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化学専攻の井手口拓郎助教が、科学技術分野の文部科学大臣表彰 若手科学者賞を受賞

井手口拓郎助教
化学専攻の井手口拓郎氏が文部科学大臣表彰若手科学者賞を受賞されました。同賞は、萌芽的な研究、独創的視点に立った研究等、高度な研究開発能力を示す顕著な研究業績をあげた若手研究者を対象としたもので、若手研究者にとって登竜門的な大変名誉な賞であります。
井手口氏は現代レーザー技術の結晶とも言える画期的な光源である光周波数コム(2005年ノーベル物理学賞受賞技術)を用いた超高速かつ超精密な分光技術の開発に大きく貢献する業績を上げました。繰り返し周波数の異なる2台の光周波数コムを用いることで、広い範囲のスペクトルをマイクロ秒の時間スケールで測定する手法(Dual-comb spectroscopy)は、分子分光の新手法として極めて大きな注目を集めています。特にこの手法を利用した非線形ラマン分光は、超高速のラベルフリーバイオメディカルイメージング手法として非常に汎用性の高い技術であり、物理学分野の他、生物学、医学、薬学などの様々な分野の研究者の興味、関心を集めています。候補案件の研究は今後大きな発展が期待されているのみならず、分光学の歴史上重要な意味を持つものであります。
井手口氏の最も特筆すべき貢献は、Dual-comb spectroscopyの原理を、ラベルフリーのイメージング技術として近年注目されている非線形ラマン分光に適用したことであります[T. Ideguchi et al., Nature 502, 355-358 (2013)]。達成した高速性能は、従来技術に対して1000倍も速いものであり、当該分野に革新的な非連続的ステップをもたらしました。この技術は汎用性の高い測定技術であることから、様々な分野の研究者から注目を受けており、今後様々なアプリケーションを生み出すことが期待されています。バイオメディカルイメージングはその恩恵を大いに受ける1つの分野であります。この様に、当該研究は物理学と他の分野の研究を繋ぐ学際的研究の好例であり、将来に渡り、大きく評価される仕事であることは想像に難くありません。
井手口氏は現在、化学や生命科学分野の研究に自ら乗り出し、当該研究の発展及びアプリケーションの開発を精力的に行っています。今後のますますのご活躍を期待しております。
平成27年度文部科学大臣表彰
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/27/04/1356509.htm
(文責:化学専攻 教授 合田圭介)
―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―