2018/12/26

数理科学研究科の今井直毅准教授が第11回井上リサーチアウォードを受賞

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今井直毅准教授


数理科学研究科の今井直毅准教授が局所ラングランズ対応の幾何学的実現の研究で第11回井上リサーチアウォードを受賞されました。

数論幾何学は多項式で定義される図形を使って,整数の性質を調べる数学の分野です。ラングランズ対応とは,数論でもっとも重要な群である有理数体の絶対ガロワ群のガロワ表現と,ある種の行列のなす群の無限次元表現の間の対応です。ラングランズ対応は未解決の問題ですが,近年の発展は著しく,方程式Xn+Yn=Zn の解についてのフェルマーの最終定理もラングランズ対応の部分的な解決の帰結として証明されています。

局所とは,整数の問題を素数ごとに考えることを指します。数論幾何学では,整数を曲線のような1次元の幾何的対象上の関数と考え,その1つ1つの点は2,3,5,7,…という素数に対応すると考えます。素数pごとに曲線の各点でのテイラー展開にあたるp進体がさだまり,p進体の絶対ガロワ群は有理数体の絶対ガロワ群の部分群を定めます。この群について局所ラングランズ対応が定式化されます。局所ラングランズ対応は既に多くの場合に証明されていますが,これを幾何的に理解することがこれからの課題です。これについてファルグは局所ラングランズ対応を幾何的に実現する予想を定式化しました。今回の受賞は,これを2次元表現についてガイシン氏と共同で解決した今井さんの業績が高く評価されたものです。ファルグの予想の解決にむけての突破口を開くものとして画期的な業績です。

 第11回井上リサーチアウォード
 http://www.inoue-zaidan.or.jp/b-01.html?eid=00036


(文責:数理科学研究科 教授 斎藤毅)

 

 

―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―

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