第3回理学部公開講演会『基礎科学の地平線』

基礎科学の地平線

- 東大理学部からのメッセージ -

「サンゴは警告する」

茅根 創 助教授(理学系研究科 地球惑星科学専攻)

1998年夏、世界中の海で色とりどりのサンゴが真っ白になる「白化」が起こった。これは、地球温暖化が生態系に大きなダメージを与えた初めての例だった。南の海の環礁では、海面上昇によって島が水没することが危惧されている。地球環境変動の早期警報センサーとも言えるサンゴ・サンゴ礁とは、どのような生態系・地形なのだろうか。海でもっとも多様な生物を養うサンゴ礁を、私たちは次の世代に残すことができるのだろうか。

「宇宙から探る生命の起源と進化—アストロバイオロジーとは—」

松井 孝典 教授(新領域創成科学研究科/理学系研究科)

20世紀、宇宙や地球の起源と進化に関しては、ある程度のシナリオが描けるようになった。しかし、生命の起源と進化に関する研究は今もって、そのような段階に達していない。その困難さは、空間スケールにおいて、原子、分子、高分子、ゲノムから、細胞、個体、種、生態系、生物圏、更にはその太陽系、銀河系、他の銀河における分布まで、また時間スケールにおいては、宇宙誕生時のビッグバン段階から、その後の銀河、恒星、惑星系の形成、40億年近く前に遡る地球における最初の生命の合成、更にはその後の進化という時空スケールの広大さと、それらを総合するという、問題の複雑さを考えてみれば容易に理解できよう。21世紀の始まりと同時に、この問題に真正面から取り組もうという新しい科学的挑戦が始まっている。それがアストロバイオロジーである。その現状を紹介する。

場所

東京大学農学部・弥生講堂