理学部生海外派遣プログラム
感想と意見
JI,Liang
イギリスの聖堂
全てのカレッジに聖堂が備わっていることは非常に驚きであった。聖堂は外観も内装もたいへん趣があった。どの聖堂でも毎日ミサがあり、そこで心地よい聖歌が楽しめる。聖堂は観光客にとっては本当に良い観光スポットであると思う。では、地元の人にとってはどうなのだろうか?残念ながらそれはよくわからなかった。しかし、聖堂に入るといつも落ち着いて安らいだ気持ちになる気がするので、もしかしたら聖堂に入って気持ちを落ち着かせるイギリス人もいるかも知れない。
オクスフォードとケンブリッジの国際性
オクスフォードとケンブリッジは実に国際的な町だった。町で見かけたほぼ半分の人が根っからのイギリス人でないような気がする。アジア人、アフリカ人、ヨーロッパ人、アメリカ人など様々な人がいた。その上、滞在中に色んな人が親切にしてくれた。ケンブリッジで訪問する建物を間違えたとき、そこの事務の方が僕のことを全く知らないのにも関わらず、国際交流室に連絡して正しい目的地を聞いてくれ、一緒にタクシーを待ってくれるなど本当に僕のために手を焼いてくれた。また、オクスフォードの紅茶屋で会った店員の方は僕が東京大学の学生かと尋ねてきた。さらに「昨日も2人の東京大学の学生がうちの店に来たんだ。君たちのことは雑誌で見たよ。みんな才能があるんだってね。」と気さくに話してくれた。オクスフォード大学とケンブリッジ大学が海外からの有能な学生を呼び込むことが町の国際性に貢献しているのではないかと思う。本郷も将来そんな国際的な場所になるだろうか。
The loyalty of students in Oxford and Cambridge
オクスフォード大学、ケンブリッジ大学の学生の母校愛は相当なものである。大学が素晴らしいとういことだけでなく、カレッジでの他の学生との深い人間関係の形成が起因しているようである。ケンブリッジの博士3年の学生にケンブリッジで博士課程を終えた後どうする予定なのか尋ねたところ、彼女は大学生からケンブリッジにいて本当にここを離れたくないが、ポスドクは違う大学に行く予定だと答えてくれた。オクスフォードの事務スタッフは約1/4の学生が大学を卒業した後もオクスフォードに残ると話してくれた。しかし、大学側は少なくとも博士課程を修了した学生に対しては他の大学や研究機関に移ることを薦めていて、そうすることでオクスフォードで学びたい世界中の学生にもっとチャンスを与えられるからだそうである。同じ学生をいつまでも教育するより色々な個性を持った学生を教育するほうが、大学にとっても良いのであろう。学生は大学を愛しているけれども(愛しているからこそ)大学を去るのかもしれない。
装置の共有
イギリスの生物学者は自分たちの所有している実験装置以外にも共用の装置を使用する。例えば、1つの建物の研究室同士がDNAシークエンサー、X線発生装置、顕微鏡などを共有する。装置や設備を共有することの利点は限られた予算と装置の置き場所で色々な装置を使えること、装置の使い方についてより多くの人と話しあうことができることが挙げられる。逆に欠点としては、多くの研究者が同じ装置を使いたいとなると、それぞれ使える時間が限られてくること、装置の状態を常に万全にすることが難しいことなどが挙げられる。イギリスの研究者はそのような欠点にも関わらず、協力して研究することが好きなように装置を共有することを好む傾向にあるようだ(った)。
謝辞
イギリスへの大学訪問は今までの人生の中でも素晴らしい体験だった。将来のために日本にいるよりたくさん学んだと思う。色々な方々にお礼を言わなければならない。
国際交流委員会の皆様には僕を選んで下さったこと、旅費を支援して下さったことに感謝します。
五所先生に訪問の計画を立てて下さったこと、イギリスで案内して下さったことに感謝します。
イギリスで出会った全ての方に僕のためにしてくれたことに感謝します。
そして、ESSVAPの仲間に色々と助けてくれたことに感謝します。
8人の仲間と五所先生とイギリスにいけたことをとてもうれしく思います。
NGUYEN,Thanh Phuc
今回のCambridgeとOxford大学の訪問中に、私は2つの大学の先生と大学院生との、グループもしくは個人での訪問をやった。2つの大学は英語圏の中の最初の大学で、完璧な歴史的な建築や教育的な環境をもつ。そこでの先生や学生も親切である。東京大学と比べたら、2つの大学には参考になりえるいくつかのよい点がある。
オープン教育や研究の雰囲気:
生物化学研究所であるGurdon Instituteへのグループ訪問は私の印象によく残った。各研究グループ内やグループ間のミーティング、ゼミが行なわれる大きな部屋はたくさんある。そして、Institute にいる教授や学生が研究などについて話し合うことができる非常に大きなCommon roomが設けられた。毎年、各研究グループが他のグループの前で自分がやった研究について説明する発表会は行なわれている。
大きな投資やSpin-out会社との協力:
Oxford大学のMPLS Divisionでは私たちはstate-of-the-art、新しい研究所について紹介された。例を挙げると、New Chemistry Research Laboratory(2004)、New Biochemistry Building (2008)、New Mathematics Building (2011)、New Earth Sciences Building (2010)などである。それらの研究所を建設するための資金の大部分は大学のspin-out会社などの投資金からである。そのような大学と会社の協力は大事だと思う。今回の各訪問の時間はやや短かったが、先生や学生たちとの話を通していろいろなことを学ぶことができたと私は思う。私は今回学んだことをできるかぎり自分の将来の勉強や研究などに生かせるように頑張ろうと思う。最後に、東京大学の方々、CambridgeやOxford大学の方々、五所さん、他の学生メンバーなど今回の訪問プログラムに関連する方々に心深い感謝を申し上げたいと思う。
SOMEYA,Masato
まさにbroaden my horizonsできた。大学の訪問はもちろん、それ以外でのイギリス生活も新鮮で有意義な10日間だった。
YAMADA,Shintaro
研究所の特徴 (Dr Masanori Mishimaから伺った)
1) Gurdon instituteの特徴
- 研究所内でまとまりが強い
- 共用施設
- 器具の洗浄、培地作り、備品の注文は、研究所の専門スタッフが行う。共用の顕微鏡には専門の技術員がメンテナンスや操作法の説明も行う。
- 意見交換
- 似た方法が使えるため、実験動物が異なっても研究室間の意見交換が頻繁である
- 研究所内セミナー
- 週1回、研究所内の全員が集まり、学生2人ずつ研究発表する。専門外の人に研究を紹介する練習になる。grantを申請するため他分野の人にアピール出来る文章を書く練習になる。
- 他研究室の内容を把握
- 研究所内の他の研究室の研究内容をよく把握し、外部の人にどの研究室の研究でも話せるようにしている。研究所全体の責任となる不正を研究所内で起こさないためでもある。
- リトリート
- 研究所全体のリトリート、グループリーダーだけのリトリートがある。
- 人事
- 採用候補者は、研究所内のグループリーダー全員と面接する。
- grant
- 機器を買うとき、他研究室との共用にして申請すると許可が出やすい。審査員も多くの研究所で使える方が投資の効果があると判断する。
- 飲食コーナー
- 研究室内の多くは飲食禁止である。食事やティータイムに研究所内のカフェへ多くの人が集まり会話する。
2)欧米にある特徴的な研究室
- 研究室の部屋割り
- 一つの大きな部屋に多くのグループが共存する、研究室間の垣根を取り払った研究所がある。
- 学科の区分をなくす
- manchester大学の生物科学は学科の区分をなくし、一つの学部に200以上のグループが存在する。多くの共用設備を設けられ、効率がよく、共用設備投資のためのgrantは取りやすく、研究環境がいい。
研究室の考察
施設
- 移動時間の節約、部屋の作りと機器の配置
- 移動時間を最小にすることで、実験がスムーズに進められる。
- 移動の障害
- 部屋間のドアがない、あるいは仕切りのある大きな一部屋は移動しやすい。部屋の入り口や交通量の多い通路を広くすると、移動の妨げが減る。共用の実験台は、交通量の少ないところがいい。通路に面した共用実験台は、実験者が常に通行人の邪魔になっていた。
- 移動距離
- 実験机を中心にして周囲に機器を置けば移動距離が最短となる。しかし、実験者が多くなると機器への往復で通路が混雑するため、機器を分散させて、機器を実験机が囲むようにすれば移動時間が短くなる。実際、見学した小グループ(~10人)の研究室は同様の設備を一箇所に固めて配置する傾向があり、私が所属する研究室では装置が中央にあり、また汎用機器は分散していた。実験者が大多数になれば実験室は細長くするといいのかもしれない。通路に出やすく、部屋の側面の割合が高いからである。
- 防犯
- 研究室の玄関に受付があり、またドアには常に鍵がかかり、部外者が入れないようにしている。
制度
- 少人数のグループ(~10人)が多い
- 講座制でなく教授の下に准教授が就くことは少ない。10人以上は大きいグループに入る。
- 専門技術を持つpostdocが多い
- 学部生の研究室配属はなく、院生、postdocにより研究が行われる。
研究方針
- 研究の役割分担
- 各人が高い専門性を生かした研究を行い、異なる技術を持つ人やグループと協同して一つの問題に対処する研究スタイルが比較的、盛んに感じた。各割当で十分活躍出来る高い専門知識と、異なる技術を持つ共同研究者を探し意思疎通出来る広い見識を育むオックスブリッジの教育制度がこの研究スタイルで生きる。
- 実験セミナー
- 研究室内の実験報告は、実験結果と生じた問題の解決策だけでなく、実験の意義や展望も議論する。また各人がよく質問して研究内容を把握するため、実験の羅列で意図が分からない状態にならない。
- 議論
- 議論は新たな発想を育むだけでなく、説明することで考えが整理でき、説明自体も上手くなる。正し議論を世間話の時間浪費にせず、実りあるものにする心がけが必要である。予め内容を整理し、目的を明確にして始め、終了時間を守る。具体的な質問で具体的な意見が得られる。
- 両大学では、食事やお茶の時間を利用して、一日の生活にうまく議論の時間を取り入れていた。他の研究室の人と実験法について真剣に議論していた。また全体セミナーの開催やカフェの設置で議論相手を見つけられるよう工夫されていた。
ZHANG,Xu
今回のプログラムに参加させていただき、たくさんの収穫があり、新鮮さを味わうとともに、感動の気持ちに満ちていた日々を過ごした。
まず印象深かったのはケンブリッジ大学とオックスフォード大学の長い歴史の中で洗練された、日本と違う教育システムであった。専門分野の勉強の場を提供する学科(department)の他に、学生の生活と課外活動の場を提供するカレッジ(college)制度は各分野の学生の間の交流を増やしている。そのことが限られた枠組みにとらわれず、広い視野を持つ学生の育成につながり、学術面において学際的分野に移行する傾向につながっていると思う。それに、「大学の町」という概念が実体験できた。学生達は毎日学術的な雰囲気に囲まれ、勉強や研究に専念していることに感心した。
ケンブリッジ大学のほうで、小さい頃から憧れていた数々の有名な物理学者が研究する場であったCavendish研究所にやっと訪れることができ、とても感動した。普段教科書で見慣れていた実験装置を実物で見ることができるのはやはりインパクトが強かった。そちらで一番印象深かったのはBSS(Biological and Soft System)という研究グループであった。BSSでは医療への物理的応用の研究を行い、物理学はもう純粋な学問の枠組みにとらわれず、社会の色々な面へ浸透し、貢献していることが分かった。この研究グループは来年Cavendish研究所で新設されるPhysics for Medicineへ移り、Cavendish研究所の今後の発展方向がどんどん学際的分野に移行することに注目が集まっている。二つの大学が800年の歴史の中でずっと競い合いながら成長してきた。イギリスの伝統を保ちながらも、常に新しい研究分野にチャレンジしている姿勢に感心した。今回のプログラムを通して視野が広がり、その経験を今後の勉強と研究生活に生かせるようにもっと頑張りたいと思っている。それに、この機会を与えてくださった先生方、五所さん、一緒に参加した仲間達に感謝の意を申し上げたい。
テーマ | 東大 | ケンブリッジ・オックスフォード |
---|---|---|
学制の違い | 1学期13週間 年2学期 | 1学期8週間 年3学期 |
学費 | 学費の値段は国籍に依らずに一定であり (約50万円)、大学だけに払えば良い。 | イギリスを含む EU の国の学生は年間約100万円 大学に払い、EU 以外の学生は年間約200万円を 大学に払う。この他に、自分が所属する college に別途学費を払わないといけない。 |
課程の年数 | 学士4年間+修士2年間+博士3年間 計9年間 | 学士3年間+修士1年間+博士4年間 計8年間 |
大学入試 | 面接は要らない。 | 一人一人面接が必要である。 |
共同研究 | プロジェクトは研究室内で終わる事が多い。 | 研究室を越えた共同研究は日本よりずっと多い。 |
学生の住居分布 | 学生は大学から遠いところに住んでいる人が多い。 | 学生は大体大学の周辺に住んでいる。 |
学生の通学手段 | 電車で通学する学生が多い。 | ほとんどの学生は自転車通学。 |
学生生活 | 学生がアルバイトをするのは普通である。 | 学生はほとんどアルバイトをしていない。 |
YAMAGUCHI,Yasuhiko
イギリスの研究・教育環境について
- Individual visitで訪れた研究室(Department of Earth Sciences)の研究設備が非常に充実していたことが、今回の渡航で最も強烈に印象に残った。訪れた研究室が、イギリスの地球科学界の中でもおそらくトップクラスということを差し引いても、日本や東大との格差は大きいと感じた。こうした有利な環境にいる研究者たち(イギリスだけでなくアメリカ等も含)と互角以上に張り合うためにはどうすれば良いのか、考えさせられた(今でも考えている)。
- 「学部3年+修士1年+博士3~4年」というイギリスの大学・大学院制度を、この渡航で初めて知り、驚いた。博士号取得までの期間が短いことに、色々と良し悪しはあると思うが、少なくとも、早くにPDとして給料取りになれることに関しては、正直うらやましいと思った。
- CambridgeやOxfordでも留学生への奨学金枠が少なく、日本で奨学金を得るなどしないと金銭的な負担が大きいと聞き、学位取得のためのイギリスへの留学は、(アメリカなどに比べて)ややハードルが高い印象を受けた。数ヶ月~1年程度の短期滞在や、PDとしてなら、魅力的な場だろうと感じた。
文化について
- 多くの人が17時ごろには仕事を切り上げて帰宅するという文化は、何となくは聞いたことはあったが、実際目にすると驚いた。Individual visitで会ったPDの方も、実験作業は多いときでも1日7時間と話していた。逆に、限られた時間だからこそ集中度が増すという話を聞き、なるほど見習う必要があると思った。
全般的に
- 渡航を通じて、自分がいる環境を客観的・相対的に見られるようになったことが、一番の収穫だと思う。夕食を共にした日本人留学生の方の「東大という場は、国際的に決して普通ではなく、かなり偏った環境にあることは自覚した方がいい」という言葉が、印象に残っている。自分も今後の人生において、少なくともどこかのステージ(博士課程? PD?)で海外に飛び出し、さらに様々な環境を経験する必要性を、改めて強く感じた。
参加者

At the Fitzwilliam Museum in Cambridge University
With staff members of international office

At the MSPS office in Oxford University
With staff members of international office
名前 | 専攻 | 学年 |
---|---|---|
Zhang, Xu | 物理学科 | 3 |
NGUYEN, Thanh Phuc | 物理学科 | 3 |
ENDO, Shimpei | 物理学科 | 3 |
SOMEYA, Masato | 物理学科 | 4 |
YAMAGUCHI, Yasuhiko | 地球惑星環境学科 | 4 |
KATOU, Hideaki | 生物化学科 | 3 |
TAGAWA, Takanobu | 生物化学科 | 3 |
JI, LiangJI, Liang | 生物化学科 | 3 |
YAMADA, Shintaro | 生物化学科 | 4 |
実施日程
Date | Activities | |
---|---|---|
3.4 | 12:00 | 成田発 |
15:30 | ロンドン(ヒースロー空港)着 | |
19:30 | ケンブリッジ着 | |
3.5 | 10:00-11:00 | オフィスにてミーティング |
11:00-12:30 | ケンブリッジツアー | |
14:00-14:50 | 生化学科見学 | |
15:00-16:00 | ゴードン研究所見学 | |
3.6 | 10:30-12:30 | 物理学科見学 |
14:00- | 個別訪問 | |
18:30-20:00 | 日本人留学生との会食 | |
3.7 | 10:30-12:30 | 地球惑星学科、セドウィック博物館見学 |
15:00- | 個別訪問 | |
3.8-9 | ケンブリッジよりオックスフォードへ | |
3.10 | 9:00-9:30 | オフィスにてミーティング |
10:30-12:40 | オックスフォードツアー | |
13:00-14:00 | Jesus Collegeにて昼食 | |
14:00-15:20 | 地球科学科見学 | |
15:30-16:50 | 物理学科見学 | |
3.11 | 9:00-9:30 | オフィスにてミーティング |
9:30-11:20 | 個別訪問 | |
11:30-12:30 | オフィスにてミーティング(Talk by Prof Tim Softley) | |
14:00-16:00 | 個別訪問 | |
3.12 | 8:00 | オックスフォード発 |
13:00 | ロンドン(ヒースロー空港)発 | |
10:00 | 成田着 |