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物理学専攻の杉浦祥さんが、第5回日本学術振興会育志賞を受賞

杉浦祥さん
杉浦祥氏が第5回(平成26年度)日本学術振興会育志賞を受賞し、3月4日(水)に日本学士院にて、天皇皇后両陛下にご臨席いただき、授賞式が行われました。
受賞の対象となった杉浦氏の研究は、量子統計力学を純粋状態だけを用いて定式化することです。従来は、いわゆるアンサンブル形式で定式化されており、巨大な数のミクロ状態(純粋状態)を古典混合した「量子混合状態」が主役でした。しかし、統計力学の本質は、ほとんど全てのミクロ状態が平衡状態であることです。その本質を直接的に反映した定式化は、杉浦氏が大学院に入学した当時は、磁化や相関関数などの「力学変数」の期待値についてだけ、そしてミクロカニカル集団に対応する状態にのみ、行われていました。
そこで杉浦氏は、力学変数のみならず温度やエントロピーなどの「純熱力学量」も求めることができるような、新しい量子純粋状態を構成し、さらに、カノニカル集団に対応する量子状態も構成しました。これにより、統計アンサンブルを利用することなくたった1個の純粋状態から全ての統計力学量が求まる、という新しい定式化が完成しました。また、この定式化は、実用上も有力な計算手法になる可能性があり、実際に使われつつあります。このため、杉浦氏の修士論文の内容を発展させた論文も、博士論文の内容の主要部分になった論文も、ともにPhys. Rev. Lett.誌のEditors' Suggestionに選ばれました。また、杉浦氏は、日本物理学会領域11の若手奨励賞も史上最年少で受賞しました。
このように、物理学専攻の大学院生が優れた研究成果をあげ、国内外から評価されたことは、まことに喜ばしいことです。おめでとうございます。
日本学術振興会育志賞
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(文責:総合文化研究科 広域科学専攻 教授 清水明)
―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―