2016/10/11

雲・降水に伴うエアロゾルの除去過程を支配するメカニズムの観測的解明

 

概要

大気エアロゾルのうち,粒径0.05–1マイクロメートル程度の粒子(累積モードエアロゾル)は数濃度・質量濃度が高く、太陽光の散乱・吸収を通じて気候に最も大きな影響を及ぼします。これらのエアロゾルは主に湿潤対流に伴う降水によって除去されることが知られていましたが,除去の効率を決めている物理メカニズムについては,それに関するデータを得る方法が無く,観測に基づいた理解が得られていませんでした。東京大学大学院理学系研究科の大畑祥特任研究員、茂木信宏助教、森樹大大学院生、小池真准教授、および国立極地研究所の近藤豊特任教授らは、大気エアロゾルの構成成分の一つであるブラックカーボン(BC)を雲・降水過程における粒子トレーサーとして使う方法論を確立し、それを用いた観測から、エアロゾルに水蒸気が凝結して雲粒になる段階(雲粒活性化)が、降水に伴う累積モードエアロゾルの除去の効率を決める物理メカニズムであることを解明しました。さらに、雲粒活性化の決定要因の一つである最大過飽和度の推定を可能にしました。これらの結果は、大気エアロゾルの存在量ならびに気候影響を予測する数値モデルにおいて雲粒活性化の物理プロセスを陽的に計算することの重要性を示すものであり、今後の大気物質循環と気候のモデリングの検証と改良のための重要な指針となることが期待されます。

図:エアロゾルの降水除去過程と観測手法の模式図。湿潤対流により上昇する空気塊に含まれるエアロゾルのうち、ある数割合のエアロゾルが雲粒活性化あるいは水滴との衝突により水滴内部に取り込まれ、降水として大気から除去される。個々のBCの質量等価粒径(DBC)は降水除去過程で不変である。

 

 

発表雑誌

雑誌名 Scientific Reports(オンライン版10月5日)
論文タイトル A key process controlling the wet removal of aerosols: new observational evidence
著者 S. Ohata, N. Moteki, T. Mori, M. Koike, Y. Kondo
DOI番号 10.1038/srep34113
論文URL http://www.nature.com/articles/srep34113

 

研究グループ

大畑 祥 (地球惑星科学専攻 特任研究員)
茂木 信宏 (地球惑星科学専攻 助教)
森 樹大 (地球惑星科学専攻 大学院生)
小池 真(地球惑星科学専攻 准教授)
近藤 豊 (国立極地研究所 特任教授)

 

資料、データなど、お問い合わせ先

地球惑星科学専攻 助教 茂木信宏
メール:moteki[@]eps.s.u-tokyo.ac.jp
電話: 03-5841-4550(研究室)

 

研究成果をまとめましたPDFは、こちらからダウンロードいただけます。

―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―

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