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トポロジカル絶縁体を強磁性にする新たな方法を発見-量子異常ホール効果を利用したデバイス開発へ進展-
東京工業大学
東京大学大学院理学系研究科
東京大学物性研究所
分子科学研究所
広島大学
概要
東京工業大学 理学院 物理学系の平原徹准教授、東京大学 物性研究所の白澤徹郎助教(現 産業技術総合研究所主任研究員)、同大大学院理学系研究科の長谷川修司教授、分子科学研究所の田中清尚准教授、木村真一准教授(現 大阪大学教授)、横山利彦教授、広島大学 放射光科学研究センターの奥田太一教授、ロシア・スペインの理論グループらは共同で、トポロジカル絶縁体の表面近傍に規則的な強磁性層を埋め込むことに成功し、さらに室温であっても強磁性状態であることを実証した。
トポロジカル絶縁体とは、物質内部は絶縁体で電流を通さないが、表面には金属状態が存在し、電流を流すことのできる新しい絶縁体である。このトポロジカル絶縁体にさらに磁石の性質である強磁性を導入することで、輸送特性として量子異常ホール効果が実現する。しかしこれまでのやり方では、量子異常ホール効果が実際に観測される温度が、最高でも-271℃と低い温度にとどまっていた。
今回、トポロジカル絶縁体であるBi2Se3薄膜上にさらにSeと磁性元素Mnを蒸着したところ、表面近傍にMnとSeが潜り込み、MnBi2Se4/Bi2Se3という構造が形成された。そして電気的および磁化特性測定によりこの物質が室温でも強磁性状態であることが明らかになった。この成果によって量子異常ホール効果がこれまでより高温で実現され、デバイス応用につながることが期待できる。
本成果は、平成 29 年 5月26 日に、米国化学会誌「Nano Letters (ナノレターズ)」にJust Acceptedでオンライン掲載された。
図:これまで作製・研究されてきた磁性トポロジカル絶縁体(a)および本研究で発見された磁性トポロジカル絶縁体ヘテロ構造。
―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―