2015/11/16

櫻井博儀氏の仁科記念賞受賞によせて

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櫻井博儀教授

物理学専攻教授の櫻井博儀氏が,2015年度の仁科記念賞を受賞されました。業績は「中性子過剰核における魔法数の異常性の発見」で,理化学研究所特別顧問の本林徹氏との共同受賞です。

原子の周期表の一番右の列には、稀ガス元素が並び,その安定性が、電子軌道が「閉殻」になることに由来することは良く知られています。

原子核においても類似の規則性があることを約70年前にMayerとJensenが指摘し、原子核の殻模型を確立しました。この模型では、陽子数と中性子数が各々 2、8、20、28、50、82、126の「魔法数」を取る場合に閉殻となり安定性が高いとされてきました。

櫻井氏らは、不安定な原子核、特に中性子が極めて過剰な核の研究を進め、それらの原子核では上記の常識に反して魔法数が消滅したり、新たな魔法数が発現したりする異常性があることを、世界に先駆けて発見しました。

両氏の研究は、理化学研究所の加速器施設において行われましたが、特に櫻井氏が提唱したウラン核分裂による中性子過剰核ビーム発生方式と高い粒子識別能力をもつ分析器の建設は今回の受賞対象となった研究で重要な役目を果たしました。

これらの研究は、核図表の全域における魔法数の説明に繋がる包括的な原子核構造理論の構築を促すものです。またこれらの魔法数の実験的理論的な解明は、例えば宇宙物理学における元素合成の理論等にも影響を与え得るもので、より広い物理学の観点からも非常に重要です。

仁科記念賞
http://www.nishina-mf.or.jp/prize.html


(文責:物理学専攻 教授 早野龍五)

 

 

―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―

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