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2012/12/20
浅井祥仁氏の日本学術振興会賞受賞によせて
今年は、基礎科学、特に素粒子研究の分野では理論が提唱されたから50年間探し求めていたヒッグス粒子 と考えられる新粒子がCERNの世界最高エネルギーの陽子・陽子衝突型加速器LHCでの実験で発見されました。 この大きな国際協力共同実験ATLASの中で、日本の研究者をまとめ、ヒッグス粒子発見に大きな貢献をした 浅井氏の日本学術振興会賞の受賞は、ヒッグス発見と二重の意味で喜ばしく誇らしく思っております。 浅井氏は、これまで20年、エネルギーフロンティア実験の最前線で超対称性やヒッグス粒子の研究を 行ってきました。彼は、研究グループ責任者として、日本のみならず各国の若手研究者を指導すると同時に、 新しい研究方法の開発やトポロジーに分類して確実に発見する方法の考案など新しいアイデアを開拓し続けて きました。ヒッグス発見においても、日本の若手研究者をまとめ、様々な解析方法を開発し早期の確実な発見に 大きな貢献をしました。これらの研究は激しい国際競争の中で行われますが、日本の研究者が中心的な役割を 果たすことができました。この点が評価された受賞であります。 ヒッグスの発見は「真空」の意味を変えるパラダイムシフトであり、素粒子のみならず、宇宙の研究などに 大きな影響のある成果であります。このヒッグス粒子を通して「真空」や「宇宙のはじまり」を探る新しい 加速器研究(ILC計画)に日本が重要な役割を果たすことが世界中から期待されています。 (文責:物理学専攻 教授 駒宮幸男)
―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―