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結晶質岩(花崗岩)内の割れ目評価のための新知見
~マグマ溜りから深成岩が形成される過程の熱進化モデルの構築~
山形大学
日本原子力研究開発機構
(株)京都フィッション・トラック
東京大学大学院理学系研究科
熊本大学
概要
山形大学学術研究院の湯口貴史講師(地球科学)、五十公野裕也博士、日本原子力研究開発機構の笹尾英嗣博士、末岡茂博士、石橋正祐紀博士、(株)京都フィッション・トラックの檀原徹博士、岩野英樹博士、東京大学大学院理学系研究科の平田岳史教授、熊本大学大学院先端科学研究部(理学系)の西山忠男教授らの研究グループは、中部日本の土岐花崗岩を研究対象とし、マグマ溜りから結晶質岩(花崗岩)へと至る熱進化モデルを作成し、土岐花崗岩内の領域ごとの温度時間履歴を復元しました。マグマ溜りから結晶質岩へと至る冷却履歴を扱った既存研究では、1つの花崗岩に対して1つの温度時間履歴を解明するのが一般的でしたが、今回の研究では、1つの花崗岩の複数の領域について各々の温度時間履歴を復元しました。このことにより、岩体内の位置に応じた温度時間履歴の相違を明かにしました。
さらに本研究では、得られた領域ごとの温度時間履歴と割れ目の分布の間に関連があることを見出しました。これは領域ごとの温度時間履歴が結晶質岩内の割れ目分布を評価する際の新たな指標となることを示しています(図1)。
図. 結晶質岩(花崗岩)内の割れ目における地下水・物質移動の概念図(左)および、温度時間履歴と形成される割れ目頻度との関係(右)
結晶質岩中に発達した割れ目は地下水や物質の移動経路となることから、本研究成果は、深部地質領域(地下深部に分布する岩石領域)を活用した事業(天然ガス・石油の地下貯蔵など)の安全性や研究開発(高レベル放射性廃棄物の地層処分など)の妥当性を評価する上で重要な知見と考えられ、国際学術雑誌の「Journal of Asian Earth Sciences」に掲載されました。
詳細については、山形大学 のホームページをご覧ください。
―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―