2013/03/06

ビッグバン宇宙国際研究センターの坂井南美助教が日本天文学会研究奨励賞を受賞

 このたび、ビッグバン宇宙国際研究センターの坂井南美助教が、優れた研究成果を挙げ
ている若手天文学研究者に贈られる2012年度日本天文学会研究奨励賞(第24回)を受賞
されることになりました。受賞研究題目は、「低質量原始星天体における暖かい炭素鎖化
学の提唱とその進展」です。

 坂井助教は、国立天文台野辺山観測所の45 m電波望遠鏡をはじめとする国内外の大口径
電波望遠鏡を用いて低質量原始星天体の化学組成を観測的に研究し、炭素鎖分子とその負
イオンが特異的に豊富な天体、おうし座のL1527、を発見しました。それまで、アルコー
ルやエステルのような飽和有機分子が低質量原始星近傍に存在することが知られていまし
たが、炭素鎖分子に恵まれる天体の発見は大きな驚きでした。坂井助教は、その原因とし
て、「星間塵に含まれるメタンが星形成近傍で蒸発して炭素が豊富な状態を作り、炭素鎖分
子を効率的に生成する」というメカニズムを提案しました。これが「暖かい炭素鎖化学」
です。この提案はすぐに化学モデル計算で確認され、また、坂井助教自身のその後の観測
的研究によって次々と強められ、新しい化学過程として確立しました。これにより、物理
的に同じように見える原始星天体でも、化学組成が大きく異なり得ることがはじめて示さ
れました。このような化学組成の多様性は、過去の星形成過程の履歴を反映しているもの
と考えられ、星形成過程の理解に新しい視点を提供するものです。さらに、その多様性が
惑星系にどのようにもたらされるかについて大きな興味が持たれます。坂井助教の研究は、
今後、ALMA(チリに建設中に大型ミリ波サブミリ波干渉計)による観測で大きく発展し、
ビッグバン宇宙国際研究センターのプロジェクトの柱である太陽系惑星および系外惑星の
物質的起源の理解につながっていくと期待されます。

(文責:物理学専攻 教授 山本智)
 

―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―

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