早野龍五教授2008年度仁科記念賞受賞

小沢 恭一郎(物理学専攻 講師)

早野龍五教授

仁科記念賞は、故仁科芳雄博士の功績を記念し原子物理学と深い関連のある研究において優れた業績をあげた研究者を表彰することを目的とした歴史ある賞です。本学理学部の関係者でも、小柴昌俊特別栄誉教授、有馬朗人元総長、山崎敏光名誉教授等が受賞されています。

早野教授は、π中間子原子や反陽子原子など自然界には存在しない奇妙な原子を作り、その精密測定を行うことで新しい物理を切り拓いてきました。中でも反陽子ヘリウム原子の研究は、粒子・反粒子対称性(CPT 対称性)を高精度に検証できる実験として世界の注目を集めています。

反陽子ヘリウム原子は、早野教授によりKEKで発見され1993 年にはCERN 研究所においてそのレーザー分光手法が早野教授により確立されました。さらに2000 年から稼働した反陽子減速器施設において、早野教授が率いるASACUSA(浅草)実験グループは、高精度パルスレーザーなどの最新鋭装置の開発・導入を次々と行い、反陽子と電子の質量比を10−9の相対精度で決定することに成功しました。

科学技術委員会(CODATA)による基礎物理定数の最新版では、この結果がリュドベリ定数や陽子・電子質量比の決定に貢献していることが明記されています。これは日本の研究成果が基礎物理定数決定に寄与した希有な例といえます。

受賞タイトル:反陽子ヘリウム原子の研究