2018/08/23

髙木優さんが平成30年度時実利彦記念神経科学優秀博士研究賞を受賞


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髙木優さん


物理学専攻博士課程3年の髙木優さんが「平成30年度時実利彦記念神経科学優秀博士研究賞」を受賞しました。日本における神経科学・ 脳科学分野の更なる発展に寄与することが期待される大学院博士課程学生に与えられる賞です。

受賞の対象となったテーマは「相同なコマンドニューロンの多様化による適応的な逃避行動の実現」です。 高木さんはショウジョウバエ幼虫を用い逃避行動の制御に関わる神経回路機構を追究しました。通常ショウジョウバエの幼虫は平面を前進運動により移動しますが 、頭部に刺激を受けると後退運動により一過的に逃避します。この逃避過程に関与する介在ニューロンを同定し「Wave」と名づけました。各神経分節に1 対ずつ存在するWaveは、驚くべきことに神経分節により全く異なる逃避行動を惹起することがわかりました。更にWaveは分節により軸索・ 樹状突起の伸長のパターンを大きく変化させており、体の各々の部位への触覚の刺激をそれぞれに適した逃避行動を出力 する神経回路へと繋げる役割を担うことが示唆されました。Waveのように、その活性化が特定の行動の惹起に十分なニューロンをコマンドニューロンとよびます。 この研究はオプトジェネティクスやコネクトミクスなどの最先端の技術を駆使して、コマンドニューロンの結合様式の多様化が行動選択の多様性を生む ための基本機構である可能性を初めて提示した点において高い評価を受けました。

時実利彦記念神経科学優秀博士研究賞
http://www.jnss.org/tokizane_kenkyusyou/


(文責:物理学専攻 教授 能瀬聡直)

 

 

―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―

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