第12回理学部公開講演会『理学でのコミュニケーション』
理学でのコミュニケーション
コミュニケーションの語源、ラテン語のcommunicatioは「分かち合う」という意味があります。情報を分かち合い機能を進化させるコミュニケーションは、自然科学の様々な面に潜んでいます。自然の神秘をコミュニケーションというこれまでにない新たな視点からお話いたします。
日時
2007年11月17日(土) 14:00〜16:30(13:00開場)
(注) 終了後、講師との歓談の時間を設けます
会場
東京大学本郷キャンパス 法文2号館2階 第31番教室
講演者
動物のコミュニケーション -脳とホルモンのしくみ-

岡 良隆(理学系研究科 生物科学専攻 教授)
動物は外界の極めて多様な環境変化を的確に受容して,それに適応した柔軟な応答をする能力を備えていますが,神経系(脳)と内分泌系(ホルモン)はこれを可能にしている重要な生体情報システムです。このような機構を我々は「生命の基本を司る本能的脳機構」と呼んで研究してきましたが、講演では、神経系と内分泌系のインターフェイスをつかさどる「神経内分泌機構」と、行動を適応的に変化させるための脳内の「神経修飾」と呼ばれる機構に関して、近年の研究成果を紹介します。
東京大学理学系大学院博士課程中退、東京大学理学部助手、東京大学理学部助教授(臨海実験所)を経て、平成15年4月から現職。理学博士。
宇宙文明とのコミュニケーション -銀河図書館構想-

祖父江 義明(理学系研究科 名誉教授)
銀河系地図をもとに星間コミュニケーションについて考えてみることにしましょう。星が密集する銀河中心は星間通信も容易で文明の銀座です。太陽近くでは文明間距離は千光年もありますが、千年の時間を克服すれば交信が可能です。電波によって文化や文明を銀河系規模で共有する銀河図書館構想を紹介することにしましょう。千年のハイテク、ジオパーク構想、そして太陽系文明の将来についても考えてみます。銀河図書館によって私たちは、千光年かなたの文明を、千年の時をへだてて受け継ぎ、また、私たちの素晴らしい文化を銀河系に永遠に遺すことも夢ではありません。
東大理学研究科天文学科修士終了後、名古屋大学物理学教室、マックスプランク電波天文学研究所、東大野辺山宇宙電波観測所、東大理学部天文学教室、同天文学教育研究センターなどに勤務。前日本天文学会理事長。現在鹿児島大学理学部教授。理学博士。
デジタル社会を支える数学

桂 利行(数理科学研究科 教授)
コンピュータの発達とともにデジタルがアナログをおさえて急速に普及してきました。CD、CD-ROM、カメラ、ビデオを始め電話、テレビに至るまでデジタルが主流になっています。そのようなデジタル機器に欠かせない数学、それが符号理論です。デジタル信号に起こりがちな小さな誤りを訂正するこの理論によってデジタル機器の安定した作動が可能となります。この講座では、符号理論が有限体という代数系からどのように構成され、誤り訂正がどのような原理で行われるかについて、その数学的側面をお話しします。
東北大学理学部助手、横浜市立大学文理学部助教授、お茶の水女子大学理学部助教授を経て、平成4年4月から現職。理学博士。