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生物科学専攻の塩見美喜子教授が2018 EMBO associate memberに就任

塩見美喜子教授
この度、生物科学専攻の塩見美喜子教授が2018 EMBO associate memberに就任されます。EMBO (associate) memberメンバーには、世界的に顕著な業績を上げ、研究者コミュニティーにも多大な貢献をされている研究者が選出されます。associate member はEU以外の国の研究機関所属の研究者が対象です。同僚の生物学者として誇らしい限りです。本当におめでとうございます。
塩見先生は、遺伝子の発現調節で重要な働きを担う「小分子RNA」を研究されてきました。今でこそ、生物学を学んだ人であるならば誰でもが知っている小分子RNAですが、塩見先生が研究を始められた20年ほど前には、まだ知る人ぞ知る、というくらいの分野でした。塩見先生はいち早くその重要性に着目し、新しい発見を重ねてこの分野をリードしてきました。特に動物の生殖細胞で産生される小分子RNA“piRNA”の研究は圧巻です。動物細胞のゲノムにはトランスポゾンなどの「よそ者」遺伝子が多量に存在します。それらが発現すると大切な卵や精子のゲノムが壊れてしまいます。piRNAは「よそ者」遺伝子の暴走を抑える働きがあります。塩見先生はpiRNAの一連の生成過程を解明しました。例えばその1つ“ピンポン経路”では、アンチセンスとセンスRNAがピンポン玉のように交互に入れ替わることでpiRNAを次々に生成していきます。このユニークなピンポンモデルをはじめとして、塩見先生がこれまでに明らかにされてきた「生物学の面白さに満ちた発見」は、多くの学生の心を掴んで離しません。
またまだ重要で興味深い発見がたくさん期待される分野です。今後の益々のご活躍をお祈りいたします。
EMBO
http://www.embo.org/news/press-releases/2018/62-life-scientists-elected-as-embo-members
(文責:定量生物科学研究所 教授 小林武彦)
―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―