2014/05/21

坂野仁名誉教授 紫綬褒章ご受章に寄せて

39

坂野仁名誉教授

本研究科の生物化学専攻にて長く研究教育に携わられ、2012年3月に本学を定年退職された坂野仁名誉教授が、このたび2014年春の褒章にて紫綬褒章を受章されることに決まりました。受賞の理由は、平成6年の当専攻教授としての着任を期に開始された、哺乳類の嗅覚の仕組みを解明する神経科学研究であります。自然界に存在する無数の匂いを動物がいかにかぎ分けて認識するかという問題に対し、坂野教授は、まず一個の嗅細胞が多数の嗅覚受容体のうちの一つを選んで発現させる機構について解明され、さらにはそれぞれの嗅覚受容体を発現する嗅細胞の神経繊維が脳の一カ所を正しく選び、脳の上に正確な匂い地図を形成する機構を解明されました。2次元のそれぞれの軸(背腹軸と前後軸)について異なる機構が使われており、それらの組み合わせで投射位置が決められていました。また、天敵の匂いによる強い恐怖反応が、ある特定の脳部位により規定されていることを明らかにされ、これらの発見をScience、Cell、Natureなどの一流紙に次々と報じられました。さらに、本学退職後の2013年に、嗅覚受容体は匂いがない状態でもそれぞれに異なる基礎活性を持ち、この活性がその神経が脳の2次元マップ上のどこに投射するかを決めているという、それまでの疑問点をすべて解決し一連の研究を集大成する研究成果をCell誌に発表されました。このような多くの研究成果は、研究の成功のためにはいかなる犠牲も省みない坂野名誉教授の強い意志により達成されたものであります。坂野教授の率いる「虎の穴」ともいうべき研究室でその期待に答え、今回の受賞の礎となった旧坂野研究室の諸氏に対しても、このたびの受賞を深くお慶び致します。

内閣府ウェブサイト
http://www8.cao.go.jp/shokun/hatsurei/26haru.html

(文責: 生物科学専攻 教授 飯野雄一)

 



―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―

  • このエントリーをはてなブックマークに追加