2013/12/06

総合研究博物館特任助教 小薮大輔さんが井上研究奨励賞を受賞

総合研究博物館特任助教の小薮大輔さんが、井上研究奨励賞を受賞しました。生物科学専攻進化多様性生物学大講座の 博士課程で学位論文を執筆し、その研究が高く評価された結果です。小薮さんの研究は「哺乳類の頭蓋はいかなる歴史性 をもって成立しているか」という問題に比較形態学をもって斬り込み、頭蓋の進化の実態に関する理論構築に挑むものです。 哺乳類の頭蓋を網羅的に解析、その機能と適応的進化の解明に取り組みました。進化発生学と古生物学を統合し、頭部各 部位の起原と相同性を検証しています。哺乳類でよく発達する機構として咀嚼システムに着目、顎と歯の機能形態学的特 質が咀嚼筋の構築とどう関連するかを、大量の頭部標本を三次元画像解析することで明らかにしました。また、頭蓋諸骨 の骨化様式における異時性を吟味、各系統の分岐において骨化パターンがどう変化し、頭蓋の適応戦略が如何に影響を 受けるかを論じました。成果は既存の知識体系を覆し、「小薮理論」として確たる評価と称賛を受けるに至っています。 形態学者は無数の現物標本を観察し、比較総合によって論理を組み立てますが、根底には形を見る研ぎ澄まされた感覚を 要求されます。稀代の画家が歴史的名画を生みだすのと同じ資質と表現力を求められる学問です。小薮さんは、それを 満たす類まれな感性と絶え間ない奮励の結晶として、当人のみが築き得る新しい「形を見る世界」を世に問うています。

(文責:総合研究博物館(兼担) 教授 遠藤秀紀)

公益社団法人 井上科学振興財団
http://www.inoue-zaidan.or.jp/

 

 

 

―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―

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