2014/12/08

佐藤勝彦名誉教授が2014年度文化功労者の顕彰を受けました

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佐藤勝彦名誉教授


理学系研究科佐藤勝彦名誉教授(物理学専攻)が、2014年度文化功労者の顕彰を 受けました。誠におめでとうございます。 心より祝辞申し上げますとともに、今後ますますのご活躍を祈念いたします。

本研究科物理学専攻名誉教授・前ビッグバン宇宙国際研究センター長(現在は自然科学研究機構長)の佐藤勝彦先生が2014年度の文化功労者に叙せられました。先生は1968年京都大学理学部物理学科をご卒業後、同大学院、助手を経て1982年に本学理学部助教授に就任、1990年に同教授に昇任されました。その後、ビッグバン宇宙国際研究センター長、理学部長・大学院理学系研究科長、日本物理学会会長等の要職を歴任されています。

佐藤先生は、素粒子物理学を天体物理・宇宙論に応用した世界的な先駆者です。まず、重力崩壊型超新星爆発においてニュートリノが10秒間程度中心部に閉じ込められることを示し、これは後に超新星1987Aによって実証されました。また、宇宙論・天体物理からニュートリノ質量や世代数をはじめとする各種素粒子の性質を制限し、今日の素粒子論的宇宙物理学の方法論を確立されました。さらに、相互作用の大統一理論に基づき、真空の相転移にともなって、宇宙が何十桁も指数関数的に膨張することを示し、ビッグバン宇宙論をインフレーション宇宙論へと発展させました。その際、宇宙の大規模構造の種となり得る揺らぎが生成可能なこと、磁気モノポール問題が解決可能であること、また急激な宇宙膨張によって因果関係をもち得る宇宙の地平線が十分広がることにより、大きな領域にわたって一様に正のバリオン数をもつ物質宇宙が実現することを示しました。さらに、この相転移の進行にともなって、宇宙が自己相似的に多重発生することを示しました。これは「唯一絶対の宇宙」という古典的な宇宙観を、「多種多様な宇宙の中でのわれわれの宇宙」という考え方に変更することを迫った画期的なものです。

これらの研究成果によって、1989年第五回井上学術賞、1990年第36回仁科記念賞を受賞、2002年には紫綬褒章を受章され、2010年には日本学士院賞を受賞されると共に、2013年より学士院会員を務められています。

(文責:物理学専攻 教授/ビッグバン宇宙国際研究センター 横山順一)


―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―

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