理学系研究科シンポジウム「大震災復興へ向けての理学・理学者の役割」
理学系研究科シンポジウム
「大震災復興へ向けての理学・理学者の役割」
日時
2012年2月3日(金)13:30~17:35
講演スケジュール | |
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13:30-13:40 | 開催挨拶 |
13:40-14:20 | 平田直教授 |
14:20-14:50 | 佐竹健治教授 |
14:50-15:20 | 下浦享教授 |
15:20-15:50 | 早野龍五教授 |
15:50-16:05 | 休憩 |
16:05-16:35 | 福田裕穂教授 |
16:35-17:05 | 中島映至教授 |
17:05-17:35 | 升本順夫准教授 |
場所
東京大学理学部 化学本館 5階講堂
講演要旨と講演者の紹介
「2011年東北地方太平洋沖地震の日本列島へのインパクト」
平田直(地震研究所 教授)

東京大学大学院理学系研究科地球物理学専攻博士課程退学、東京大学理学部助手、カリフォルニア大学ロサンゼルス校ポスドク研究員、千葉大学理学部助教授、東京大学地震研究所助教授を経て教授、前地震研究所長。2011年より現職。
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震は、日本の観測・調査史上最大の地震規模、マグニチュード9.0の超巨大地震でした。この地震は、太平洋プレートが東北日本の下に沈み込むことによって蓄積された数百年分の弾性エネルギーが約3分間で解放されたことによって発生しました。解放された量は、阪神淡路大震災を起こした1995年兵庫県南部地震のエネルギーの約1千倍という膨大なものでした。地震後まもなく1年となる今でも、活発な余震活動が継続し、地震後の地殻変動も継続しています。その日本列島への影響について解説します。
レジュメ [6.9MB]
「将来の地震・津波の予測と想定は可能か?」
佐竹健治(地震研究所 教授)

北海道大学大学院理学研究科地球物理学専攻修士課程修了、東京大学大学院理学研究科地球物理学専攻博士課程退学、東京工業大学教務職員、カリフォルニア工科大学客員研究員、ミシガン大学助教授、工業技術院地質調査所主任研究官、産業技術総合研究所主任研究員を経て2008年より現職。理学博士。
昨年3月11日の東北地方太平洋沖地震(M9.0)は、日本の観測史上最大規模の地 震でした。大地震の発生を直前に予知するのは現状では困難ですが、長期的な 予測や想定も不可能でしょうか? 宮城県沖では過去約200年間にM7程度の地震 が繰り返していることから、今後30年以内に99%の確率で同程度の地震が発生すると予測されていましたが、昨年の地震の規模は「想定外」でした。一方で、1896年や869年には、昨年と同じような津波が発生したことが知られており、津波については決して「想定外」ではありませんでした。
レジュメ [2.0MB]
「土壌中のガンマ線放出核種分析による福島周辺放射線マップ」
下浦享(理学系研究科附属原子核科学研究センター 教授)

京都大学大学院理学研究科博士後期課程研究指導認定退学、日本学術振興会 奨励研究員、京都大学理学系研究科理学部助手、東京大学大学院理学系研究科理学部助手、立教大学理学部講師を経て助教授、2000年より現職。
理学系研究科を中心とした大震災からの復旧支援活動のために結成された「環境放射線核物理・地球科学合同会議」により福島およびその周辺で採取された土壌からの放射線分析が提案され、2000以上の地点の土壌が分析され、様々な核種からの放射線マップが作成されました。
試料採取に94の、その分析には 23の大学・研究機関が参画したこの活動の内容および分析結果について講演します。
レジュメ [13.4MB]
「先生助けてください、ホールボディーカウンターが変なんです」
早野龍五(理学系研究科物理学専攻 教授)

東京大学大学院理学系研究科物理学専門課程博士課程修了、東京大学理学部附属中間子科学実験施設 助手、高エネルギー物理学研究所助教授、東京大学理学部助教授を経て、1997年1月より現職。理学博士。
東日本大震災が発生してからもうじき11ヶ月を迎えます。私は震災直後から、原子炉や放射能のデータを集め・解析し・ 可視化し・twitterを使って公表することを続けて来ましたが、最近では、食品、特に学校給食の丸ごと放射能検査と、ホールボディーカウンター(WBC)測定による、内部被ばくの実態解明に注力しています。
講演では「大震災復興へ向けての理学者の役割」の一例として、私が食品検査やWBC測定に深く関わることになった経緯と、WBC測定の現状(なぜ実験物理学者の出る幕があるか)についてお話しようと思います。
レジュメ [3.6MB]
「福島第一原子力発電所事故にともなう植物への放射性物質蓄積調査」
福田裕穂(理学系研究科生物科学専攻 教授)

東京大学大学院理学系研究科植物学専門課程博士課程修了、大阪大学理学部、東北大学理学部、東京大学理学部附属植物園を経て、1997年より現職。理学博士。
2011.3.11の大地震より被災した福島第一原子力発電所から、放射性物質が放出され、広い範囲の土地に降下しました。私たちは、この放射性物質の植物への取り込みと沈着の実態を明らかにするために、東京大学、神戸大学、北海道大学、宇都宮大学、福島県立医大、いわき明星大学、財団法人環境科学研究所の仲間と調査を始めました。調査対象としたのは、イネ、畑地の作物、牧草、野草、藻類と広範にわたります。今回の発表では全体の概要と、特に理学系の研究者が中心となって調査を進めている牧草地での放射性物質の植物への移行の現状についてお話ししたいと思います。
「福島第一原子力発電所事故に伴う環境汚染と地球惑星科学の役割」
中島映至(大気海洋研究所 教授)

東北大学大学院地球物理学専攻博士課程単位修得退学後、技官、助手、助教授を得て、1991年から東京大学気候システム研究センター助教授、教授、同センター長、2010年より現職。
福島第一原子力発電所の事故に伴う環境汚染は広い範囲に渡り、その実態と動態の把握には、放射性物質の専門知識とともに、地球惑星科学の知識無しには不可能である。しかし同時にこのような大災害は現世代の研究者にも未曾有の出来事であり、その対処には様々な試行錯誤があった。事故発生時から現在までのその軌跡を振り返り、得られた知見と課題について考える。
レジュメ [2.5MB]
「海洋への放射能汚染水の広がり:観測とシミュレーション」
升本順夫(海洋科学研究開発機構 准教授)

九州大学大学院工学研究科修士課程修了、東京大学理学部地球惑星物理学科助手、オーストラリア連邦科学産業研究機構海洋学部門客員研究員、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻助教授、海洋研究開発機構地球環境フロンティア研究センター兼務、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻准教授を経て2010年より現職。理学博士。
福島第一原子力発電所から海洋へ放出された放射能汚染水は、沿岸域から太平洋の広い範囲に広がっており、海洋環境や生態系に大きな影響を及ぼす可能性が指摘されています。3月下旬以降、この汚染水の広がりについて、観測と数値モデルを用いて現状を把握する試みが進められています。
本講演では、これらの活動の概要を示すとともに、汚染水の広がりについて、どこまで分かっているのかをご紹介します。
レジュメ [8.7MB]
対象
学内の学生及び研究者、一般の方もご参加いただけます。
参加費
無料。事前申込は不要です。
定員
150名
主催
東京大学大学院理学系研究科・理学部
問い合わせ先
東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室
TEL | 03-5841-7585 |
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