2020/03/27

アルマ望遠鏡でブラックホールジェットと星間ガスの衝突を観測
銀河の巨大ガス流出のメカニズム解明へ新たな一歩

 

近畿大学

台湾中央研究院天文及天文物理研究所

国立天文台

東京大学大学院理学系研究科

 

概要

近畿大学理工学部(大阪府東大阪市)教授の井上開輝、東京大学大学院理学系研究科(東京都文京区)准教授の峰崎岳夫らの研究チームは、チリ共和国に設置された世界最高の性能を誇る巨大電波干渉計「アルマ望遠鏡」による観測で、地球から110億光年離れた銀河の中心にある超巨大ブラックホールから噴き出す超高速のガス流(ジェット)によって銀河中の星間ガス雲が激しく揺さぶられる様子を、これまでにない高解像度で撮影することに成功しました。銀河の進化の初期段階においても、ジェットが銀河内のガスに大きな影響を与えていることが示されたことは、銀河の進化の過程を解明するための重要な一歩といえます。

ほとんどの銀河の中心には、巨大ブラックホールが存在しています。巨大ブラックホールのなかには、その周囲の物質が降り積もってできた円盤から強い光が放射されるもの(クエーサー)や、吸引した物質の⼀部を細く絞られた超高速のガス流(ジェット)として噴出しているものがあります。ジェットは銀河中の星間ガス雲と衝突し、星の材料となる大量のガスを押し出すことで星の形成を抑制するなど、銀河の進化に大きな影響を与えると考えられています。しかし、ガス流出を引き起こす原因がジェットなのか、それともブラックホールを取り巻く円盤から放たれる強い光なのか、まだわかっていません。

そこで研究チームは、アルマ望遠鏡を用いて地球から110億光年の距離にあるクエーサMGJ0414+0534 をアルマ望遠鏡で観測しました。このクエーサーと地球との間には別の銀河が存在し、その重力がレンズのような役割を果たすことで、このクエーサーは拡大されて見えます。アルマ望遠鏡の性能に加え重⼒レンズによる拡大効果により、約0.007 秒角という超高解像度が達成されました。この結果、このクエーサーではジェットに沿って星間ガス雲が激しく運動していることが明らかになり、110億光年という遠⽅のクエーサーにおけるジェットと星間ガス雲の衝突の現場を初めて画像としてとらえることができました。

本件に関する論文は、令和2年(2020年)3⽉27⽇付で米国の学術雑誌「The Astrophysical Journal Letters」に掲載されました。

図1:アルマ望遠鏡観測成果をもとにして描いた、クエーサー MG J0414+0534 の想像図。銀河の中心にある超巨大ブラックホールから、強力なジェットが最近吹き出し、周囲の星間ガスと衝突しているようすを表現しています。Credit: 近畿大学

 

詳細については、近畿大学のホームページ、国立天文台のホームページをご覧ください。

―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―

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