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原野幸治特任准教授が平成31年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞を受賞

原野幸治特任准教授
総括プロジェクト機構・理学系研究科化学専攻の原野幸治特任准教授が、平成31年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞を受賞されました。授賞対象は「電子顕微鏡による分子の動的過程解明と機能開発研究」で、分子および分子集合体を一分子レベルで観察する技術の開発とその応用展開についての業績が評価されました。
分子を扱う科学者にとって、「分子が反応する様子」「分子が集まって結晶となる様子」などの動的な過程を、分子ひとつひとつをみて分析し研究することは長年の夢であり、得られた知見に基づいて学術・社会に役立つ物質創製の学理を確立することは現代科学の一大挑戦です。原野博士は、有機分子およびその集合体をナノカーボン材料に担持することで電子線に対するダメージを抑制し、原子分解能の動画としてその動きを捉えられることに基づき、得られた知見を元に精密に構造が制御された様々な分子集合体の開発に成功、医療やデバイス応用に展開しました。最近では、数十の分子の反応を逐次的に原子分解能顕微鏡で追跡して「反応はランダムにおこるが総和を取ると一次反応に従う」ことを明らかにし、単分子反応が統計論的反応速度論に従って進むことを実証するとともに,電子顕微鏡観察下で起こる未知の化学反応機構を解明することに成功しました。
2017年理学系研究科プレスリリース
https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/info/5616/
これらの研究成果は、有機物、無機物、生体分子など多岐にわたる化学研究対象において超微量での構造解析を可能とするだけでなく、反応や構造変化といった動的な化学プロセスを原子分解能の動画としてとらえて研究する革新的手法として、様々な科学分野へ応用されると期待されています。
原野博士の受賞を心からお祝いするとともに、今後さらに新しい科学分野を切り拓き,ますますご活躍されることを期待します。
平成31年度文部科学大臣表彰
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/31/04/1415044.htm
(文責 総括プロジェクト機構・化学専攻 特任教授・名誉教授 中村栄一)
―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―