特集コンテンツ
2012/05/18
5/18 佐藤政充助教の文部科学大臣表彰若手科学者賞受賞を祝して
– 業績:「細胞分裂における微小管の制御メカニズムの研究」 –
微小管は細胞分裂など細胞の基本的な機能を生み出すのになくてはならないダイナミックな細胞骨格です。この形作りがうまくいかないと、細胞の癌化や細胞死の原因にもなり得ます。佐藤政充助教は分裂酵母を用い、遺伝子工学の最先端の可視化技術を駆使して細胞分裂や減数分裂のしくみの研究に取り組んで来られましたが、今回、核輸送と細胞骨格という一見無関係な二つの現象が、ある一つの蛋白質を介して結びついていることを証明されました。Ranと呼ばれるGTP結合蛋白質は細胞質の物質を核内に輸送する制御蛋白質としてよく知られています。ところが、Ran蛋白質がなくなると細胞質にある微小管の形成不全が起こることがみつかっていました。佐藤助教は、細胞極性の異常をもたらすalp7 という突然変異体が微小管の形成に欠損をもつことを発見し、微小管の形成におけるAlp7蛋白質(TACCとも呼ばれます)の重要性を明らかにしました。さらにはAlp7蛋白質が核と細胞質の間を行き来すること、そしてそれが細胞分裂の時期にも、細胞分裂の間の時期にも微小管の形成に必須の役割を果たすことを見つけられました。そして、RanによりAlp7が核輸送されることが微小管の制御に最も重要であることを明確に示されました。この成果をもとに佐藤助教の研究はさらに進んでおり、今後も微小管の動きの神秘に迫る多くの研究成果が期待されます。
(文責:生物化学専攻長 教授 飯野雄一)
―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―