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12/14 附属臨海実験所の赤坂甲治教授が日本臨床分子形態学会平成22年度論文賞を受賞
本研究科附属臨海実験所の赤坂甲治教授が日本臨床分子形態学会平成22年度論文賞を受賞しました。本賞は日本臨床分子形態学会が発行している英文機関誌Medical Molecular Morphologyにおいて、年間で最も優れた論文に授与される賞です。この論文は、2009年に発行された論文の中から選出されました。
Medical Molecular Morphology 42: 63-69, 2009
Cell-surface arylsulfatase A and B on sinusoidal endothelial cells, hepatocytes, and Kupffer cells in mammalian livers
赤坂教授は、30年以上にもわたり、動物の形態形成の研究を続けており、特に海産動物のウニのアリールスルファターゼArs遺伝子に注目して、遺伝子の発現調節機構、タンパク質の機能について解析してきた。ヒトのArs遺伝子の変異は、脳神経の脱髄、心臓弁膜の不全などの重篤な疾患をもたらすことから、古くから注目されてきたが、疾患の分子機構は不明のままで、治療法がない難治疾患とされてきた。Arsは細胞内小胞に局在する酵素と認識されてきたが、赤坂教授グループは近年、ウニ胚ではArsタンパク質が細胞内小胞には結晶化しても入りきれないほどの量があることと、酵素活性をもたないArsタンパク質が形態形成運動の細胞外基質として機能していることを報告した。受賞論文は、杏林大学医学部、ニッピバイオマトリックス研究所、広島大学と共同で、マウス、ラットの細胞においても、Arsは主に細胞外基質として存在し、扁平なヒト血管内皮細胞の伸展にかかわることを明らかにしている。赤坂教授は今回の論文賞について、「医学系の研究者が主体となって行った臨床に主眼をおいた研究であるが、海産動物を用いた基礎研究が、医学にも波及効果をもたらすことを示すことができた。従来の概念を覆す発見であり、治療法の開発にもつながる。欧米のように海洋生物の基礎研究の有用性が日本でも理解されるようになればと願っている。」とコメントしている。
―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―