2018/04/16

濡木理教授、石谷隆一郎准教授、西増弘志助教が平成30年度文部科学大臣表彰科学技術賞を受賞

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濡木理教授
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石谷隆一郎准教授
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西増弘志助教


4月17日に、濡木理教授、石谷隆一郎准教授、西増弘志助教が、「ゲノム編集ツールCRISPR-Casの研究」により、文部科学大臣科学技術賞を受賞された。心よりお祝い申し上げたい。

CRISPR-Casは、細菌の免疫システムである。CRISPRは、clustered regularly interspaced short palindromic repeatsの略で、細菌のゲノム中、30塩基対前後のリピート配列がスペーサーを挟んで規則正しく繰り返している部分をさす。CasはCRISPR-associated proteins(CRISPR関連タンパク質)の略で、これらのタンパク質をコードする遺伝子群はCRISPR領域に隣接する。CRISPRのスペーサー部分は、バクテリオファージなど細菌の外敵(外来性)DNAの断片に由来する。CRISPRから転写された長鎖RNAは短鎖RNAにプロセスされた後、Casタンパク質と結合し複合体を形成する。この複合体は短鎖RNAのスペーサー部分と相補的な配列をもつ外敵のDNAを認識し切断する。こうして細菌は外敵の侵略から自身を守る。2013年、F. Zhang、E. M. Charpentier、J. A. Doudnaらは、このシステムを利用したゲノム編集技術(DNAの任意の位置における切断・削除・遺伝子挿入などを行う技術)を発表し、ノーベル賞の呼び声も高い。

濡木教授が主宰する構造生命科学研究室では、西増助教が中心となって、Casタンパク質・短鎖RNA・標的DNA複合体の構造研究に取り組んできた。2014年には、世界にさきがけて複合体結晶のX線構造解析に成功。標的DNAの認識と切断の仕組みを明らかにするとともに、より高効率にゲノム編集を行うタンパク質の設計にも道を開いた。2017年にはDNAの認識機構のさらに詳細な解析結果や包括的総説を発表。タンパク質エンジニアリングによるゲノム編集の高効率化も達成するなど、快進撃が続いている。この技術の需要は国内外で非常に大きく、濡木研の研究には大きな期待が寄せられている。

平成30年度文部科学大臣表彰
 http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/30/04/1403097.htm


(文責:生物科学専攻 生物学科 教授 寺島一郎)

 

 

―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―

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