2018/07/13

史上初、宇宙ニュートリノとγ線によるニュートリノ放射源天体の同定に成功

 

千葉大学

広島大学

東京大学

国立天文台

概要

南極点アムンゼン・スコット基地で行われているニュートリノ観測実験IceCube(アイスキューブ)により、昨年9月に宇宙ニュートリノ事象「IceCube-170922A」が検出され、その到来情報を元に電磁波での追観測を行いました。その結果、巨大ブラックホールを持ち非常に強いγ線を放つブレーザー天体TXS 0506+056の活動性の活発化を確認し、高エネルギーニュートリノ放射天体を初めてつきとめました。

本研究は、「Science」 2018年7月13日号に掲載されました。

 

 

図:2017年9月23日(日本時間)に検出されたニュートリノ事象IceCube-170922A。
水平にIceCube検出容積内を突き抜けるトラック型で、到来方向が分かりやすいなど好条件で検出されました。

 

宇宙ニュートリノ事象IceCube-170922Aの検出の報を受け、東京大学大学院理学系研究科の諸隈智貴助教は、広島大学、京都大学、スタンフォード大学、国立天文台、愛媛大学、東京工業大学の研究者らと協力して、日本の持つ光学赤外線望遠鏡群を用いて、ニュートリノの到来方向に存在する複数のブレーザー天体の観測をすぐさま開始しました。

広島大学口径1.5mかなた望遠鏡の観測データにより、TXS 0506+056の明るさの変動が確認され、東京大学でも大学院理学系研究科附属天文学教育研究センター木曽観測所の口径1.05m木曽シュミット望遠鏡・広視野カメラKiso Wide Field Camera (KWFC)を用いて追観測を継続的に行いました。

その結果、過去と比較すると数倍の増光を示し、この天体が活動期にあり、ニュートリノ放射との関連を示唆する結果を得ました。

IceCube実験により検出された高エネルギーニュートリノの放射源が解明されたのは初めてのことです。今後、精力的な電磁波追観測により、ニュートリノ放射源の解明が進んでいくことが期待されます。

また、東京大学木曽観測所では、現在、CMOSセンサを用いたさらに広い視野を誇る超広視野カメラTomo-e Gozenを開発中で、2018年度からの観測運用開始を予定しています。到来方向の不定性の大きなニュートリノに対して、Tomo-e Gozenはその全体を一度に観測することが可能となり、その方向に存在する明るさの変化する天体を網羅的に調べることで、対応天体の同定するための観測に、強力な威力を発揮すると期待されます。近い将来、Tomo-e Gozenで明るさの変化を検出した「ニュートリノ放射源の候補天体」に対して、光・赤外線天文学大学間連携の望遠鏡などによるさらなる追観測を実施し、その正体を明らかにしていきます。

 

詳細については、千葉大学のホームページ をご覧ください。また、光学赤外線観測については、広島大学 および、広島大学宇宙科学研究センター のホームページをご覧ください。

本研究科附属天文学教育研究センター木曽観測所 のホームページは、こちらから ご覧いただけます。

―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―

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