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相対論的磁気リコネクションの地上実験に成功
ブラックホール周囲からのX線放射のメカニズム候補を実験室で検証
大阪大学
東京大学大学院理学系研究科
概要
大阪大学レーザー科学研究所の藤岡慎介教授、東京大学大学院理学系研究科King Fai Farley Law特任研究員(当時博士後期課程3年)、安部勇輝特任研究員、及び大阪大学大学院理学研究科と工学研究科所属の大学院生、早稲田大学、核融合科学研究所、露国モスクワ工学物理工学研究所国立原子力大学、露国レベデフ物理学研究所、仏国ボルドー大学、独国ドレスデン工科大学、米国カルフォルニア大学サンディエゴ校所属の研究者らで構成された国際共同研究チームは、パワーレーザーを使って超強磁場を作り、相対論的磁気リコネクションという前人未踏のプラズマ現象を実験室内で起こすことに成功しました。相対論的磁気リコネクションの結果、電子と陽子が高エネルギー化していることを観測し、一例として相対論的磁気リコネクションが、ブラックホールの周囲からの突発的に高エネルギーX線が放射される現象に関与している可能性を示唆しました。
世界最高レベルの性能を有するLFEXレーザーとマイクロコイルを使って、ネオジム磁石の2000倍に相当する2キロテスラ以上の超強磁場を生成する技術を活用し、本成果が得られました。これまで数値シミュレーションが相対論的磁気リコネクションを研究する唯一の手段でしたが、レーザーを使うことで天文学のモデルを高度に検証できることを示しました。この成果は天文学に留まらず、全く新しいレーザー加速器の発明への波及も期待できます。
図:マイクロコイルを照射した後、内部で生成されたそれぞれ違う向きの磁場(左)の分布と、磁気リコネクションが見られた平面で描かれた磁力線(右)を示しています。磁気リコネクションの最中(上)とその後(下)では、磁力線の形が大きく変わり、粒子のエネルギーに変換された磁場のエネルギーが大きく減少し、磁場の強さも低くなっています。実験での最大時では、2100テスラの磁場が実測されました。
本研究成果は、米国物理学会(American Physical Society)が刊行する物理学専門誌「フィジカル・レビュー E誌 (Physical Review E)」へ日本時間9月3日に掲載されました。
詳細については、大阪大学 のホームページをご覧ください。
―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―