2018/06/26

ブラックホールに吸い込まれる直前100 kmでの物質の幾何構造が判明

 -偏光X線を使った世界初の観測に成功

 

広島大学

東京大学大学院理学系研究科

名古屋大学

早稲田大学

 

概要

広島大学大学院理学研究科の高橋弘充助教、宇宙科学センターの水野恒史准教授、東京大学大学院理学系研究科 釡江常好名誉教授、名古屋大学宇宙地球環境研究所 田島宏康教授、早稲田大学理工学術院先進理工学研究科 片岡淳教授ら、日本とスウェーデンのPoGO+(ポゴプラス)国際共同研究グループは、ブラックホール連星系である「はくちょう座X-1」からの硬X線放射の偏光観測を実施しました。

この際、これまで技術的に観測が困難とされていたX線やガンマ線の偏光観測を直径100mにも膨らむ気球に搭載して実現し、硬X線の帯域において世界で初めて信頼性の高い偏光情報を得ることに成功しました。この結果、「はくちょう座X-1」において、恒星からブラックホールに吸い込まれている物質は相対論的な効果を強く受けておらず、ブラックホールまで約100 kmの位置から内側では広がった幾何構造をしていることが明らかになりました。

従来の測定方法では、物質の幾何学的な構造がブラックホールの近傍では広がっているのか、コンパクトな状態で存在しているのかの判断が困難でしたが、今回の偏光観測という新しい手段によって、前者であることが強く支持されることになります。

今後は、改良した気球実験や人工衛星のX線偏光の観測結果、理論研究から、様々な質量のブラックホール(太陽質量の数倍から100億倍もの超巨大サイズ)において、ブラックホールに吸い込まれつつある物質が重力の影響をどのように受けているが明らかにされ、中心に存在するブラックホールの特性(自転速度)やブラックホールが及ぼす相対論的な効果(時空のゆがみ)などの理解が進むと期待されます。

本研究は、日本学術振興会・科学研究補助金科研費JP23740193、JP25302003などサポートを受けて行われ、また米国SLAC国立加速器研究所、東京工業大学、宇宙科学研究所(JAXA)からも多大な支援をいただきました。

本研究成果は、ロンドン時間の2018年6月25日(月)16時(日本時間:2018年6月26日0時)に英国科学誌「Nature Astronomy」(オンライン版)で公開されました。

 

図:PoGO+による硬X線の偏光観測の結果
横軸:天体信号が観測された角度、縦軸:天体信号を検出した数。どの角度でも信号がほぼ均一(赤線の振幅がほぼない)に検出されていることから、「はくちょう座X-1」からの硬X線放射は偏光度が8.6%以下と微弱であることが測定されました。

 

 

詳細については、広島大学 のホームページをご覧ください。
 

―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―

  • このエントリーをはてなブックマークに追加