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2017年ノーベル物理学賞 重力波初検出:東京大学の貢献

2017年のノーベル物理学賞は、「LIGO(ライゴ)検出器とその重力波観測に決定的な貢献を行なった」マサチューセッツ工科大のレイナー・ワイス(Rainer Weiss)名誉教授、カリフォルニア工科大のバリー・バリッシュ(Barry Clark Barish)名誉教授とキップ・ソーン(Kip Stephen Thorne)名誉教授の3名に授与されました。LIGOは1000人を超える巨大な共同研究ですが、そのあらゆる箇所に最新の科学・技術の成果が詰め込まれています。重力波の検出とはそれなしには実現不可能な、現代物理学における挑戦的課題だったのです。
検出器そのものの開発はもちろんですが、その膨大な出力の中に埋もれた微弱な重力波信号を検出するアルゴリズムとソフトウェアの開発もまた不可欠な要素です。本研究科附属ビッグバン宇宙国際研究センターのキップ・カンノン(Kipp Cannon)准教授は、そのデータ処理において主導的な役割を果たし、LIGOの重力波直接検出成功、そしてノーベル物理学賞受賞に大きな寄与をしています。同センターを代表して、心からお祝いさせていただきます。
ビッグバン宇宙国際研究センターは将来の重力波天文学の幕開けを見据えて、2010年頃から横山順一教授を中心として重力波データ解析部門の創設を検討し、2015年に定員再分配ポストを頂けることになりました。そこで、国際公募を行い採用したのがカンノン准教授です。2015年7月21日に人事委員会全員一致で選出、2016年2月1日に着任して頂けました。実は、LIGOが初検出に成功したブラックホール連星からの重力波が地球に届いたのは2015年9月14日、世界中を興奮させたその結果報告は2016年2月12日でしたから、カンノン准教授を東京大学に採用できたのはまさにその歴史的な発見の最中だったことになります。
今回のノーベル物理学賞は、重力波天文学の本格的な幕開けを告げるものです。宇宙線研究所が主導しているKAGRA実験、そして可視光、X線、ガンマ線等多波長の望遠鏡との共同観測など、今後の天文学を大きく変えるだけのインパクトを持つ発見が相次ぐことでしょう。カンノン准教授、そして若手研究者や彼の大学院生が、この歴史的な時代にあってさらに画期的な多くの業績を挙げられることを期待しています。
ノーベル物理学賞の発表後に開催された記者会見の様子
(文責:ビッグバン宇宙国際研究センター長 須藤靖)
―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―