2016/06/14

化学専攻博士課程の岩根由彦さんが、「第30回 独創性を拓く 先端技術大賞 文部科学大臣賞」を受賞


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岩根由彦さん


化学専攻博士課程3年の岩根由彦さんが、「第30回 独創性を拓く 先端技術大賞」の文部科学大臣賞(最優秀賞)を受賞しました。受賞論文「コドンボックス人工分割法の開発〜リボソーム翻訳における基質アミノ酸の種類拡大〜」は、岩根さんが中心に遂行した研究です。生物はmRNAの塩基配列に則してアミノ酸を重合させ、ポリペプチド(タンパク質やペプチド)を合成します。この反応はmRNAをポリペプチドへと変換する翻訳反応と呼ばれ、mRNA上のコドンとアミノ酸を対応付ける遺伝暗号は生物に共通して保存されています。61種類のコドンが20種類のタンパク質性アミノ酸を指定する天然の遺伝暗号は冗長なものであり、例えばGUU/GUC/GUA/GUGの4つのコドン(まとめてGUNコドンボックスと呼ばれます)は同一のアミノ酸「バリン」へと翻訳されます。岩根さんは、試験管内翻訳反応系においてコドンボックスを人工的に分割することで空きコドンを創出し、もとの20種類のタンパク質性アミノ酸を保持したまま、複数の非タンパク質性アミノ酸を遺伝暗号として指定することに成功しました。「コドンボックス人工分割」と名付けた本手法により、20種類よりも多く(原理上31種類まで)のアミノ酸を遺伝暗号表に新規に指定でき、それらを含む人工ポリペプチドを翻訳合成することが可能となりました。本研究の成果は、ポリペプチド合成反応の応用研究(例えば特殊ペプチド創薬)に貢献する新技術であるとして高く評価されました。また、本研究成果は2016年Nature Chemistry4月号に論文として発表されています。

先端技術大賞
http://www.fbi-award.jp/sentan/jusyou/


(文責:化学専攻 教授 菅裕明)

 

 

―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―

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