2015/04/09

イリエシュ准教授の受賞を祝して

イリエシュ ラウレアン准教授

イリエシュ ラウレアン准教授

業績:「鉄触媒を用いた炭素−水素結合活性化反応開発の研究」

イリエシュ准教授(化学専攻)は、資源として豊富に存在し毒性が極めて低いにも関わらずこれまで有用性が認められていなかった鉄の触媒作用に着目して一貫して研究を進め、汎用性の高い炭素-水素(C-H)結合活性化を伴う炭素-炭素結合(C-C結合)生成反応を開発しました。鉄の化学には多様なスピン状態と素早い系間交差がつきものであり、このことが有機鉄触媒化学の発展を妨げてきてきました。イリエシュ准教授はこの問題に果敢に取り組み問題解決の糸口を掴みました。このことが今回の受賞につながりました。研究は当初、活性が高く不安定な有機金属反応剤を用いて進められましたが、最近遂に、中性で安定な出発原料を元にして、芳香族、ヘテロ芳香族、オレフィン類の鉄触媒C-H結合活性化を温和な条件で実現するという高みに達しています。イリエシュ准教授は有機鉄活性種を用いた触媒反応に関する一連の研究を経て、 鉄触媒を貴金属触媒を凌駕しうる活性と選択性を示す触媒に磨き上げた。本研究により得られた成果は、基礎学術分野の観点から興味深いだけでなく、持続性社会の構築というこれから全世界が直面する課題の解決に貢献するものです。

ルーマニア出身のイリエシュ准教授はヨーロッパとの関係も深く、今後、本学のみならず日本の化学界の国際化にも大いに貢献くれることを期待します。

平成27年度文部科学大臣表彰
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/27/04/1356509.htm


(文責:化学専攻 教授 中村栄一)

 

 

―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―

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