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歯の再生能の改変がフグのクチバシを進化させた
英シェフィールド大学
ロンドン自然史博物館
東京大学大学院理学系研究科附属臨海実験所
概要
英シェフィールド大学、ロンドン自然史博物館、東京大学大学院理学系研究科附属臨海実験所らを中心とする研究グループは、フグの歯をモデルにして、ヒトを含む脊椎動物の歯の多様性について研究しました。
フグ科魚類は多くの魚に見られるようなギザギザの歯を持ちませんが、下顎と上顎2対ずつ、計4枚からなるクチバシのような板状の歯を形成します(図)。

淡水フグTetraodon lineatusの歯。左写真は成魚個体、右写真は頭部標本画像
このクチバシ構造がどういった機構を経て形成するのかについては長年不明でしたが、グループらはフグの稚魚の歯の発生を調べ、顎正中部に限定された幹細胞による歯の再生の繰り返しがクチバシ形成の鍵であることを明らかにしました。一方で、このようなフグの特殊な歯を形作るのに必要な遺伝子群は、他の脊椎動物の歯の形成に必要なものとほとんど共通であることも分かりました。
これら知見は、歯を作るための基本的な機構は脊椎動物の間で共有しているものの、その多様化には歯の再性能の改変が重要であったことを示唆しており、ヒトにおいてなぜ永続的な歯の再性能が失われたのかについて理解することにもつながるのかもしれません。
この研究成果は米科学雑誌「Proceedings of the National Academy of Sciences」に2017年5月15日付で掲載されました。
<発表雑誌情報>
雑誌名:Proceedings of the National Academy of Sciences
論文タイトル:Spatially restricted dental regeneration drives pufferfish beak development
著者: Alexandre P. Thiery (英シェフィールド大学)、庄野孝範(英シェフィールド大学)、黒川大輔(東京大学大学院理学系研究科附属臨海実験所)、Ralf Britz(ロンドン自然史博物館)、 Zerina Johansone(ロンドン自然史博物館)、Gareth J. Fraser(英シェフィールド大学、グループリーダー)
論文URL:http://www.pnas.org/content/early/2017/05/11/1702909114.full
英文記事リンク:
The University of Sheffield
https://www.sheffield.ac.uk/news/nr/pufferfish-beak-genes-humans-teeth-study-1.702292
Natural History Museum
http://www.nhm.ac.uk/our-science/science-news/2017/may/pufferfish-beak-originates-from-stem-cell-tweak.html
本研究に関する問い合わせ先:
東京大学理学系研究科 附属臨海実験所
助教 黒川大輔
E-Mail:kuro[@]mmbs.s.u-tokyo.ac.jp ※[@]を半角@に変換ください。
TEL:046-827-6697
―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―