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2009/09/07
アメリカ化学会賞中村栄一化学専攻教授
化学専攻の中村栄一教授が、2010年のアメリカ化学会賞(2010 Arthur C. Cope Scholar Award)を 受賞されます。同賞はArthur C. Cope教授(コロンビア大学、MIT)の業績を記念して アメリカ化学会(会員数約16万人)によって1984年に設立された賞で、 有機化学分野において卓越した業績を挙げた研究者から、35歳以下2名、36歳~49歳4名、 50歳以上4名を選んで毎年贈られています。過去の受賞者には後のノーベル賞受賞者も 数多く含まれ、国内在住の日本人では野依良治(名古屋大),柴崎正勝(東京大), 小林修(東京大),山本嘉則(東北大),林民生(京都大)の諸先生に続く受賞者です。 中村教授のご業績は、有機反応化学、有機合成化学から物質科学、ナノ科学までに拡がる 目覚ましいものです。最近では我が国の今後の政策に関連して「元素戦略」という言葉を提唱し、 鉄やマンガンのようなユビキタス(ありふれた)金属を用いる斬新な触媒反応の開発で 世界をリードされています。また長年培った有機合成の実力を活かして新しい フラーレン誘導体やπ共役系有機材料を創り出し、これらの新規分子を活用して 新しいデバイス構造の有機薄膜太陽電池や有機EL素子を開発する等、エネルギー・資源問題を 視野に入れた研究を推進されています。 こうした社会貢献を目指した研究の一方で、科学技術振興機構ERATOプロジェクト研究総括として、 単一有機分子の動きを電子顕微鏡で観測することに世界で初めて成功する等、 基礎研究でも目覚ましい成果を挙げておられます。 化学イノベーション・グローバルCOEのリーダーをお務めの中村教授ですが、 そのご興味は単に教育と研究に留まらず、バロック時代の木管フルートを演奏させては セミプロ級、世界中の有機化学者にその多才ぶりが知れ渡っています。中村教授の 研究室からこれからも世界を驚かせる成果が続々と出てくることを期待しつつ、 筆を置かせていただきます。
―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―