2019/08/30

相図の裏に隠されていた新しい鉄水素化物を発見

 

 

概要

東京大学大学院理学系研究科の青木勝敏客員共同研究員と量子科学技術研究開発機構の町田晃彦、齋藤寛之上席研究員らは、日本原子力研究開発機構の服部高典主任研究員、佐野亜沙美副主任研究員、総合科学研究機構の舟越賢一主任研究員、東北大学金属材料研究所の佐藤豊人助教、東北大学材料科学高等研究所折茂慎一副所長との共同で、大強度陽子加速器施設J-PARCの物質・生命科学実験施設に設置されている超高圧中性子回折装置PLANETならびに大型放射光施設SPring-8の量子科学技術研究開発機構専用ビームラインBL14B1に設置されているキュービックアンビル型高温高圧発生装置を用いて、六方晶の鉄格子構造を持つ鉄水素化物が高温高圧下で形成されることを発見しました。

本研究では鉄と反応させる水素量を制御することにより、六方晶の結晶構造を持つ鉄水素化物が高温高圧下で形成されることを発見し、鉄中の水素原子の占有位置と溶解度の温度変化を観測しました。鉄水素化物は物質科学および地球科学の主要な研究対象として長年にわたって研究されていましたが、六方晶鉄水素化物の存在およびその詳細な結晶構造と水素溶解特性が報告されたのは初めてです。

鉄は地球を構成する主要な金属であり、地球の進化過程、さらには現地球内部での水素循環過程においては鉄水素化物が重要な役割を担っている可能性があります。今後、地球内部に匹敵する温度圧力領域での結晶構造と水素溶解特性を調べることにより、六方晶鉄水素化物の役割が解明されるものと期待されます。

図1:六方晶鉄水素化物の結晶構造
鉄原子はグレーの球、水素原子はライトブルーの球で描かれている。鉄中に溶解した水素原子は6個の鉄原子で構成された八面体(ブルー太線)の中心に位置する。

 

本成果は、2019年8月23日「 Scientific Reports 」のオンライン版に掲載されました。

 

詳細については、 日本原子力研究開発機構J-PARCセンター のホームページをご覧ください。

―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―

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