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大越慎一教授が第28回「向井賞」を受賞

大越慎一教授
化学専攻の大越慎一教授が第28回 向井賞を受賞されました。向井賞は、基礎研究または応用研究の分野において、先駆的かつ独創的であり、科学技術の振興に貢献することが期待される研究を行った研究者を対象とし、毎年一名に贈呈される賞です。
大越教授は、固体相転移に注目し、自身の斬新な設計概念に基づき、先端機能物質の創出に関する研究を推進してきました。数百種類の磁性金属錯体を合成し、湿度応答型磁性体、光誘起スピンクロスオーバー強磁性体、キラル光磁石の磁化誘起第二高調波発生などの様々な新現象・新物質を世界に先駆けて開発しています。一方、鉄原子などのありふれた元素からなるサステイナブルな機能性酸化物材料として、イプシロン型-酸化鉄(ε-Fe2O3)を開発し、最高保磁力のフェライト磁石、世界最小フェライト磁石、最高ミリ波吸収周波数を実現し、次世代高密度磁気記録材料やミリ波帯域電磁波吸収体として注目を浴びています。また、新種の酸化チタンであるラムダ型-五酸化三チタン(λ-Ti3O5)を発見し、金属酸化物としては初めて室温で光誘起相転移を実現すると共に、長期的に熱エネルギーを保存できる“蓄熱セラミックス”という新概念を提唱し、社会に大きなインパクトを与えています。
これらの大越教授の革新的な物質開発は、物質化学分野に新しい視座を与えるものであり、世界的にもたいへん高い学術的評価を得ています。また、特許出願は国内・海外あわせて170件にものぼり、産業界からもたいへん注目を集めています。このような大越慎一教授の傑出した研究成果に敬意を表すと共に、向井賞受賞に対して、心よりお祝い申し上げます。
第28回 向井賞
http://www.tok-foundation.or.jp/activities/mukai.html
(文責:化学専攻 准教授 山野井慶徳)
―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―