2014/05/27

中村栄一化学専攻教授の藤原賞ご受賞

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中村栄一教授

化学専攻の中村栄一教授が,第55回藤原賞を受賞されることが決定しました。心よりお喜び申し上げます。同賞は公益財団法人藤原科学財団によって自然科学の発展に卓越した貢献をした研究者に贈呈されるもので、1960(昭和35)年に第一回贈呈式が行われて以来、毎年2名に贈呈されています。化学科関係者としては過去に、向山光昭先生、故井口洋夫先生、岩村秀先生がご受賞になっておられます。理学部からも、故久保亮五先生、小柴昌俊先生をはじめとする、錚々たる先生方が受賞されておられます。  中村教授のご業績は、反応・合成化学から物質科学、ナノ科学までの広きに亘ります。1980年代から有機銅化合物の実験的および理論化学的手法を用いた反応機構解明を端緒とし、ここから派生して希少金属を用いない「元素戦略」の概念を提唱され、世界的な潮流を作り出されています。現在では鉄などの豊富に遍在する金属を用いた斬新な触媒的有機合成手法の開発で世界を牽引されています。また、長年培った有機合成の力量を活かしてフラーレン誘導体やπ共役系有機材料を開発し、もってエネルギー・資源問題を視野に入れた有機薄膜太陽電池や有機EL素子の研究へと展開されています。最近では分子の動きや化学反応の様子を電子顕微鏡を用いてリアルタイムで観測することに世界で初めて成功するなど、基礎研究でも目覚ましい成果を挙げておられます。本年の王立化学会創立100周年記念賞(Centenary Prize)に続いて顕彰を受けられる中村教授ですが、先生の今後のますますのご活躍を期待しております。

(文責: 化学専攻 准教授 辻勇人)



―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―

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