特集コンテンツ
山内薫教授 日本化学会賞ご受賞によせて

山内薫教授
化学専攻の山内薫教授が、「動的分子構造論に基づく超高速分子過程に関する研究」の御業績により、第67回日本化学会賞を受賞されました。この賞は、学術研究を通じて、化学分野に極めて顕著な貢献をした研究者に贈られる賞です。
化学の分野における最も重要なテーマの一つは、分子の形が化学反応の過程でどのように時々刻々変化していくかを追跡することです。山内教授は、その手法として、コインシデンス運動量画像法、レーザーアシステッド電子回折法など、さまざまな独創的な手法を開拓してこられました。コインシデンス運動量画像法では、多価イオンとなった分子の構造の超高速変化を明らかにされ、強い光子場の中での分子構造変化の研究の端緒を開かれました。そして、炭化水素分子の場合、強光子場の下で、水素原子が極めて早く移動する超高速水素原子マイグレーションが起こることを明らかにされました。レーザーアシステッド電子回折では、電子回折を光の場の中で行うという発想の下、フェムト秒領域の時間分解能をもつ電子回折実験を行い、分子の幾何学的構造の変化を高い時間分解能で決定できることを示されました。また、光の場の時間幅を最適化することによって、異なる化学結合の切断の割合を制御できることを示され、反応制御における強光子場の重要性を示されました。
山内教授は、独創的な光源技術や計測技術を導入されるとともに、理論研究を通じて新しい概念を導入され、常に新しいフロンティアを開拓し続けて来られました。その御業績が高く評価され、今回の御受賞となりました。御受賞を心よりお祝い申し上げます。
平成26年度日本化学会賞
http://www.chemistry.or.jp/news/information/26-9.html
(文責:超高速強光子場科学研究センター 教授 岩崎純史)
―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―