2014/02/24

生物科学専攻卒業生の田中若奈さんが井上研究奨励賞を受賞

生物科学専攻で博士課程を修了(平成23年度)された田中若奈さん(現日本学術振興会特別研究員)が、井上研究奨励賞を受賞されました。本奨励賞は、過去3年間の間に優れた博士論文を提出した若手研究者に贈呈されるもので、田中さんが生物科学専攻の博士課程で研究した内容が顕彰されました。田中さんは、植物の形がいかに作り出されるのかその発生メカニズムに興味を持ち、単子葉植物のモデル植物であるイネ (Oryza sativa) を研究材料として、研究を続けてきました。植物の葉や花などの器官は、未分化な細胞の集まりであるメリステムから形成されます。したがって、メリステムの機能を正常に維持することは、植物の発生・分化にとってきわめて重要です。田中さんは,tongari-boushi1 (tob1) と命名したイネの花(小穂)が異常となった変異体を解析し、その原因となる遺伝子を単離してその機能の解明を進めました。その結果、TOB1 遺伝子は、花器官の形成のみならずメリステムの維持にも必要なこと、花器官からメリステムへの何らかのシグナル生成を通してメリステムの維持を制御していることを明らかにしました。これまで、メリステムから器官へのシグナルに関わる遺伝子はいくつか知られていますが、TOB1の機能は、メリステムの維持と器官分化の理解に新たな局面を開く研究成果として注目されています。その後、さらにこの研究を発展させ、TOB1の重要性をさらに示す研究成果を得ています。田中さんは、これまですでに6報の原著論文と4報の総説を発表しており、非常に意欲的に研究を進めています。現在は、新領域創成科学研究科に所属し日本学術振興会特別研究員として、イネのみならずほかの植物も材料として、活発な研究を進めており、今後のさらなる研究の発展が期待されています。 

(文責:生物科学専攻 教授 平野博之)

 
公益社団法人 井上科学振興財団HP
http://www.inoue-zaidan.or.jp/b-01.html?eid=00022

 

 

 

―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―

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