特集コンテンツ
マンガン系合金ナノ薄膜を用いたMRAM記憶素子の開発に成功
東北大学原子分子材料科学高等研究機構
東京大学大学院理学系研究科
京都工芸繊維大学
東北大学大学院工学研究科
科学技術振興機構
内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)
概要
内閣府総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)佐橋 政司プログラム・マネージャーの研究開発プログラムの一環として、東北大学原子分子材料科学高等研究機構(WPI-AIMR)の鈴木和也助手と水上成美教授は、垂直磁化マンガン系合金ナノ薄膜を用いたトンネル磁気抵抗(TMR)素子の開発に成功しました。これは次世代の不揮発性磁気抵抗メモリ(MRAM)注2)開発に貢献する成果です。本研究は、WPI-AIMRのレザランジバル助手、杉原敦助手(現産業技術総合研究所研究員)、ならびに岡林潤准教授(東京大学大学院理学系研究科)、三浦良雄准教授(京都工芸繊維大学電気電子工学系)、土浦宏紀准教授(東北大学大学院工学研究科)との共同研究です。
TMR素子を記憶素子とするMRAMは不揮発性及び高速性能を有するメモリで、記憶容量の小さいMRAMはすでにサンプル出荷が始まっており、東芝など大手メモリメーカーによりメインメモリやキャッシュメモリ用MRAMの製品化が進められています。一方、さらなる高性能MRAM開発のため、基盤となる磁性材料の研究も強く求められています。マンガン系合金は高い垂直磁気異方性と低い磁気摩擦を有することから大容量MRAMへの応用が期待され、10nmクラスの微細化を実現するために、ナノ薄膜を有するTMR素子の開発が望まれています。本研究グループは、規則的に原子が配列したマンガン系合金ナノ薄膜を有するTMR素子を作製する技術を開発するとともに、放射光を用いた評価と計算科学の手法でその基礎的特性を調べることに成功しました。これらは、次世代の大容量MRAM開発に貢献する成果です。
研究の内容は7月26日(英国時間)に、「Scientific Reports」(サイエンティフィックリポーツ)誌に掲載されました。
図:開発したTMR素子の断面を高分解能の透過型電子顕微鏡で観察した写真。写真中の丸は原子に対応しており、右図のようにマンガンとガリウムの原子が各々約10原子層程度、周期的に並んでいます。この層においてはマンガン原子が強い磁気を発しています。
―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―