第11回理学部公開講演会『挑戦する理学』

挑戦する理学

~自然の謎に迫る~

理学の究極の目標は自然現象を明らかにし、そのしくみを理解することにある。近代科学の発展のおかげで、現在ではさまざまな自然現象が解明されているが、まだまだ未知のことは数多く残されている。また、研究が進んだがために認識されるようになった新たな謎も数多い。理学部で現在行われている最先端の研究を例に、挑戦を続ける理学の姿をご覧いただきたい。

日時

2007年4月20日(金) 18:00~20:30(17:00開場)

場所

東京大学駒場キャンパス 数理科学研究棟大講義室

講演者

アインシュタインの夢と超弦理論

京都大学基礎物理学研究所 所長
兼 東京大学大学院理学系研究科 物理学専攻 教授 江口 徹

一般相対性理論を建設して重力の起源の説明に成功したアインシュタインは、晩年にいたって電磁気の力も時空の幾何学に帰着させることにより自然界の統一理論ができないだろうかと考えました。アインシュタインの試みは不成功に終わりましたが、今、アインシュタインの夢の実現に迫る、壮大な理論が世界中の理論物理学者の英知を集めて建設されようとしています。すなわち素粒子の超弦理論です。素粒子を1次元的に広がった紐と考える超弦理論にはこの10年ほどの間に大きな進展があり、素粒子の統一理論としてその完成への期待が高まっています。この講演では、宇宙創成とブラックホールの謎に迫る超弦理論の試みとその現状を紹介します。

講演要旨 » 江口先生への質問と回答

  • 1975年 東京大学理学部物理学専門課程博士課程修了
  • 1975-1978年 米国シカゴ大学、スタンフォード大学研究員
  • 1978-1980年 米国シカゴ大学物理学教室助教授
  • 1980-1991年 東京大学理学部物理学教室助教授
  • 1991-2007年 同教授
  • 2007年 京都大学基礎物理学研究所所長

生命の神秘にせまるRNA

東京大学大学院理学系研究科 生物化学専攻 准教授 程 久美子

ヒトを始めとする生物の活動は、遺伝子(DNA)によってコントロールされている。すなわち、DNAからRNAが転写され、タンパク質が合成されることによって、特定の機能が発揮される。しかし、近年の分子生物学の進展によって、これまでは、単なる情報仲介役と考えられていたRNAが、生命現象の多様性に関わっていることがわかってきた。本講演では、近年のRNA研究とその成果の応用の可能性について紹介する。

講演要旨 » 程先生への質問と回答

  • 1987年 早稲田大学大学院理工学研究科物理及び応用物理学専攻博士後期課程修了
  • 1987-1989年 三菱化成生命科学研究所・特別研究員
  • 1989-2002年 日本医科大学医学部・助手・講師・助教授
  • 2002年 東京大学大学院理学系研究科生物化学専攻・特任助教授
  • 2006年 同助教授

光の場の中の分子

山内講師

東京大学大学院理学系研究科 化学専攻 教授 山内 薫

我々は光を通じて世界を見ている。光は物質を照らし出し認識させるための手段でありつづけた。しかし、光の強さを大きくする技術は、「光と物質の混合状態」を作り出すことを可能とした。光の持っていた別の役割が新しく現れたのである。分子は光の場の中で、新たな状態となり、普段は切れない化学結合が切断される、そして、光速の0.1%の速さで、水素原子が分子の中を駆け回る。講演では、先端光科学の技術が拓いた新しい研究領域を紹介する。

講演要旨

  • 1981年 東京大学理学部化学科卒業
  • 1985年 東京大学大学院理学系研究科化学専門課程中退、東京大学教養学部基礎科学科第一・助手、理学博士
  • 1990年 東京大学教養学部基礎科学科第一・助教授
  • 1997年 東京大学大学院理学系研究科化学専攻・教授