2014/09/30

西増弘志助教が平成26年度日本結晶学会進歩賞を受賞

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西増弘志助教

生物科学専攻の西増弘志助教が、「巨大なリボヌクレオ複合体および二機能性酵素の結晶構造解析」の研究業績に関して、平成26年度日本結晶学会進歩賞を受賞しました。本賞は、結晶学に関して優秀な成果を発表した若手研究者(35歳未満)与えられる賞です。

西増助教は、Cas9やFBPA/Pなどユニークな機能をもつタンパク質分子の結晶構造を決定することにより、それらの作動機構を解明してきました。

Cas9は原核生物のCRISPR-Cas獲得免疫機構に関与するRNA依存性DNAエンドヌクレアーゼであり、ガイド鎖RNAと複合体を形成し、標的2本鎖DNAを切断する機能をもちます。Cas9はゲノム編集をはじめとする新規の技術に応用できることから、生命科学の分野において現在もっとも注目されているタンパク質分子です。西増助教は、分子量190kDaという巨大なCas9-ガイド鎖RNA-標的DNA複合体の結晶構造を決定し、Cas9によるRNA依存性DNA切断機構を世界にさきがけて解明しました。この研究成果は、Cas9を利用した応用研究の基盤として世界的に高く評価されました。

 一方、二機能性酵素FBPA/Pは、ジヒドロキシアセトンリン酸(DHAP)とグリセルアルデヒド3-リン酸からフルクトース1,6-ビスリン酸(FBP)へのアルドラーゼ縮合反応、および、FBPからフルクトース6-リン酸への脱リン酸化反応、という糖新生経路における2つの異なる化学反応を触媒する機能をもちます。西増助教は、FBPA/PとDHAPとの複合体(アルドラーゼ型)、および、FBPA/PとFBPとの複合体(ホスファターゼ型)の結晶構造を決定することにより、FBPA/Pは酵素活性部位のかたちを大きく変えながら2つの化学反応を触媒することを明らかにしました。この研究成果は、「一酵素一反応」という生化学のこれまでの常識をくつがえす分子機構の発見として世界的に高く評価されました。

日本結晶学会
http://www.crsj.jp/

(文責:生物科学専攻 教授 濡木理)

 


―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―

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