2014/04/07

深田吉孝教授の文部科学大臣表彰科学技術賞受賞を祝して

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深田吉孝教授

生物科学専攻の深田吉孝教授が、「体内時計の24時間リズムを形造る時計タンパク質制御の研究」の功績により、文部科学大臣賞科学技術賞を受賞されました。この賞は、我が国の科学技術の発展等に寄与する可能性の高い独創的な研究又は開発を行った研究者に贈られます。

多くの生物は、約24時間周期で時を刻む計時機構を持っており、例えば動物の体内時計は、睡眠や覚醒など、一日サイクルの活動を規則正しく繰り返すために必要です。しかし、このように長い周期で正確かつ安定に振動する分子的な仕組みは、体内時計の研究分野における重要課題として残されていました。深田吉孝教授は、時計タンパク質のリン酸化やユビキチン化といった多彩な翻訳後修飾の組み合わせにより、一群の時計遺伝子の転写・翻訳を介した計時機構が巧妙に制御されていることを明らかにしました。具体的には、マウスの中枢時計因子CRYは、互いに良く似たユビキチン化酵素であるFBXL21とFBXL3によって異なるポリユビキチン鎖が付加され、それぞれ安定化と不安定化という拮抗的な制御を受けることを見出し、この拮抗作用こそが体内時計の安定な発振に重要であることを示しました。この研究により、体内時計の周期制御への道が拓けたといえるでしょう。

照明とストレスに溢れた現代社会では体内時計に破綻をきたし、ガン、精神疾患、生活習慣病といった「現代病」の一因とも考えられています。深田教授の今後の研究により体内時計の分子的理解がさらに深まれば、それに基づく時計機構の破綻の改善により、現代人の健康維持に大きく寄与すると期待されます。

(文責:生物科学専攻 講師 小島大輔)

文部科学省平成26年度文部科学大臣賞ウェブサイト
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/04/1346090.htm




―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―

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