2015/01/19

高山あかり博士、第7回(2014年度)井上リサーチアウォードを受賞

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高山あかり助教

物理学専攻の高山博士は、「多探針STM を用いた1次元Rashba 効果およびトポロジカルエッジ状態の研究」に対して井上リサーチアウォードを受賞した。高山博士は、これまで、自らが開発した超高分解能スピン・角度分解光電子分光装置を用いて、ラシュバ効果を示す物質表面やトポロジカル絶縁体の表面において現れるスピン分裂した電子状態の研究を行ってきた。それによって、ラシュバ効果の異方性、表面状態とバルク状態の混成、フェルミ面の形状とスピン偏極率の関係などを実験的に明らかにした。今回の授賞対象となった研究では、これらの研究を発展させ、スピン分裂した表面電子状態におけるスピン偏極電流やスピン流(電流を伴わない角運動量のみの流れ)の検出を目指すものである。とくに、2次元系の端面に現れる1次元系を対象とし、多探針走査トンネル顕微鏡(STM)を用いることにより、2次元トポロジカル絶縁体と予測されている2原子層Biやシリセンの微細な単原子層領域の端面に沿った電気伝導を測定し、Rashba効果も含めた1次元状態の性質を明らかにしていく。このような伝導現象では、電場によるスピン操作が可能となることや、散乱を受けにくいスピン偏極した電気伝導が実現するなど、スピントロニクスへの応用の観点からも期待が持たれている。本研究はこれまで困難であった単原子層領域の1次元電気伝導を明らかにするものであり、極めて重要な研究テーマである。

第7回井上リサーチアウォード
http://www.inoue-zaidan.or.jp/b-01.html


(文責:物理学専攻 教授 長谷川 修司)

 

 

―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―

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