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2013/02/05
横山順一教授が井上学術賞を受賞
このたびビッグバン宇宙国際研究センターの横山順一教授は,「インフレーション宇宙論の実証的研究」により, 2012年度の井上学術賞を受賞されました。おめでとうございます。
宇宙は137億年前,火の玉状態で誕生した(ビッグバン)と考えられ,その誕生の謎を説明する理論が,本研究 科の佐藤勝彦名誉教授らが1980年前半に提唱した「インフレーション」の考えです。すなわち,宇宙はその創生 期に内包した真空のエネルギーにより急速膨張(インフレーション)して巨視的な大きさに達し,そのエネルギー が熱に転化することで,火の玉宇宙ができたとするものです。この考えは最先端の宇宙観測により強固になりつつ ありますが,理論の核心部にはまだ多くの異なる学説が並立しています。そんな中で横山教授は,実験や観測によ り検証できる理論の構築を目ざし,国際的にハイレベルな研究を展開されて来ました。インフレーションと物質生 成を一体的に実現するモデルの構築に初めて成功したこと,さらに既知のすべてのインフレーションモデルを包含 するもっとも一般的な枠組みを構築し,観測と理論の直接比較を可能にしたこと,宇宙マイクロ波背景放射の揺ら ぎの観測から,インフレーション中に生成した量子的な揺らぎを逆算する方法を開発し,WMAP衛星の観測結果を 初期宇宙に直接に反映させたこと,初期宇宙のプローブとして重力波の重要性に着目した「重力波的宇宙論」の考 えを掲げ,建設が進んでいる重力波望遠鏡KAGRAや次世代のDECIGOへの理論的指導性を発揮しておられることなど が特筆されます。今後ますますのご活躍を祈念いたします。
(文責:物理学専攻教授/ビッグバン宇宙国際研究センター長,牧島一夫)
■ 横山順一教授
―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―