授業ができる。
- 日本ではティーチングアシスタント制度がアメリカほど機能しておらず、院生はあまり学部生を教えない。
- さらに、教授に対する生徒からのフィードバックが昇進や給料に反映される形でないので教授の授業能力が比較的低い。
- 理論と実験の院生
- アメリカでは各研究室がその研究費によって院生の学費や生活費を支払うことになる。従って院生を多く持つには、より多くのお金がかかる。一般に実験系の研究室は予算が潤沢で、実験を進めるために多くの人手(つまり院生)が必要なため比較的入りやすい。一方理論系の教授は予算がそれほど多くなく、理論研究には人手もそれほど必要ないため自分の研究費を削ってまでサポートしたいような、よっぽど優秀な生徒でないと院生といて入るのは難しい。
- 学部時代に身に着けておくべきこと
- 統計学…実験に必須
- プログラム…何をするにも必要
- 場の量子論…理論研究の基礎
- 微分幾何学…一般相対論を使いこなすため
- オーダー評価の技術…ミスを防ぐ
- 体力…これが資本
- プレゼン力…分かりやすく人に伝える力は重要
- Stanfordで伺ったお話
-
- ひも理論が不評なのは日本だけ
- 日本では何故かひも理論などの素粒子理論が他の分野の研究者から批判されることがあるが、日本以外の国ではそんなことはない。そもそもひも理論も実験で検証可能な部分も出てきている。伝統的に物性が強い日本だからこそ存在する偏見なのかもしれない。(東大理物でひもは良くないと刷り込まれた自分にとっては衝撃だった)
- 世界と戦うことを意識しろ
- よく理論家になれるには一つの学年から一人程度と言われる。競争が厳しい世界で、一緒に勉強する優秀な生徒に目がいくのは仕方ないことかもしれないが将来的には世界全てを相手にして研究をすることになる。同学年を気にするのではなく、より大きな視野をもって、将来を考えるようにしよう。
- 勉強する時間がある学部時代を大切に
- ポスドク以降になると、ある期間内に結果を出すことが要求され、追われるようにして研究したり論文を書いたりすることになるので、ゆっくり体系的に勉強する暇がなくなる。(山口教授はStanfordに来ている間に久々に教科書が勉強できて幸せだといっていた)時間がたっぷりあり、勉強するだけで褒められる学部生と院生前半にできるだけ多くを勉強しておくと良い。そのうち自分の書く論文の周辺だけ勉強したり、論文を読んで断片的な知識が入ったりするのが多くなり、結局基礎の部分は学部時代に勉強した財産でやっていくことになる。
Individual Visit

渡邊 悠樹
所属:物理学科3年
興味のある分野:condensed matter physics、とくに高温超伝導などの強相関系物性理論に興味があります。

Individual visit 1:
Prof. Richard E. Packard
Condensed Matter Experiment,
Department of Physics,
University of California, Berkeley
Packard教授自身は出張中でいらっしゃらなかったので院生のAditya Joshiさんに研究室を紹介していただきました。
まず、地下2階にある3つの実験室をまわり、様々なcryostatなどについて説明を受けました。振動が伝わるのを防ぐために、真空を引くためのポンプが別の部屋に隔離されており、さらにさまざまな工夫がなされていたのが印象的でした。
その後、超流動Heに見られる量子渦に対してPackard教授が以前行った有名な実験についてや、最近の研究対象である超流動Heで見られるJosephson効果やQuantum whistleについてのお話などを伺いました。 議論は白熱する一方で、瞬く間に2時間半が経過してしまいました。
Individual visit 2:
予定していたProf. Marvin L. Cohenが急病でお帰りになっており会っていただけなかったため、急遽、物性関連の教授のドアをアポなしでたたいて回ることになりました。
物性実験のProf. Alex K. Zettleの院生の方が、研究室の案内をしてくれました。10室にも上る実験室を回り、様々な顕微鏡を見て回りました。その後、別の研究員の方に、graphineの超伝導に関するお話を伺いました。
日本の大学よりも理論・実験の垣根を越え た付き合いがあるようで、その後理論系の院生の方にも紹介していただきました。実験系の院生と理論系とが、いま進行中の実験の内容や、その結果のメカニズムに対する見識について頻繁に意見交換・情報共有を行ってるらしい様子が新鮮でした。
Individual Visit

中河西 翔
所属:物理学科3年
興味のある分野:condensed matter physics と ultra-cold atomic gas
Prof. Fetter
良書として名高い”Quantum theory of many-particle systems”の著者であるAlexander L. Fetter先生に渡辺と私の二人でお会いした。10日のIndividual Visitの時間と、11日の空き時間に(こちらはアポイントなし)訪ねたが大変丁寧に相手をしてくださった。この著書を多少かじっていたので、その中で軸をなしているダイアグラム展開についての先生のpictureをお聞きした。このような扱いに不慣れな私たちにとってこれは単なる計算手法であるのか生き生きとしたイメージが持てるものなのか気になったからであるが、ダイアグラム展開によって得られた結果が現実の物理現象をよく説明しているという点においてこの展開は現実に起きていると理解できるとの回答であった。個々の?についてはどうかと尋ねてみたが明確な回答は得られなかった。英語のつたなさを痛感。また理論家にとって大切なこと、研究のモチベーションはと尋ねたところ、”Experiments”とのこと。つづいて実験結果を視野に入れない理論は単なるゲームにすぎないと言い切っていたのが印象的であった。また様々な文献を紹介してくれた。まずはこれらを読んで勉強しなさいという激励と受け取った。
Dr. Hashimoto
現在Stanford Univ.のShen Lab.にポスドクとして所属している橋本誠氏にお会いした。LBL内のALS(Advanced Light Source)で実験をおこなっているのでそこを案内してもらった。放射光を用いて超伝導体の電子状態をみることが研究対象であり、パネルを用いてギャップ構造について解説してもらった。高温超伝導については未だ満足な理論が得られていないが、実験においても同様に「まったくわかっていない」のが現状であるそうだ。新しい実験を行えばそれだけ新しい結果が得られるわけだから面白いというのがモチベーションであるようだ。研究室では個人が独立した研究テーマを持って研究しており、今回見せていただいた実験装置は橋本氏が単独で動かしているそうである。その後夕食を共にしポスドクの生活、院生時代の話を聞かせてもらった。狭い世界であるからとにかくコネが重要であると言っていたのが強く印象に残った。自身もその恩恵にあずかったそうだ。
Individual Visit

佐々木 明
所属:天文学科4年
興味のある分野:星形成や銀河形成など。宇宙論に興味があって、どうやって宇宙が今のような姿になったのか、に迫れるような理論的研究がしたい。
UC BerkeleyのChristopher McKee先生
現在の宇宙における星形成、および、宇宙初期の星形成について数値計算と解析的アプローチを併用して研究している。この分野の研究に長い間携わってきた。
研究室訪問で聞いたこと
McKee先生のオフィスを一人で訪問した。先生の論文は、読んでいない訳ではないけれど、先生の研究内容について先生と議論ができるほど詳しいことは分からなかったので、今回のvisitでは、天文学について疑問に思ったことを率直に聞くということに重点を置いてみた。
宇宙初期の星形成について、まだやり残されている仕事がありますか?と聞いたらどんな分野にも必ず残っていることはある、と言われた。というか、もっと正確には、どんな分野でも人はもっと詳しく知ろうとするから、まだやることはあると言えばある、ということを言われた気がする。
他にも、宇宙初期の観測についてと、ダークマター粒子について質問させてもらったように思う。
30分位はお話させてもらったと思うのだけど、その中に大変印象に残っている教えが二つある。一つは、「宇宙初期の星形成がやりたい」と思ってそればかり勉強するのは望ましくない、大学院では自分の専門分野の勉強に力を入れるのはもちろんだが、それ以外の分野の天文学にも興味を持ち続け、それらの分野の研究者とも積極的に交流せよということ。これは、他の分野の天文学を研究する上で使われている考え方が、自分の研究にも応用できることがあるからだそうだ。二つ目は天文の分野でどのような研究をする上でも必要になる物理や宇宙物理を大学院でもしっかり勉強しなければならない、ということだ。研究を一生の仕事にするのであれば、研究テーマが一生同じであることはまずない、だから、いろいろな研究の基礎になる科目を深く理解していなければいけない、ということらしい。これらの言葉を忘れずに、大学院の勉強に励んでいきたい。
Stanford大学のTom Abel先生
スパコンを使った大規模シミュレーションの専門家。宇宙で一番最初にできる星は大質量の星であることを初めてシミュレーションで示した。first star(宇宙が始まってから一番初めにできた星)やfirst galaxy(同じく、一番初めにできた銀河)が宇宙の進化にどのような影響を与えるか、などを研究している。
研究室訪問で聞いたこと
天文学科の有松君、物理学科の藤田君と訪問した。first starの研究について、先生がつくったシミュレーション画像を見せてもらいながら、説明してもらう。Abel先生はこれまでにadaptive mesh refine-ment(AMR)というシミュレーション法を使って様々な研究をしてきた。AMRは、より効率的に計算をするために、細かく物理量の変化を追う必要がある領域はメッシュをたくさんきって、適当でよいところはメッシュを少ししかきらない、というやり方だ。実際にシミュレーション画像を見せてもらうと、星が生まれてジェットなどが吹き出している領域はきめ細かく見えるが、あまりそのようなことが起こっていない領域はメッシュが粗いのでぼこぼこして見えた。宇宙で一番最初にできる星について教えてもらったり、星ができるとまわりの領域の星生成にどのような影響を与えるか、教えてもらったりした。一緒に訪問した二人は有松君は観測天文学を、藤田君は素粒子的な宇宙論に興味があり、Abel先生の研究とは直接関係がある分野ではないけれど、それぞれ鋭い質問をぶつけていて、とても勉強になった。
Individual Visit

有松 亘
所属:天文学科3年
興味のある分野:Planetary astronomy and astrochemistry
Prof. Paul Kalas
Paul Kalasは系外惑星、恒星周ダストの観測を専門とする観測天文学者であり、2008年にHST(Hubble Space Telescope)を使用して史上初めて太陽系外の惑星を可視光域で直接撮像に成功したと発表し、脚光を浴びた人物である。
彼の研究室はCampbel Hallの4階に位置しており、そのあまり広くない部屋には彼と、彼の研究室に所属しているとおぼしき大学院生が一人、それぞれ自身のパソコンの前にたたずんでいた。
彼にはまずHSTでの具体的な観測手項や観測対象の選択基準などを説明していただいた。その中には『HSTは人気で中々プロポーザルが通らなかった』なんて言う実際に使用している研究者からならではの中々生々しい(笑)証言も得ることができた。
続いてKalas氏はCampbell Hallの地下にあるKeck Observatoryの望遠鏡をリモートコートロールする操作室に案内してくださった。こういった設備は国立天文台三鷹キャンパスないにもあることから(無論、すばる望遠鏡の遠隔制御室のことである)、設備自体はそこまで目新しいものではなかったが、彼がこのシステムを使用すれば『現場で操作するのと比較して全く遜色ない内容のコントロールができる』と自信を持って断言していたのは強く印象に残った。
Individual Visit

松崎 維信
所属:化学科4年
興味のある分野:物理化学、特に分光学
Professor Alexis T. Bell (Department of Chemical Engineering, UC Berkeley)
触媒の研究をされているBell教授の研究室を、松井くんと一緒に訪問した。Bell教授は出張中であったため、大学院生の方が案内してくださった。
「触媒反応の分析に用いる分光法に興味がある」と伝えていたので、分光用の装置を中心に見せていただいた。具体的にはFT-IR、in situ FT-IR、in situ Ramanである。測定装置内を別の気体で置換する設備など目新しく、興味深かった。EXAFSの装置も見せてもらえないか頼んでみたが、Stanfordに置いてあるということで、見学できなかった。Stanfordは一般にはUC Berkeleyのライバルだと言われているが、研究上の協力は普通のようである。
Professor Graham R. Fleming (Depart-ment of Chemistry, UC Berkeley)
Fleming教授の研究室を訪問した。最近は主に光合成の過程で起こるエネルギー伝達の研究を行っているようである。
まず2D Photon Echo Spectroscopyの装置を見せていただいたのち、セミナーに参加させていただいた。セミナーのタイトルは"Investigation of Excitonic Coherence in LHCII by 2D Electronic Spectroscopy"であり、理論の研究に関するものであった。その後はポスドクの方に研究室内のほぼすべての実験装置を見せていただいた。研究室の方々はみなフレンドリーであり、3時間近くも滞在させていただいた。
Professor Michael D. Fayer (Chemistry Department, Stanford University)
超高速分光に関する研究をされているFayer教授の研究室を訪問した。Fayer教授は、大学院生あるいはポスドクとして研究室に加わることをお薦めしてくださるなど、気さくな人であった。
Fayer教授に話を伺った後は、大学院生の方にUltrafast 2D IR Vibrational Echo Spectroscopyの実験装置を見せていただいた。赤外光のような目に見えない光を使って装置を組む場合のテクニックを教わるなどでき、有意義であった。
実験室以外にも、図書室など化学専攻の建物全体も案内していただいた。
Applied Physics / Physics Colloquium (Department of Physics, Stanford Uni-versity)
UCSCのSandra Faber教授のコロキウムに出席した。コロキウムのタイトルは"Galaxy Evolution Over the Last Two-Thirds of Cosmic Time"であった。ホールの後ろの方で立ち聞きをしている人もいるなど、非常に多くの人が参加していた。質問も活発であった。
Individual Visit

松井 亮磨
所属:生物化学科3年
興味のある分野:神経系における分子メカニズム、とりわけ神経系の発生機構と記憶の分子機構
UC Berkeley
Lu Chen Lab
(松崎君と同行) Lu Chen研ではシナプスのhomeostatic plasticityの分子機構ついて研究している。Homeostatic plasticityは神経細胞の刺激に対する感度を調節するnegative feed-backの機構であり、この研究室での主な研究焦点は、シナプス伝達阻害後に起こるretinoic acidによる転写非依存的/dendrite局所的GluR1(AMPARのサブユニット)の 合成機構である。この研究室ではマウス•ラットの海馬の他に、GluRが用いられているショウジョウバエの神経-筋接合部をモデルとして扱っている。論文についての質問をした後にラボメンバーの紹介と機器の説明をして頂いた。その後、一人一人のポスドク及び院生に彼らの研究の話などをしてもらった。興味深いデータも見せてもらえておもしろかった。
Richard H. Kramer Lab
この研究室では主に2つのプロジェクトが行われている。一つは、光の波長依存的にcis型とtrans型に可逆的に変換できるazobenzene部を含む化学物質によりチャネルタンパク質を直接修飾し、チャネルタンパク質の開閉を光依存的に制御する方法の開発である。もう一つは、視神経のrod細胞における神経伝達物質のexocytosisの分子機構の解明である。教授と少し話してからポスドクや院生の方々と一人一人話をして回った。どの方も質問には丁寧に答えてくれた。
John Ngai Lab (with Hien)
John Ngai教授は嗅神経系の発生に関与する遺伝子の探索および同定を行っている。今回は嗅神経の発生の極めて初期の段階で発現する遺伝子Foxg1について説明してもらった。2年と3年の時に一回ずつ東大でJohn Ngai氏のセミナーを聴講したことがあったが、自己紹介したのは初めてであった。今年もまた東大に来るそうなので「また東大で会おう。」と言って別れた。
Stanford
Susan McConnell Lab (with Hien and Kang)
この研究室では、大脳皮質神経細胞が”脳梁を通り反対側の大脳半球に軸索を投射する性質”と”視床•中脳•後脳•脊髄などの皮質下部へ軸索を投射する性質”のどちらかを発生過程において選択する機構を分子レベルで探っている。具体的には、Satb2/Ctip2/Fezf2などの話をして頂いた。ラボの奥には子宮内電気穿孔法を行うための手術室があった。教授はとても気さくな方だった。
Liqun Luo Lab (with Hien)
教授は出張で会えなかったので、Luo研でポスドクをやっている宮道さんに研究室の案内及び研究の説明をしてもらった。本研究室ではモザイク解析の手法の改良及び神経系への応用を目指しており、ショウジョウバエではMARCM(Mosaic Analysis with a Repressible Cell Marker)を、マウスでは主にMADM(Mosaic Analysis with Double Markers)を用いて神経系の解析を行っている。宮道さんはマウスの神経系をMADMで解析している。メインの研究データだけでなく、MADMを用いたことにより非相同染色体間で組換えが起こってしまったというcrazyなデータも見せてもらった。宮道さんも東大の生物化学卒だったので、自分の学科の裏話もいろいろ聞けた。ラボで話した後はcafe、寿司屋さんにも連れていってもらった。人生初のカリフォルニアロールは意外とおいしかった。
Individual Visit

康 東
所属:生物化学科3年
興味のある分野:細胞極性、転写開始や免疫認識とアレルギー
UC Berkeley
Drubin Lab:
Drubin Labは細胞骨格を主な研究テーマとしたラボで、それによりタンパク質細胞内輸送やエンドーサイトーシス、細胞分裂などを研究するグループである。名前から示しているとおり、細胞骨格は細胞に物理の支持を与えるタンパク質で、きちんとした形を保つのに非常に重要である。また、最近ではアクチンがタンパク質の細胞内輸送やエンドーサイトーシスなどに関与している経路が見つかり、これからも新しい経路もどんどん発見されるのではないかと考える。(個人の興味)Drubin labは六年前にアクチンとエンドーサイトーシスと結びつけ、とても面白い論文を出したのである。アクチンフィラメントはエンドサートーシスの伸長段階に役を果たし、そういうところ説明してくれてGFPの重要性に改めて認識してきた。
そして、留学に助言をしてくれた。UCBは公立大学で、外国人留学生の奨学金は学校自身が負担せねばいけない。したがって、留学生の数はそんなにいない。しかし、U of TexasやWisconsinの方はアメリカ中部で、アメリカ人が住みたくない代わりに、外国人をたくさん取り入れている。そこの研究もランキングは高くないが、ノーベル受賞者はたくさんいる。
Doudna Lab:
Doudna LabはRNAを構造生物学的解明することを主なテーマとして研究しているラボである。RNAならどんな研究でもDoudna Labに歓迎され、わりとRNAの分野に幅広く進出している。今回はprofessor Doudnaには直接会えなかったけど、大学院生のHaurwitzとNoland二氏に案内してもらって、話を聞きました。NolandはRNAiのDicerを研究していて、Haurwitzは今細菌のRNAiを研究しています(論文未発表なので省略)。両氏の話を聞いて、主にアメリカの教育システム、PhDの話や研究している話、ラボの話について相談に乗ってくれた。
アメリカ大学院生の一年は直接研究室に所属せず、rotationでどんどん研究室をまわしながら、自分の研究分野を探索するシステムになっている。したがって、学部の間で最も重要なのは何を勉強したかのではなく、どういう資質を備わっているかが最重要な課題である。研究室の横の関係が緊密であり、他の研究と協力することがUCBではとても簡単である。
Berger lab:
Berger labは主に細胞核内での現象、たとえば、複製開始やDNAの位相変化(トポイソメラーゼ)を構造的に解くラボである。構造生物学は今の難点として百の一秒で起こる反応を安定に結晶に作ることであり、そのことでBerger labは力を入れながら、モデルを立て、予測している。行った際には先生がご多忙なのであまり質問する時間なかったが、それでも私の問いに親切に答え、そしてアメリカ留学について助言してくれました。やはり一番重要なのはpersonal statementの書き方であるが、重要なのは専門的な力を強調することである。そして、学部時代の卒業研究もとても重要であり、その研究の経緯だけではなく、及びその解釈の仕方がとても重要である。
McConnell Lab:
このラボは主に発生段階の神経を研究し、大脳6層の神経はそれぞれどういうシステムの下で発生したかを明らかにしようとしている。McConnell labに行くときに松井君とヒエンさんと一緒に行った。先生はとても親切で、スライドで今までの研究を話してくれた。(未発表の部分もあるので詳しい内容は省略)McConnell labは割りと少人数で、手法的に新しいことからとても面白い。この中でも胎児のマウスの遺伝子組み換え手術はもっとも重要で難しいのである。ところが、マウスのような高等生物で部分的に遺伝子組み換え技術はあまり聞かれない現在、この技術は一番有効であるのであろう。
Nelson lab:
Nelson labはスタンフォードのJames H. Clark CenterのBio-Xに所属しており、細胞極性を研究するラボのである。研究する手法は典型的な分子生物学や生化学的な手法であるが、研究するテーマは斬新なものや面白い物が多いので、とても独特なラボではある。そしてラボでは自由度が高く、研究する制度は基本的に一人一分野。
Nelson先生はとても親切な方で、私の疑問を答え、未発表のデータも見せてくれた。私は中心体にとても興味を持っていたので、Nelson先生は私にすでに卒業していた学生の実験結果を見せてくれた。その中でも中心体にAPCも局在していることを始めて分かるようになり、APCは中心体の複製制御に関与することを聞いてとても驚いた。その後、現在そのラボに所属している大学院生の結果(細胞の繊毛に関する)を見せてくれた。(未発表)Bio-xの特徴はサイエンス、医学、エンジニアを三位一体化とし、壁や枠を外し、もっと自由な空間で研究できるように設計している。Nelson labも自由をとても重視し、学生にできる限りの自由を与えている。Nelsonの訪問はアメリカで最も成功した訪問だった。
Individual Visit

ズ ゴク ヒエン
所属:生物化学科4年
興味のある分野:概日時計の分子機構

with Professor Banks in his of-fice

with PhD student, Mr. Kaccie Li and programmer, Mr. Pavan Tiruveed-hula

マウスの解剖
2009/03/05 @ Banks lab
- ラボの紹介
- 視覚の認識を研究している研究室。研究の内容は以下のように分けられる。
- Visual reality
- Stereoscopic surface perception
- Binocular correspondence
- Binocular visual direction
- Picture perception
- Self motion perception
- Multisensory interactions
- Infant spatial vision
- 先生が忙しかったので、細かい研究の話は出来なかった。
- 研究室の雰囲気
- ポストドック2人、大学院生7人とプログラーマー1人の研究室。先生以外、ポストドックの Takashi Shibataさんとしか会わなかった。研究室では、時間限定などがなくて、みんな自己責任で研究をやっている。また、教授との相談時間は日本より多い(毎週lab meeting以外、個別相談がある)。
- 紹介してもらったこと
- 実験室をざっと見せてもらった。実験に使われている装置は光学系のもの。お主に、左目と右目それぞれの目の認識を分析する装置。
090306 @ Roorda lab
- ラボの紹介
- 眼光学の研究をやっているところ。特に、Adaptive Optics Scanning Laser Oph-thalmoscopeの実験系を立ち上げた。簡単に言うと、この実験系を使用して、目に最適なメガネを作成するための情報を得ること。
- 研究室の雰囲気
- 実験室の奥に教授室があるので、教授が出張でない時、いつでも教授との相談ができる。研究室にいる時間は人によって異なっているが、大体午前8-9時ぐらいから午後8-9時ぐらいまで。土日に実験をやっている人もいる。しかし、夜中実験する人がいない。
- 研究室において、日本より団結が弱いが、研究室の間の交流が多い(建物全体にある研究室のセミナーなどがある)。
- 紹介してもらったこと
- 先生がいなかったため、大学院生が紹介してくれた。実験室を拝見させてもらった。主にやることは光学系の配置をすることや、得られたデータを処理するプログラムを作ること。
090309 @ McConnell lab
(松井君と一緒に行ったので、共通部分を省略する)
- 研究室の雰囲気
- ポストドック以外、大学院生一人しかいないので、先生からの教育がすごく重視にやっている感じ。先生の方からも一人の学生に十分な教育の時間が取れるように毎年学生を一人か二人しか受け入れていない。人数が少ないのに、実験スペースが広い。一人のポストドックや学生に当たり、実験ベンチ、勉強デスクと実験用の小型の個別冷蔵庫がある。動物の実験に関しては、実験に使う動物以外、全部が別館の動物センターで維持されている。これは、自分でやるのではなく、動物センターがやってくれる。